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【一般的な外科手術と自毛植毛FUEの違い①】

手術と聞いて、皆さんはどういった手術を思い浮かべるでしょうか?


胃がん、肺がん、大腸がんの手術?
ホクロなどを除去する手術?
脳外科の手術?
産婦人科の手術?

これらの外科手術手技には、
①メスによる切開
②組織の剥離
③止血、結紮
④糸による縫合

というような4つの基本手技が必要です。

FUEとは?


自毛植毛のFUE(Follicular Unit Extraction もしくは Excision)という術式は、移植する毛髪を採取する際に従来のメスを用いず専用の円筒形のパンチを用いて毛包を1株(グラフト)ずつ採取する方法であり、現在主流の術式です。

通常、株の採取には1mm以下の専用パンチを用い、移植株を後頭部側頭部から採取します。

縫合や抜糸の必要がありませんので、傷痕は数日もすると収縮して自然に治るためほとんど目立ちません。

痛みが非常に少ないということと、後頭部や側頭部に線状の傷が残らないというのが最大のメリットです。

FUEという術式は、これらの4つの要素がありません。 ”手術” という言葉の括りは一緒でも、一般的な外科手術とは全く別モノの手術手技なのです!

当然「エイ!」っと魔法のように株を採取するわけにはいきません。。
刃物を使わなければ採取はできませんので厳密にいえば、①の切開は少し含まれるかもしれません。しかし、メスを用いて長い切開を加えるというような手技ではなく、小さくくり抜いていくといった手技になります。

切らない自毛植毛と表現しているクリニックもありますが、全く切っていないわけではありません

また、③止血の操作については、圧迫止血くらいはしますので全くのゼロというわけではありませんが、電気メスで止血したり、糸で血管を縛ったり(結紮)するというような操作をすることはありません。

少し専門的な話になりますが、局所麻酔の時にエピネフリンが添加されている麻酔薬を使用すると、血管が収縮して出血量を減らすことができます。さらに麻酔薬の効いている時間の延長効果もあり、よく皮膚外科領域の手術(ホクロの手術など)の際には使用されています。

実際に使用するFUEの器械はどういったものか?

手動か?電動か?

大きく分けると、
マニュアルパンチ:手動でパンチをコントロールする
モーターライズドパンチ:回転するモーター式のハンドピースを使用

現在、多くの医師はモーターライズドパンチを使っていますが、マニュアルパンチに慣れ親しんでいる一部の医師(昔ながらの医師!?)は今でもマニュアルパンチを好んで使っています。

それぞれのハンドピースの先端には、円筒形の刃がセッティングされます。

刃の形状

刃には色々な種類があり、
①先端が鋭くて "キレキレ" の シャープパンチ
②先端が鈍で "切断しづらい"  ブラントパンチ
③特殊な加工がされている ハイブリッドパンチ
などがあります。

回転数 ・ 回転形式

回転数も高くしたり、低くしたりすることが可能です。

機器によっては、一方向のみに回転するだけではなく、
右回転 → 左回転 → 右回転 → 左回転 …
と繰り返す "オシレーション" というシステムを搭載している機器など、様々なタイプがあります。

吸引の有無

本体に吸引装置が付属している機器もあり、株を吸い上げながら採取することで切断率の低減に役立たせることが可能です。
なぜなら吸引をかけて株を引きつけることによって、パンチを必要以上に深く刺さなくて済むようになるからです。

私はこの吸引装置を活用して、極力株を切断損傷しないように株をひとつひとつ丁寧に採取しています。

毛の構造は、一般的に、
毛幹」と呼ばれる皮膚から外側に出ている部分と、
毛根(毛包内毛幹とも呼ばれます)」と呼ばれる皮膚内の部分に
分けられます。

実は、この「毛幹」と「毛根」の角度は微妙に異なっています。
さらに言えば、一株一株ごとに、これらの角度は微妙に異なっています。

毛根の部分は直線的なこともあれば曲線的なこともあります。
曲線的といっても、ゆるく曲がっているタイプもあれば、強く曲がっているタイプもあります。

黒人にみられるような "curly hair" や "kinky hair" と呼ばれるような毛の場合は、毛根の部分がまるで「バナナ」のようにクルンと丸まっており、最も難易度の高い採取になります。

曲がっている方向も、向き方向、向き方向、向き方向、向き方向、それらの掛け合わせ…というように一定ではありません。。。

全体の毛流れ(マクロの視点)見た目(ミクロの視点)、さらに指先の感覚を頼りに微調整をしながら採取を行っていきます。
慣れてくると、指先の感覚で上手く採取ができているか、できていないか(完全もしくは部分切断したか)が分かるようになります。

「この見た目」と「皮膚内の角度」が ”異なっている” ということが、FUEの手術の最大の難しさと言っても良いでしょう。

一般の外科手術が上手い先生は、植毛の手術も上手いか?


手先の器用さという点で今までの経験が役に立つことは一部あるかもしれません。
しかし、一般の外科手術が上手いからといって、植毛の手術がすぐにできるか?上手いか?と聞かれたなら、答えは「NO」です。

具体的なFUEの手術手技というものが、通常の外科手術とは異なり、全く別ジャンルの手術手技だからです。

手術の基本となる①切開、②剥離、③止血、結紮、④縫合という基本手技の出番はなく、役に立ちません。

FUTの場合はどうか?

それに対して、自毛植毛FUT(後頭部を帯状に切り取り、株分けをする植毛の術式)の場合は、創部の止血や縫合処置が必須になりますので、一般的な外科手術と同じジャンルの手術手技といえます。

FUEを習得するまでの道のりは?

FUEにチャレンジしてきたドクターを何人か見てきましたが、残念ながら早々に断念してしまう方が意外と多いです。

技術的な問題

「見た目」と「皮膚内の角度」が "異なっている" という感覚は、なかなか掴みにくく、習得するまでに時間がかかるという技術的なハードルがあります。
患者さんによって、皮膚の硬度弾性粘性は異なりますし、一人の患者さんでも頭の中でも部位によって、毛流れ角度深度は常に微妙に変化していて、決して一定ではありません。

移植手術ですので、極力毛包の切断や損傷がない様に採取しなければなりません。

また、〇〇〇株の手術というように患者さんとの間で決定すれば、基本的にはそこまで採取しなければなりません。

性格と相性の問題

傍から見ていると、FUEの手術はとても ”単調” で ”地味” な手術です。

同じ様な動作を ずーっと 繰り返し続けます。

 同じような動作でも、決して同じでは "ない "
奥深い世界が広がっている

わたしの心の声

と声を大にして伝えたいのですが…笑

実際、とても根気のいる手術になりますので、それが性に合わないというドクターもいます。

また、手術の組み立て方が ”独特" という点もあるかもしれません。

余談ですが、、

初めてハンドピースを触らせてもらった時のことを、私は鮮明に覚えています。
「うわ、こんな変な振動のする重いハンドピースを持って手術するの?? 続けられるかな?? 振動病にならないかな??」と正直なところ思いました笑

※振動病とは
手や腕を通して伝播されるいわゆる局所振動(例えば、チェンソーやグラインダーなどの工具など)による障害のことを指します。
具体的な症状は、手指や腕にしびれ、冷え、こわばりなどが間欠的、又は持続的に現れ、さらに、これらの影響が重なり生じてくるレイノー現象(蒼白発作)を特徴的症状としています。

そんなことを思いながらも、結局私はそれから植毛の道に進み、現在に至ります笑

そして、数年してある時ふと自分の手のひらを見て気づきました。

「あれ!?右手と左手が違うじゃないか!」

利き手の親指の付け根の筋肉の部分が肉厚になっていたのです。

日々の手術によって、母子球筋と呼ばれる筋肉がいつの間にか発達して太くなっていたのでした。

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