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母川回帰

魚のことを書かなくっちゃとずっと思っていたのです。

ここ読んだ時にね。

50代の独りものにとって、女友達とは、である。

みんな海に泳ぎ出て、妻やら、母やら、嫁やら、仕事人やら、いろんな水温の異なる棚で暮らし、時にはいくつかの棚を渡り歩き、

そして、

少しずつ子育てを終えた人から順番に、もとの川に戻ってきてくれる。

鮭は生まれた場所を忘れない

北海道では在来種の鮭はサケ目サケ科のサクラマスです。春4〜7月頃から海から帰ってきて、自分の生まれた川を目指し河川遡上をし、9~10月頃には川で産卵活動に入ります。この春の遡上から秋の産卵までの数ヶ月間は河川で生活をするのだそうです。

ホロカトマム山林には少なくとも7つ湧水があり、四の沢川とホロカトマム川の源泉となっています。四の沢川は浅く細い小川(2-4mの幅 深さは20cm程度)ですが、これがホロカトマム川と合流し鵡川に注ぎ、鵡川は全長135kmでむかわ町で太平洋に注ぎます。

ホロカトマム山林は水源涵養保安林です

ある時、四の沢川に魚はいるのだろうか、と考えるわけです。小さな魚はいるだろうけれども、クマが食べるような大きなサケはいるんだろうか。一生懸命眺めるけれども、流れも早く魚を発見したことはそれまでありませんでした。

そこで、2015年の春と秋に2回、知床国立公園(世界遺産)北海道認定ガイド(生物産業学)笠井文孝さんという専門家に調査をしてもらいました。

そしたらですね、ちゃんと、サクラマス(サケ)+他3種がね、確認されたんです。

いました!
レポートはPDFで読めます(下に置いておきます)

上のビデオは笠井文孝さんによる調査時、四の沢川で撮ったものです。こんな浅いところにこんな大きな魚が、そして産卵している様子です。

鵡川は全長135kmですが、ホロカトマム山林までは約120km。海からずっと上ってくるって考えただけで感動。こういう魚が大事なミネラルを海から運んできてくれるのだそうです。そしてヒグマの餌にもなってくれる。

ご想像通り、この120kmの道のりなんですが、決して、楽なものではありません、楽どころか残念なことに途中に1箇所、鵡川に人工物が設置されているのです。ホロカトマム川から8km下流にあるこの人工物はユウベノ沢堰(せき)と呼ばれている高さ約1.5mの堰(落差工)=Weir 堤です。

高さ1.5m!


鵡川は北海道の道央にあります。唯一の人口物=堰(落差工)は高さ1.5m

サクラマスが海から120km、生まれた四の沢川まで戻ってきてくれているということは、112kmの長旅でヘロヘロになっているというのに、あと8kmのところで1.5mを飛べという無理難題に遭遇しているということ。この高さをジャンプして飛び越えたすごいヤツが四の沢川で産卵、息たえたのだという状況にさらに感動いたしました。

この時期、ちょうど同じ頃に偶然、占冠村に「鵡川135ビジョン落差工を考える住民会議」が発足していました。この住民会議でも、1.5mの高さを何度も何度も飛び越えて遡上していこうとするサクラマスの様子をみんなみていたわけです。

鵡川135ビジョン落差工を考える住民会議 HPより拝借
http://shimukappu.blog.fc2.com/blog-entry-232.html

今日、思い出してもう一度、鵡川135ビジョン落差工を考える住民会議を見てみたら、嬉しいことに、2020年についに!この落差工の横に魚道設置完成していました。

サクラマスが遡上しやすいように落差工の横に新しく鵡川に設置された魚道

サクラマスは、河川環境の変化により各地で個体数が減少しているのだそうです。

  • 河川へのダムや堰の建設

  • 生活排水による水質汚濁

  • コンクリートによる平坦な護岸や河床の浸食対策による生息場所の減少

  • 源流域の森林伐採による流量変動の増大、斜面崩落による濁りと土砂流入

などが影響しているのだそうです (Wikipediaより)。魚道は自然な河川よりは(やはり人工物だからね)劣るのだとは思いますが、ダムや堰よりはずっと良い、自然に配慮されています。住民の皆さんが話合いと努力を重ねて行政へ依頼して作られたのだと思います。鵡川135ビジョンの皆様、お疲れ様でした、そしてありがとうございます。

ちなみに

Q:サケが生まれた川に戻ってこられるのはなぜ?

A:なぜ戻ってこれるのかの理由については諸説ありますが、最も有力な説は生まれた川の匂いを覚えているというものです。 川のにおいは数十種類のアミノ酸の組成によって決まります。 これをサケは覚えていて、そのにおいを頼りに戻ってくるというのです。

と書いてありましたが、生まれた場所の川の匂いを覚えているなんて、なんか自然はとてつもなくロマンチック。次回ホロカトマムに行ったときにはもう少し山の香り、川の香りに注目してみようかと思っています。


いつもありがとうございます。このnoteまだまだ続けていきますので、どうぞよろしくお願いします。