仲田 泰祐・藤井 大輔著「コロナ危機、経済学者の挑戦 感染症対策と社会活動の両立をめざして」刊行に寄せて

仲田さんと藤井さんの新著が出た。

仲田さんと藤井さんがインタビュー形式で考えを述べている本で、読みやすく仕上がっていると感じた。お二人のように社会的なインパクトの大きい研究成果を出すことは難しく、また、生産性の高い研究組織を作り上げていることも自分にはできていないことなので、お二人に対してただただ敬服したい。

ちなみに、去年自分が行ったコロナ分析(Associations between components of household expenditures and the rate of change in the number of new confirmed cases of COVID-19 in Japan: Time-series analysis | PLOS ONE)では、変異株蔓延前の期間においては消費財の分類ごとの家計消費額がその後の新型コロナ感染に高い予測力を持つことを統計的に示したのだが、経済学者からはあまり評価されず、結局自然科学系の学術雑誌に掲載された。このように自分の立ち位置は、多くの経済学者に比べて、感染症専門家のように家計行動による感染拡大を懸念する立場に近かったと思うのだが、それでもなお、今夏の第7波における厚労省の専門家会議からの発信の内容が、少なくとも報道ベースでは以前とあまり変わっていないように思えたことを鑑みると、社会全体に拡大してしまった後の感染症の研究には、感染症の現場を知る医学や公衆衛生の専門家のみならず、経済を含む社会活動分析の経験のある研究者も関わった方が、社会のためには良いと感じている。

今後、国の機関である感染研などでそういう方向性での体制強化が進むとよいと感じているが、そのような動きの先頭に立って時代を切り開いている仲田さんと藤井さんのお二人には改めて敬意を表したい。