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意外なところに発明のヒントがあった 二酸化炭素の功罪(7)

炭酸エステが世に広まった。その秘話について。。。

植物は光合成をするために気孔を開く。しかしこれは乾燥ストレス下では諸刃の剣である。すなわち植物は、貴重な水分を蒸散によって失うリスクに晒される。二酸化炭素が水に溶けて炭酸水になるが、もしかしたらこれをミストにして植物に噴霧してあげれば、光合成を促進しながら、蒸散を抑えられるかもしれないと閃いた。

炭酸水が植物の植物への成長促進効果を研究するため、炭酸水の作り方について研究を重ねた「君を笑顔にする 二酸化炭素の功罪(6)」。高圧の二酸化炭素を分子篩膜を使って高濃度炭酸水を作った。これをミストで噴いてみた。ところが、折角溶かした二酸化炭素が噴霧時に気体となって空気中に逃げていくことが判った。むむっ、これでは期待した効果が得られない。

それならば、高圧の二酸化炭素をミストノズルから噴射させる時、その勢いで別の経路で水を引っ張り、高速で二酸化炭素を水にぶつけてノズルの先から噴射させる。二流体ノズルを用いる方法である。この方法なら、空気中の二酸化炭素濃度と湿度を同時に高めることができた(下図)、画期的だと思った。

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空気中の二酸化炭素濃度が高まると光合成が促進される(私は悪者ではない 二酸化炭素の功罪(1))。空気中の湿度が高まると、葉の気孔が開き、これまた光合成が促進される(雲は森から産まれる)。一石二鳥の方法だ。

ところが、酸性霧になり、葉からミネラル分が溶脱して葉が黄色くなった。これでは不味い。そこで、原水タンクに重炭酸カリウムを溶かした。これだと炭酸フォグのpHが下がらない。よしっ。炭酸と重炭酸イオンとのモルバランスを保つ発明につながった(生命を司る 二酸化炭素の功罪(4))。

この炭酸フォグによって植物の成長を促進させることができた(下図)。

CO2 Fog 効果

さて、いまさらながら、残念なことにこの方法を植物への利用にしか考えていなかった。当時は炭酸水が人の血管を拡張する炭酸浴の効果(人の心を温める 二酸化炭素の功罪(2))まで考察していなかった。そのため、炭酸エステを企画した会社が飛んで聞きに来られた。こうして、世に炭酸ミストの機器が普及するきっかけを作ったかもしれない。

炭酸ミストは今や美容の必需品らしい。世の女性はこぞって使われているそうだ。水を化粧水に変えれば、血流が良くなってお肌が若返ったところに化粧水が効率よく浸透移行し、効果てきめんらしい。二酸化炭素が美しい女性を増やしている。

ま、何はともあれ、技術が世の中に使われ役立っているのは研究者冥利に尽きる。あとは残り時間で、本業の植物への炭酸水効果を世に広めたいと考えている。

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