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深呼吸をしよう 二酸化炭素の功罪(3)

あくびが出る。あー今日も眠いなー。そうだ深呼吸をしよう。頭に酸素を送り込もう。朝にジョギングや体操をして、心臓を動かし、血流を良くするのも良い。

植物の根は人間の心臓のようなものである。生命の維持に必要な養分だけでなく、水分と水に溶けた酸素を絶え間なく供給し続けてくれる。

ところが、「根腐れ」という病気がある。酸素不足が原因だ。酸素の少ない環境(嫌気性)では、腐敗を進行させる悪玉菌が増殖して根が褐変し易い。それに対して、酸素の多い環境(好気性)では、根は健全に純白に育つ。根の細胞はミトコンドリアの呼吸によってエネルギーを産んでいる。ではどうすれば純白の根を張り巡らせることができるのか?口絵の写真は炭酸水耕栽培の根の様子であるが、答えは意外にも二酸化炭素にあった。

高濃度の二酸化炭素泉に浸かると、酸素不足を感じ取って血管が拡張することを全号で述べた。植物の根にも同じことが起きているようである。植物の葉は二酸化炭素を使って光合成する。根から吸い込んだ二酸化炭素も葉に転流して光合成に使われるのではないかと思い実験した。炭酸水で育てたユーカリの成長が良かったからである。安定同位体で標識した二酸化炭素を水に溶かし、根から吸わせて植物体に固定化されるかどうか調べた。結果は、期待をはるかに下回る量であった。では、どうして炭酸水でユーカリの成長は促進されたのか?

二酸化炭素は水に溶けて炭酸になる。飽和炭酸水のp Hは4以下の酸性である。酸性は植物にストレスである。ところが、大気の二酸化炭素分圧が低いため、水に溶けた炭酸は次第に大気へ戻り、水のpHは元に戻る。どうやら、炭酸水に根が触れると一過的に酸素が不足しているとのスイッチが入って、根が元気に伸びだすらしい。

水に溶けている重炭酸イオンとのモル比も重要だ。これをコントロールすることによって、植物の根は純白となり、成長は促進される。特許技術だ。

生命活動には酸素が必要だ。眠たくなったら、深呼吸をしよう。換気をして空気を入れ替えるのも、コロナ対策のためにも有効だ。

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