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CO2の拡散 植物のカーボンサイクル(2)

開いた窓から植物の部屋の中に迷い込んだ二酸化炭素は、植物がエネルギーを産むための餌になる。実は、植物だけでなく動物や微生物を含めありとあらゆる地球上の生命がエネルギーを産むための貴重な原材料である。

さて、植物の部屋の中で二酸化炭素はどこに行けばいいか迷っているかもしれない。三密を避け、同じ仲間が少ないほう(濃度が低いほう)に自然と導かれる。濃度勾配に依存して拡散するのである。葉の中では二酸化炭素がどんどん光合成のために葉肉細胞の葉緑体に入っていくため、濃度は空気中の半分ほどらしい。細胞と細胞の間には気相のほかに液相もあるとすれば、分圧に比例して水に溶けて移動しているかもしれない。濃度が高いほうが光合成の効率が高まる。

そこで、二酸化炭素を水に溶かした炭酸水を霧状にして葉にかけてみた(意外なところに発明のヒントがあった 二酸化炭素の功罪(7)も読んでくみてください)。葉内細胞間隙(アポプラスト)水のpHが低くなること(通常は約pH5.8、飽和炭酸水のpHは3.9)と、気体のほうが液体より拡散速度がけた違いに早い(約10,000倍)ことと、炭酸水が葉内に入るとどうも気孔が閉じるスイッチが入るため、二酸化炭素がうまく光合成に使われたのかはさておき、アイデアとしては悪くはなかったと思っている。

二酸化炭素は気体あるいは液体で、葉肉細胞の細胞壁に辿り着き、細胞膜を通過する。この時アクアポリンと呼ばれる水チャネルを通るらしい(未来に向かってCO2を通す CO2分離膜 カーボンサイクルテクノロジー(7)も読んでみてください)。二酸化炭素の通り易さの指標がコンダクタンスである。コンダクタンスの逆数が抵抗である。コンダクタンスが大きいと二酸化炭素が抵抗少なく葉内を拡散できる。光合成測定装置ではコンダクタンスが自動計算されるので、私はこの数値を見て、「おー。気孔が開いてきた。あやっ。閉じてきた」と見てもいない気孔の開閉度が観察できると喜んでいた。

葉肉細胞に入り込むことに成功した二酸化炭素は、細胞質を泳ぎ切り(pH7.4、一部は重炭酸イオンに変身)、いよいよ葉緑体の中(pH8.0)で姿を変えていくことになる。まるで子供が大人に成長していくかのように進化し、様々な形に様変わりする。長いCO2の人生の旅が始まった。

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