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『カイザーコーポレーション』から紐解く韓国のゼネコン事情【ブルーアーカイブ妄想】

こんにちは。今回は、スマホゲーム『ブルーアーカイブ』にて暗躍している巨大財閥「カイザーコーポレーション」を出発点に韓国のゼネコン事情を語っていきます。

とは言っても私は韓国に行ったことも韓国人の友人を持ったことも無いのであくまでデータのみを見た上での考察となります。韓国の産業にについて詳しい方がいらっしゃいましたらXやnoteにてコメントを残してくださるとありがたいです。

※この記事ではスマホゲーム『ブルーアーカイブ』の世界観について語っていきます。ストーリーのネタバレはしません。
世界観含めて楽しみたい方はメインストーリー第1章を読んでからこの記事をお読みください。


0.ブルーアーカイブという作品の製作背景

まず前提条件としていきなりなんで『韓国』のお話が出てくるの?という点について説明するためにブルーアーカイブを作っている人たちに着目していきたいと思います。

プロデューサーはキム・ヨンハさん、
アートディレクターはキム・インさん
シナリオライターはisakusanさん
という韓国出身の方が担当されているようです。

ブルーアーカイブを作っている人たちの出身地からブルーアーカイブと言えば『韓国』のイメージがあります。日本向けに上手く作られているとはいえ、何かしら韓国の要素が作品の中に盛り込まれているのではないかと考えたのが今回の記事の出発点になります。

ちなみにスマホゲーム『ブルーアーカイブ』のサイトを開くとYostar(パブリッシャー)とNexon Games(ディベロッパー)という2つの会社が出てきます。

Yostarは中国、Nexon Gamesは韓国にルーツがある会社。

『ブルーアーカイブ』を作った人は韓国にルーツがあることには間違いないのですが、運営目線から言えば中国のゲームとも言えそうです。

※パブリッシャーとディベロッパー

パブリッシャーは主にゲームの販売や流通、
ディベロッパーは主にゲームの開発を担当します。

建設業界で例えるとすれば
パブリッシャーは発注者(JRやNEXCO、不動産ディベロッパー…)、
ディベロッパーは受注者(ゼネコン、橋梁メーカー…)
になるでしょうか。

不動産ディベロッパーは実際に工事を担当しないのでゲーム業界ではパブリッシャー側に当たるんですよね。非常に紛らわしいです。

1.『カイザーコンストラクション』というグループ会社への違和感

さて、ようやく本題に入ります。ブルーアーカイブにて「カイザーコーポレーション」は金融・武器の流通・軍事など様々な事業を行っています。この世界ではインフラを支える存在として無くてはならない組織になっています。

一方でグレーゾーンを狙ったこともやっており、この企業がストーリーに絡むと大抵よくないことが起きる気がします。
ストーリー読んでいるとき「カイザーコーポレーション、てめぇふざけんじゃねぇ!」と何度も叫んでしまいます。

この巨大財閥のグループ会社として、『カイザーコンストラクション』と呼ばれる建設会社があります。

素直に日本語で訳せば、『カイザー建設』となる訳ですが、ゼネコンについてよく知っている人であれば、ゼネコンが「巨大財閥のグループ会社」であることに違和感を持つかもしれません。

1-1.日本の財閥とスーパーゼネコン

まず財閥と聞いて皆さんはどんな企業を思い出すでしょうか。

やはり最初に思いつくのは、三井・住友・三菱の三大財閥ではないでしょうか。今でも財閥の名を冠した大企業は数多くあります。

しかし、日本を代表するスーパーゼネコン5社
(清水建設・鹿島建設・大成建設・大林組・竹中工務店)
にはいずれも財閥の名を冠していませんし、どの企業も直接財閥の影響を受けていません。

財閥の名を冠したゼネコンとして一番有名なのは「三井住友建設」でしょうか。(スーパーゼネコンに続いて会社規模の大きい準大手ゼネコンの一員として数えられています。)

いずれにせよ、日本におけるスーパーゼネコンは「巨大財閥のグループ会社」ではなく、「一つの独立した大企業」であることがうかがえます。

1-2.日本の財閥と不動産ディベロッパー

しかし、ゼネコンではなく不動産ディベロッパーに着目すると雰囲気がガラリと変わります。

大手6社(三井不動産、三菱地所、住友不動産、東急不動産、野村不動産、森ビル)を見てみると、上位3社が三大財閥の名を冠していることが分かります。

これら3社は明治中期ごろ、各財閥に設置された不動産部門がルーツとなっています。

財閥各社でも明治中期ごろから、財閥一族の家産や所有・取得不動産の経営管理に当たっていた。

★蒲池紀生:不動産業の成立とその遷移,日本不動産学会誌,Vol.1,No.8,1992.10
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jares1985/8/1/8_1_110/_pdf/-char/ja

このことから、日本の大手不動産ディベロッパーは「巨大財閥のグループ会社」として存在していると言えます。

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以上を踏まえると日本において建設に関する企業のうち巨大財閥の影響を受けている大企業と言えば、「不動産ディベロッパー」のことを指すと言えるでしょう。そういった意味では、カイザーコーポレーションの一員である建設系企業の名称は『カイザーコンストラクション【カイザー建設】』ではなく、『カイザーエステート【カイザー不動産】』の方が自然かもしれません。

2.韓国のゼネコン事情

ここまではあくまで『日本』のお話。この物語が韓国の方によって紡がれているのであれば、韓国のゼネコン事情も調べる必要があります。

日本と大きく異なる点が二つ。

①韓国のゼネコンは巨大財閥のグループ企業になっている。

これはもう百聞を一見に如かず。海外売上が多いゼネコンランキングTOP50(2019年)でランクインした韓国の企業は以下の通り。

20位 HYUNDAI ENGINEERING & CONSTRUCTION CO. LTD.
31位 GS ENGINEERING & CONSTRUCTION
35位 SAMSUNG C&T CORP.
40位 DAEWOO ENGINEERING & CONSTRUCTION CO. LTD.
47位 DAELIM INDUSTRIAL CO. LTD.

★Enginnering News-Record:ENR 2019 Top 250 Global Contractors 1-100
<https://www.enr.com/toplists/2019-Top-250-Global-Contractors-1>

日本人でも一度は見たことのある名前が並んでいるでしょう。
HYUNDAIとは自動車で有名なあの現代(ヒュンダイ)
SAMSUNGとはスマホGalaxyで有名なあのサムスンのこと。

なんと巨大財閥のグループ企業としてゼネコンが存在しています。

GSグループの例。
重化学工業をはじめ、建設、小売業、スポーツまで事業を展開しています。

なぜ、巨大財閥のグループ企業にゼネコンがいるのかということに関しては詳しく調べられませんでした。ただ、韓国で財閥が大きな影響を持っているのは1965年の日韓基本条約において日本から得た巨額の支援金を元手に、大企業の権益を認めた産業育成を行った結果なのだとか。

②ゼネコンが不動産開発に関する仕事をやっている。

もう一つの違いとしてはゼネコンが不動産ディベロッパーの役割も担ってしまっている点が挙げられます。

韓国で大規模な不動産開発を行っている企業は、いわゆるデベロッパー専業ではなくゼネコン、つまり建設企業である。韓国を訪問された読者は、大規模なマンション団地が林立し、各マンションの壁に「現代」、「三星」などと表示された光景を見た経験がおありだろう。これらは現代建設、三星物産が開発・分譲した物件であり、両社は日本のマスコミなどでは「ヒュンダイ」、「サムスン」と表記されるが、いずれもグローバルに展開している巨大企業グループの建設部門である。

★周藤 利一:韓国企業の海外不動産開発,土地総合研究,2011年冬号
<https://www.lij.jp/html/jli/jli_2011/2011winter_p001.pdf>

▼ヒュンダイがハノイに建設したマンション

▼サムスンがソウルに建設した高級マンション

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まとめると「韓国」におけるゼネコンとは、『不動産開発等も担当してしまう巨大財閥のグループ会社』というのが一般的な認識になっているようです。
そのように捉えるとブルーアーカイブにて『カイザーコンストラクション』という巨大財閥のグループ会社が出てきたとしてもなんら不思議ではないと言えそうです。

3.まとめ

まさかブルーアーカイブから韓国のゼネコンについて調べることになるとは全く想像つきませんでした。

それにしても他国の方が日本向けに本気で考えたとしても『自国の文化』という綻びが作品の中に現れてしまうというのは大変興味深いです。バックグラウンドというのは消そうと思っても簡単に消せないですね。

▼ 実際、ブルーアーカイブに関するインタビューにて国による文化の違いにも言及されています。(こちらの記事はネタバレ注意)

今回は韓国のゼネコン事情について語っていきましたが、まだまだインフラについて考察出来そうなことはありそうです。好評であれば何か別のことを語ろうかなと思います。最後までお付き合いありがとうございました。

※表題写真は以下ツイートより引用


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