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Goodie Mob : Soul Food

久し振りの投稿は、久し振りに聴き返してあらためて大好きな 90年代 Hip-Hop アルバムの傑作の一つだと思い直した Goodie Mob の 1st アルバム『Soul Food』(95年) レビュー。

自分でもビックリしたのだけれど、最後に聴いたのは14年前のことだったようで、時間が経つのは早いものですね...

Goodie Mob は、USジョージア州アトランタを拠点とする Hip-Hop プロダクション・チーム Organized Noize を中心メンバーとする Dungeon Family の初期構成ユニットで、Outkast と並んでダーティー・サウスの系譜の立役者なのですが、日本ではいまいち地味でマイナーな存在。USでは50万枚以上をセールス、ゴールド・ディスクを獲得しているのだけれど。

(結成当初は Big Gipp, Khujo, CeeLo Green, T-Mo の4名、2枚目のアルバムリリース後ほどなくして CeeLo が脱退しソロキャリアをスタート。その後 CeeLo の方がビッグネームとなってしまった)

14年前にも書いてるけど、派手ではないし判りやすいアッパーなトラックがないので、今時のサブスクでトラック単位で聴くとその素晴らしさは判らないでしょう。

サウス独特のアーシー&ブルージーでドロッとした黒いディープネスは格別。ソウルやファンクが好きな人であればハマると思うので、腰を据えてデカイ音でアルバム1枚を通して聴いてほしい。聴き終わればさらに欲しくなり、自然にセカンド・リピートするはず。

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全19トラック となっていますが、うち6曲はスキットなので実質13曲、61分強の濃密な Hip-Hop クラシック・アルバム。ここから3曲シングルカットされ、いずれも US RapチャートでTop10入り、アルバム自体も US R&Bチャートで8位を記録。

プロデューサーはもちろん Organized Noize、5曲ほど Dungeon Family メンバー(Outkast から André 3000 とBig Boi、Organized Noize からは Sleepy Brown、等々)が客演してますが、Goodie Mob のキャラクターと世界観に馴染んでいて、聴いていて違和感が全くないことも、アルバムの完成度というかトータリティに一役買っているものと思います。

サンプリングは控え目、手引きの演奏が多いし、ラップばかりではなくメロウに唄うコーラス・パートも多いこともあり、ハードコアな Hip-Hop と言うよりはドープな Hip-Hop ソウルでどことなく温かみがあるのが特徴かと。
ではレビューへ。

(1)『Free』は1分強と短いがブルージーで頭の中に蒼い残像を残すオープニング・ナンバー。雫が垂れてくるような静謐なエレピに、ゴスペルのように神に祈りを捧げるかのように唄う CeeLo のソウルフルな声とコーラスが素敵過ぎる。私の琴線にふれまくる名曲かと(もっとたっぷり演って欲しい...)。

(2)『Thought Process』では Outkast の André 3000をフィーチャー。
ミュートされたアルペジオ・ギター(Montell Jordanの『What's It Feel Like? (Is It Good?)』(99年)からサンプリングとあるが、Montell の方が4年後にリリースされているのだけれど...)に扉が軋むような音と甲高く鳴るリムショットが印象的。深く静かに潜航するトラックと陰鬱な女性コーラス(Joi)をバックにアクの強いフロウが絡む Hip-Hop ソウル。
Verse1 : T-Mo --> Verse2 : Khujo  --> ブリッジ : Cee-Lo & Khujo --> Verse3 : Big Gipp --> Verse4 : CeeLo --> Verse5 : André 3000 の順。

(3)『Red Dog』はスキット

(4)『Dirty South』では Cool Breeze をフィーチャー、アルバムからの3rdシングル(US Rap チャート 8位)。タイトルのダーティ・サウスという響きに反して、メロウで浮遊感のあるトラック。潜水艦のソーナーのような音が鳴り続けるなかベースがゆったりと唸り、敢えてテンションを上げずにクールにネットリとしたフロウが続く。
シンプルで印象的なベースラインは Hubert Laws の『Passacaglia In C Minor』(70年)からサンプリング。

(5)『Cell Therapy』はアルバムに先駆けてリリースされたシングルカット・ナンバー。ゲコゲコと蛙の鳴き声のような音(ギロかな?)に超シンプルなピアノ・リフが延々とワンループされる呪術的でドープなトラック。
こんなシンプル&ダークな曲を1stシングルに持ってくる勇気が凄いし、これが US Hot Rap シングル・チャート1位になったというアメリカの懐の深さにも感嘆するね。
Khujo --> フック --> CeeLo --> フック --> T-Mo --> Big Gipp --> フック。
やはり CeeLo の唄うようなラップが他3名とは少し違うなぁ。

(6)『Sesame Street』は気持ちよく地を這うベース・ラインと吃逆(しゃっくり)のように挿し込まれるピアニカ音が印象的。ラップはヘヴィーでありながらキレが良く、気合を感じます(逆にこのタイプのトラックにおいては CeeLo のフロウが軽く感じてしまう)。
それによく聞くと、キーボードやサンプル音が細かく配置されていてかなり丁寧に作りこまれているように思います。Ramsey Lewis の『Dreams』(73年)からサンプリングとあるけど、効果音をチョップしているだけみたい。

(7)『Guess Who』では Bill Withers の『Kissing My Love』(72年)のタイトなドラムを借用し、永遠に続くダウナーなベース・ループが中毒性の高い My フェイバリット・トラック。
残念なことにライムは聴き取れないけど、何やらストーリー性を感じさせる語り口で、堰を切ったように言葉が溢れ出ている。
そして最後に CeeLo の真骨頂、咽び泣くようなコーラスパートが堪らない!
”I know there will never be another that will love me like my Mother”
(母のように私を愛してくれる人はもういないことを知っている)

(8)『Serenity Prayer』スキット

(9)『Fighting』では女性シンガー Joi をフックで起用。真夏の夜空に響く虫たちの声をバックにクールで浮遊感のあるちょっと不思議な空気を漂わせるアブストラクトなチューン。ある意味 Organized Noise らしい仕事と言えるかも。
Steve Miller Band の『Fly Like an Eagle』(76年)からサンプリングされているらしいけどよく判りません。。

(10)『Blood』スキット

(11)『Live At The O.M.N.I.』ではチープなビートとパーカッションに乗って印象的なコーラスで始まる。"One Million Niggas Inside..." タイトルの O.M.N.I. とはこのことなのね。
シンプルなトラックにラップが饒舌にリレーされ、良い意味で Hip-Hop のドロ臭い感じが堪りませぬ。

(12)『Goodie Bag』は、アタックの鋭いブラス音にギターの単音ループが不穏な空気を醸し出す、いかにも Organized Noize らしいダークネス溢れるヘヴィー・トラック。4人のラップも集中力が高まってる気がします。
最後のヴァースで CeeLo がこれでもかとばかりにやや高めの声でフロウを撒き散らしているのが珍しい。

(13)『Soul Food』はアルバムからのセカンド・シングル、US Hot Rap シングル・チャート7位を記録。Organized Noize から Sleepy Brown がコーラス・パートに参加。
フワァーと鳴るキーボードにBPM を落とした硬質なビート、そこにユッタリと粘っこく絡むベースがチョー気持ち良い Hio-Hop ソウル・チューン。土臭くて温かいのはサウスの土地ならではかと。
Curtis Mayfield の『Kung Fu』(74年)からドラムをサンプリング。

ちなみに手元にあるシングルCDでは、『Crazyhouse Remix』は G-Funk っぽい洗練された仕上がりになっているし、『Live Remix』は生バンドで演っていて(The Roots みたい)、お得感があります。

(14)『Funeral』スキット

(15)『I Didn't Ask To Come』は哀愁を帯びたヴァイオリンとグルーブ感のあるベース・ループにシンプルながら小気味よいビート(キックとリムにハイハットのみ)がMyフェイバリット。ラップはリキんではいないがとてもタフで、これは Hip-Hop ブルーズですね。

(16)『Rico』スキット

(17)『The Coming』では Dungeon Family の一員 Witchdoctor が参加、この人はほとんど印象にないな。
スラップを効かせたブっ太いベースと乾いたスネアに挿し込まれるホーンがハードボイルドで堪んない骨太ファンク・チューン。タフネス極まりない。クレジットを見るとこのトラックだけベーシストが違うんですね。

(18)『Cee-Lo』スキット

(19)『The Day After』はツンツン突き進むビートに CeeLo と Roni によるコーラスがめっちゃソウルフルなクロージング・ナンバー。ピアノとゆるいワウギターがブルージーで何だか切なくなってくる。このタイプの楽曲はやはり CeeLo がド嵌まりするなぁ。
 The Waters の『My Heart Just Won't Let You Go』(75年)のビートをサンプリング。

いやぁ地味だけど本当にイイですね。セールス的には 2nd アルバム『Still Standing』(98年)の方が売れたと思うけど、個人的には断然この 1st ですね。いずれにしてもつまみ食いに聴くのではなく、アルバムを通してデカイ音で聴いてくださいな。

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