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GW最終日にみた少し怖い夢

川の浅瀬をわたしが進むと
そこに集まっていた橙色の金魚達が深い所へ向かって散り散りに逃げた.
それでも川縁にはまだオレンジ色が続いていて、まるで陸に上がろうとする鯉のように逞しく泳いでいるのが見える.

それを捕まえてみたくなるのは、自分の能力を試したいという前向きな挑戦心からかも知れない.

彼らは液体の揺れに敏感なので、水中で静かに右足を踏み出す.すると離れていく金魚達の動きも気持ち穏やかな気がした.

数歩そのように進んだあと、
先に進めた足のスピードからは想像もつかないような速度で、わたしは水中に手を差し込んだ.
そこで触れた一番初めのものを川から拾い上げる.

今更になって、金魚達にこんな事をしている自分を少し軽蔑している自分に気づく.
手には一匹金魚が入っていた.
一匹でも掬えた事が素直にうれしくて感じていた後悔などは消え去った.

他のものよりも細長く弱そうな金魚だった.それでも油断すると手のひらからするりと落ちてしまうだろう事が想像できた.

その金魚を両手で掬い上げたまま、容赦なく川辺を歩き進むと金魚達は深い方へと激しく散っていった.

手元に注意しながら10数メートルほど進むと、いつ建ったかも分からない朽ちはじめた様子の小さな古屋が現れ、わたしはごく自然にその小屋に続くバルコニーへ上がった.見た目よりもしっかりした作りの様だった。

小屋には扉がなくオープンだった.丁度良い花瓶があったのでひとまず掬い上げていた金魚をそこへ入れた.

ここに来たのは初めてではないのかも知れないが分からなかった.
今は朝か昼か、それも分からないが気温は嫌なくらい丁度良かった.こんなに川が近いのにじめじめともしていない.丁度いいのにとても居心地がわるいという感じがした.

小屋のあっち側には広そうな庭があり、小屋の中が薄暗いせいもあるだろうがそこは光り輝いて見えている.

少しの間景色に見入っていた.
花瓶に視線を戻す.
瓶の中にはなしたのは確かに金魚だった.確かに金魚だったはずそれは知らぬ間に薄紫の綺麗なベタになっていた.

重々しい呼吸音が聞こえる.
水中の酸素濃度が薄いのだろうか.
その苦しそうな息遣いはベタのものらしかった.

葉は酸素を作る事を思い出した.原理はよく分からないがそういう事になっている.庭に生えていたそれっぽい花々を花瓶に次々と入れた.いつの間にかベタの姿が見えないほど花瓶は草花でいっぱいになった.

そんなに直ぐに植物の効果が得られるとは思えなかったが、魚の苦しそうな息は少しも聞こえなくなった.

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