大川隆法の死でカオスな教団、声をあげる2世 〈2023年3月の幸福の科学ニュース〉

筆者は2021年4月から、月刊「今月の幸福の科学ニュース」シリーズを連載。教団の最新動向などをお伝えしていましたが、同年9月から休載していました。
しかし今年3月、教祖・大川隆法が突然亡くなったことを受け、久々に筆を執りました。

先日の特別号〈★大川隆法、その生涯を振り返る。 幸福の科学ニュース特別号〉に続く、大川死後2本目の記事です。

――――

〈特集〉カリスマ教祖が死去。教団の現状は?

宗教法人「幸福の科学」を中核とし、教育事業や政治事業などを手掛ける「幸福の科学グループ」。その創始者で、絶対的なトップとして君臨し続けた大川隆法総裁が死去した。3月2日午後に各メディアが訃報を伝えた。

正確な死亡の経緯については議論があるが、2月28日に倒れ、病院に搬送されていたとする報道が多い。

本記事では、カリスマ教祖の突然の死を受けて、幸福の科学がどのような状態にあるのか見ていく。

・死んだことすら公式に認めない

教団は3月30日現在に至るまで、大川総裁の死去を対外的には認めていない。教団広報は、メディアに対するコメントで死去への言及を避けているし、教団公式サイトにお悔やみのページなどは存在しない。

毎月発刊されている、布教用の冊子「幸福の科学」は、ネット上で公開されている。その最新号には、何事もなかったかのように大川総裁の書き下ろし連載「心の指針」の新作が発表されている。(もっとも、その個性的な内容から察するに、ゴーストライターなどではなく本人が生前に書いたものだろう)

加えて、教団広報は、訃報から2週間以上も経っている時点で「大川総裁が火葬された事実はありません」などと主張している。

・死後、教団は一斉に「復活の祈り」をささげる

にわかには信じがたい気もするが、仮に教団の主張が本当だとして、なぜ火葬しないのか。
それは、訃報の流れた2日以降、毎日教団が総力を挙げて「復活の祈り」をささげているからだろう。2日に、以下のメールが信者らの間で流通している。

本日(3月2日)の朝、幸福の科学グループ創始者兼総裁 大川隆法先生が、肉体的にはお亡くなりになられました。
私たちは、祈りの力を教えていただいておりますので、全国・全世界の信者の皆さまの信仰を結集して、奇跡を願い、復活の祈りを捧げさせていただきたいと思います。

これに合わせて、多いケースでは30分おきや1時間おきに、信者らは祈りを捧げていた。

祈りの方法だが、信者各自が100万円、300万円などで教団から購入し、自宅に設置した「本尊※」の前で手を合わせる。「正心法語(しょうしんほうご)」や「主への祈り」などと呼ばれる文章を音読し、復活を祈念する。
どの文章を使って祈るかは、教団が指示しているようだが、地域差があったり、各自でアレンジしているかもしれない。
(※本尊…大川の写真や、大川をイメージした仏像)

筆者の知人などは、Lineのグループ通話で信者らとつながって、「エル・カンターレ ファイト」と呼ばれる、右手で十字と五芒星を描く宗教的呪術(修法)を放ったりしていた。

元信者らの間で「あれをやるのは恥ずかしかった」と語られる「エル・カンターレファイト」
作者:狄の用務員、CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons



一方、教団には、スペシャルな有料の祈りの儀式もある。この中には「新復活祈願」や、「仏説・起死回生経」といった、死者を蘇らせることができるかのような祈りもある。

現在、各家庭以外にも、正心館(しょうしんかん)、精舎(しょうじゃ)、支部といった教団施設で、「復活の祈り」が捧げられている。ここでは、信者が各家庭で祈る際に使う文言に加えて、「新復活…」「仏説…」も執り行われる。支部で行われるのは異例だ。
筆者がある支部の教団職員に尋ねたところ、「復活の祈り」の一環として「新復活…」「仏説…」を行う場合、布施の支払いは任意でいいという。

※記事末尾に、布施について補足説明あり。

・そもそも復活とは?

教団は、亡骸を火葬していないという。本当に死んだ肉体がゾンビよろしく起き上がる「肉体的復活」を信じているのか、それとも教団用語で「霊的復活」と呼ばれる宗教的なものを目指しているのか、いまひとつ判然としない。
教団側も信者に対して、総裁が死んだ経緯や、今回目指している「復活」の定義について、明確な説明をしていないらしい。教団職員でさえ、職員ではないヒラ信者と同じレベルの情報しか知らされていない模様だ。

すると、信者たちが困惑するのも無理はない。人づてに聞くところでは、筆者の知り合いの信者は「大川総裁はすでに復活されたのではないか」と、訳の分からないことを口走ったという。
ツイッター上では、「パラレルワールド」に移住すると宣言する信者まで現れた。

いままでカリスマ・大川総裁が引っ張ってきた教団だが、指導者不在で教団が運営方針や見解をビシッと示せない中、各々の信者が勝手な宗教的解釈や決意などを表明するケースがあるのだ。

パラレルワールドへ移行する意向を固めた信者
Twitterより

教団では、4月以降も「祈り」に関するイベント(研修)が開かれ、復活の祈りも継続される予定だ。

・教団の後継者は?

各種週刊誌は、今後教団内で「後継者争い」が起こるかもしれない、というような記事を書いている。この点に関しては、憶測であれこれ言われているが、実際のところ先行きは不透明だ。

教団の二代目総裁は、大川総裁の長女・咲也加氏が予定されていた。
だが、総裁が死去の少し前に書いた文章が、書籍『妖怪にならないための言葉』に収録されている。それによると、咲也加の過去世である天照大神は、「おたふく」という好ましくない妖怪と関係があるらしい。(正直、筆者も何を言っているのかよくわからない)
まさか、「妖怪」と関係ある人物が教団の後継者というわけには行かないだろうから、実質的に失脚したと見ることもできる。これを受けてかどうかわからないが、教団ホームページにあった咲也加氏のプロフィールは、2月下旬頃に削除された。
ただ、咲也加が後継者でなくなったとの正式なアナウンスは、まだない。

総裁の子供は、咲也加氏以外にも4人いるが、いずれも教団を追放されたり、やはり過去世の扱いにネガティブな変更があったり、近況が不明だったりする。ひとまずこの状況では、大川総裁の妻である紫央(しお)氏が存在感を持つ可能性がある。

・「人が死んだと認めない」という状況

なにせ教団は、対外的に死を認めていない。信者に対してすら、死因の説明も、葬儀やお別れの会などの告知もない、異様な状態だ。

人が死んだと認めず、復活を祈り続ける信者たちは、一体どんな心境なのだろう。元信者も、そんな教団と現役信者の姿を見て、複雑な気分ではないか。筆者もそうだ。

もう訃報から、1ヶ月が経つ。ようやく筆者も、総裁が死んだという実感が湧きつつあるような気がするが、モヤモヤした感覚が尾を引いている。

ーーーーーー
【以下、4/4 19:18追記】
このまま教団は、「教祖の復活を祈り続ける団体」になるのだろうか?ある現役信者は筆者に「そうかもしれない」と語ったが、結局その人物にも、先のことはわからないようだ。
今後の教団の行方は、大霊能者・大川隆法でも全く予言できそうにないくらい不透明性が強い。教団も説明や情報発信を怠っている。

②声を上げる幸福の科学2世たち

大川総裁の死後、Twitter上で自身の境遇を打ち明ける幸福の科学の「2世」が急増している。
昨年から旧統一教会、(特に)今年からエホバの証人の2世の体験を盛んに報じる動きがある中、「なんともはや」なタイミングで教祖が亡くなったと言える。

上記2団体と比べ、社会的な理解が深まっていないと思われる幸福の科学。ネット上や週刊誌で、「霊言」の奇異さや、教団の後継者といったゴシップに多少の関心は集まる。
だがそれに目を奪われるのではなく、2世が抱える課題の解明や、社会的な支援が充実することが必要だ。
また、その過程で、これまで見過ごされてきた教団の歪な実態(2世問題に限らない)も明らかにされるべきだ。そして統一教会と同様、教団が税制優遇を受ける「宗教法人」として適格なのかどうかも問われるべきである。

【以上、4/4 19:18追記。 以降の記事見出しの数字をそれぞれ③、④に変更】

ーーーーーー

③宏洋氏ら、教団総合本部前でデモ

教団から離反した大川総裁の長男・宏洋氏は、総裁死去を受け、教団総合本部前でデモを行った。同氏がその場で「大川隆法の霊言」を敢行する中、迎え撃つ教団側は、プラカードを持った職員らしき人員を大量配置。あたりは異様な光景となった。
デモ参加者らはTwitter上で、一時人々がもみくちゃになる様子や、教団側が参加者のカメラのレンズを押さえつけて撮影妨害する様子を投稿した。

拡声器を使い、「偽物の霊言は許さない」として宏洋氏に憤る、幸福実現党の七海ひろこ氏(中央右)
教団広報のYouTube動画より


デモの最中、教団は大音量でビートルズの「レット・イット・ビー」を流していた。
これはデモ参加者らが、現地の様子を収めた動画をYouTubeへ投稿できないようにするための措置ではないか、との見方もある(投稿したら著作権法違反で削除されるおそれがある)。

その理屈で行くと、上に引用した教団公式動画も、音楽の音を動画編集で削ろうとした形跡があるが、よく聞くと僅かに音が残っている。YouTube運営よ、動画を削除せよ。

④幸福の科学信者、一般女性を妊娠させトラブル

幸福の科学の現役2世信者で、音楽活動をしている男性が、一般女性を妊娠させていた。男性はトラブルの経緯を説明する文書を公開した。
女性にも落ち度がないとは言えなさそうだが、その文章は相手女性のプライベートを暴露しつつ自己弁護するかのような内容で、批判が集まった。同文書は女性の希望で削除された。

音楽関係者で、男性と縁を切ると公表する人物が複数現れる事態となっている。

これに関し、幸福の科学の元信者やウォッチャーの間では、かつて教団が投稿したYouTube動画のタイトルが注目された。

動画:「宏洋氏の嘘に騙されるな!性の乱れを正せる宗教団体『幸福の科学』」

また、男性は「幸福の科学の教義によると、妊娠九週目以降は胎児に魂が宿るので、中絶してしまうと殺人になる。それは嫌だから施設に預けてほしい」といった趣旨のことを発言(のちに中絶には同意した模様)。
これに対し、ジャーナリストの藤倉喜朗氏が、本件はプライベートな問題だと断りつつも言及。「悪意はなくても、自分に責任があることなのに相手のことより自分の「信仰」を優先するのは利己的」などと批判。続けて、宗教2世問題としての文脈を指摘した。


ーーーー

おまけ 〈補足、布施について〉

さて、幸福の科学は信者の莫大な献金=お布施によって支えられている。

教団の広報は、次の画像のように主張している。

Twitterより

この書き方だと、まるで幸福の科学におけるお祈りの布施が【すべて】任意であるかのようにも読めるだろう。

しかし実際は、祈願には通例「奉納目安」という金額が設定されている。たとえば「強力ダイエット祈願 2万円以上目安」といった形だ。(ウソみたいな名前だが、この祈願は実在する)

「目安」というが、事実上の定価のようなものだ。筆者は、筆者の親が律儀に目安通りの金額を布施する姿を見てきたし、筆者もかつてそうしてきた。そうするのが教団内で事実上スタンダードのはずだ。
また、祈願はただ紙に書かれたお経を読み上げたりするだけだから、超低コストで高収益を叩き出せる、効率的な収入源だ。

もし「あくまで目安だから無視して良いんでしょう。1円でもOK」などということが広くまかり通ったら、教団の収入は打撃を受けるだろう。カネ集めに熱心な大川総裁が、そんなことを許すとは思えない(もう亡くなったが)。

前述の通り、ある支部の教団職員は、大川総裁が亡くなったことを受けたイベント「復活の祈り」内での祈願について、布施は任意だと語っていた。
これは今回だけの特別措置であり、普段、教団施設で「新復活祈願」や「仏説・起死回生経」の儀式に参加すると、献金を求められるはずである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?