「HSUと”国の教育ローン”」疑惑 公的なお金が幸福の科学(HSU)の懐に?「政教分離」との兼ね合いは

2021年3月、ある疑惑が飛び出しました。Twitter上の筆者周辺で話題になり、その後下火になってしまっています。しかし、これは結構無視できない内容であると感じるため、ここで筆者なりに整理したいと考えます。

内容はタイトルの通り「公的なお金が宗教への献金に流れている。これは政教分離の観点から問題があり、下手をすれば違憲ではないか」というものです。

HSUとは

まず前提として、HSU(ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ)とは、幸福の科学が運営する無認可の施設のことです。教団自ら「幸福の科学グループ」の一員と位置付けており、宗教法人との繋がりは明白です。例えば公明党と創価学会の関係ような、曖昧さはありません。

当初は4年制大学としての開校を目指していましたが、「霊言」を授業で教えるという過剰な宗教教育が、文科省から「学問の要件を満たしているとは認められない」とされ失敗。現在は私塾として、教団の若い2世信者に宗教教育をしています。”卒業”しても、学位等は何ももらえません。

国の教育ローンとHSU

ここからが本題です。日本政策金融公庫という会社があります。この団体は財務省所管の特殊会社で、政府から出資を受けるなど、公的な性格が強いです。
同社は学生向けに”国の教育ローン”というものを融資しています。HSUの生徒はこのローンを借りる事ができます募集要項p46より)。政府から出資を受けている会社のローンなので、元を辿ればきっと税金も混ざっているでしょう。

”国の”ローンをお布施に

しかし、ですよ。

このローンについて、公式サイトには「大学等であっても在籍する課程や学校教育法によらない学校については、対象とならない場合があります」とあります。(強調は筆者、以下同様)
HSUは大学ではなく、学校教育法によらないばかりか、受験予備校のような「各種学校」ですらない「無認可校」です。

さらに、その授業料(学費)は「植福」と位置付けられています。植福とは幸福の科学の用語で布施、つまり宗教への献金を意味し、非課税となります。これは教団公式YouTubeチャンネルが認めています(画像)。

YouTubeより

授業料が布施である。つまり、国の教育ローンという公的性質をもった機関の融資金を、宗教への布施に使えてしまうのです。政教分離の観点から疑問が生じます。

憲法との兼ね合い

では、具体的な憲法や法律の定めには違反しているのでしょうか。「宗教組織」をキーワードに考えます。

授業料が布施ならば、HSUで行われている授業とは宗教的な行為に他なりません。
という事はHSUは、単に幸福の科学の関連団体であるのみならず、宗教的な行為を行う「宗教組織」である。そう自ら宣言しているに等しいでしょう。
加えて、HSUでは幸福の科学の価値観が教育全体の根幹を成しており、教祖・大川隆法の教えを学ぶ授業もいくつもあります。その意味でも極めて宗教的な組織と言えます。

参照:高等宗教研究授業料(植福)|HSU公式サイト
植福 |幸福の科学公式サイト

つまり、ですよ。これでは、<国の教育ローン→ローンを借りているHSUの生徒→HSUへの授業料(布施)支払い>という順序で、公的なお金が「宗教組織」への献金として流れている事になりそうです。

ここで、日本国憲法89条との兼ね合いが問われます。89条は「公金その他の公の財産」を「宗教上の組織や団体」または「公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業」のために「支出し、又はその利用に供してはならない」と定めています。要は「公のお金を宗教組織に使っちゃダメ」として、憲法20条の定める「政教分離」原則を財政面から規定している*のです。

*前田 徹生「憲法89条後段「公の支配」の意味」p40より 桃山学院大学学術機関リポジトリ

HSUは無認可校なので「公の支配に属しない教育事業」ですし、上述の通り宗教組織でもあるので、その両方に該当しそうです。お金はローンを借りた生徒を経由しているので、直接の「支出」と言えるかは分かりませんが、結果的に宗教組織のために「供して」いるとは言えるでしょう。

まとめ

筆者は法律に詳しいわけではありませんし、本記事でこれを「違憲」と断定する事は避けたいと思います。しかし少なくとも、教団自ら「植福」と名乗り非課税だと認めている以上、HSUの授業料が宗教への献金である事は100%明白です。

HSUの生徒が、国の教育ローンを利用できるという事実。それは「政府の出資を受けた、公共性の強い「公庫」のお金を、宗教への献金に使える」ことを意味します。政教分離の観点から問題視されるべきです。
加えて、HSUを宗教組織とみなせば、憲法89条に抵触する可能性も出てきそうです。
(了)

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