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仏教思想に通じる良書「諦める力」為末大

為末大さんのSNSでの発言をたまに目にして、物事を客観的に捉える人という印象を持っていた。

今回、ご紹介するのはこちらの「諦める力」。

一言でいえば、ものすごくニュートラルな本だった

「反応しない練習」にも通じる淡々とした認識が心地よい。

心に響いた一節を引用させていただこう。

世の中はただそこに存在している。それをどう認識してどう行動するかは自分の自由で、その選択の積み重ねが大事である。なんてひどい社会なんだ。そう嘆きながら立ち止まっているだけの人生もある。日々淡々と自分のできることをやっていく人生もある。選ぶのは自分だ。

「諦める力」為末大

冷たい自己責任論ではない。自分がどういった存在で何がやりたくて何ができるかを自分の判断でやろうと説いている。

・自己受容
・自己理解
・内省

などを進めるヒントが書かれている。

令和の現代は超情報化社会だ。

SNSという承認欲求を増幅させる装置に翻弄されてドーパミンをどばどばと出した結果、他人軸の生き方から抜け切れず苦しんでいる人はきっと少なくない。

今の世の中は「他者をいかにドーパミン漬けにするのか?」という逆算から設計されているのだから無理もない。

人間は有頂天になると失敗するようにできているし、思いあがると他者を傷つけやすい。

為末さんは自分を等身大に評価している。

「日々肉体は衰えるし、いずれ全員が死ぬ」という逃れようのない事実を淡々と認識している。

彼には平家物語のような無常観がある。

為末さんは定期的に棚卸しをされているそうで、整理することで明確に見えるものがある。

タイトルに「諦める」とあるが、仏教では「諦める」に「明らかにする」という意味があるらしい。

人が抱える執着と折り合いをつけるため、定期的に諦め減らすことで心が軽くなるかもしれない。

情報や物質の渦に巻き込まれないためにも「今日は何を諦められるだろう?」と考えたくなる一冊だった。


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