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開発コンサルタントとは

コンサルタントと名乗るビジネスは多くありますが、開発コンサルタントを簡単に言うと、開発途上国を舞台に自身の専門性と語学力を武器に、現地の人々の生活を向上させるためのお手伝いをする仕事になります。
開発コンサルタントの業界団体である、一般社団法人海外コンサルタンツ協会(ECFA)によると、下記のように定義されています。

高度な専門技術と経験を背景に、実際に現地でさまざま調査や具体的な作業を実施し、中立的な立場から援助プランをひとつひとつ実現していく、頼もしいパートナーが「開発コンサルタント」である。
 開発コンサルタントが対象とする仕事は幅広く、しかも国際協力事業の高度化・複雑化に伴い、その専門能力が求められる裾野はますます広がる一方だ。具体的な仕事の内容は、一国の開発計画の作成支援業務などから、たとえば橋を架けたり、道路を整備したり、農村の小規模な給水施設をつくったり、とプロジェクトの内容、規模とも実に多彩である。分野的にも農業、林業、水資源開発、運輸・交通(港湾、道路、空港など)、鉱工業、エネルギーから、保健・医療、教育、経済、行政、社会一般までと、途上国援助がおよそ人間の生活と生産のすべての分野にかかわってくるように、コンサルタントの仕事も人間生活のあらゆる領域をカバーしている。


開発コンサルタントの社会的立場

開発コンサルタントの立場は、民間のコンサルティング企業の社員であったり、大学の教員やシンクタンクの研究員であったり、あるいはフリーランスの専門家など多岐にわたるが、多くの場合は、民間のコンサルティング企業の社員、つまりは一般のサラリーマンのことを指します。
筆者も例に漏れず、民間のコンサルティング企業に正社員として勤めているサラリーマンとなります。もちろん業界柄、帰国子女であったり、海外での留学経験があるなどの経歴をお持ちの方も多いですが、筆者のように基本的にずっと日本で過ごし、日本の大学を卒業したという方も多いです。
筆者の場合は、大学院生時代に修士論文のために、まとまった期間、途上国で過ごした経験がありますが、英語が公用語の国ではなかったため、英語力の向上という点においては、日本で過ごした学生と大きくアドバンテージがあったとは感じませんでした。
一方で、学生という常に金欠というステータスで途上国で過ごすという経験は、今後長きに渡って途上国で仕事をすることに対して、自分はやっていけるぞ、という精神的支柱になったかもしれません。

開発コンサルタントの新卒採用の現状

開発コンサルタントになりたいという学生が多くいる一方で、近年の開発コンサルタントの新卒採用状況は、狭き門となっています。前述のECFAの会員となっている企業は全部で81社ありますが、この内、新卒採用を行っている企業は4分の1にも満たず、また採用枠もほとんどの企業が2~3名という状況です。
原因は様々ですが主として、近年のODA予算の減少に伴う業界全体の生き残りをかけての人件費削減が挙げられます。これにより、新規人材の採用・育成費用の削減、即戦力となる中途人材の引き抜き合いなどが引き起こされ、今日の新卒採用枠の減少に歯止めがかからないという状況が続いています。

どうすれば新卒採用に近づけるのか

こういった厳しい新卒採用戦線を潜り抜けるには、以下の条件をできるだけ満たすことが近道となります。

①語学力

日本のODA実施機関である国際協力機構(JICA)では、語学能力のガイドラインを作成しています。これによると、例えばTOEIC730点以上がAランク、860点以上がSランクと規定されています。
新卒採用であれば、理系の学生はAランク以上、文系の学生はSランクを取れていれば、まずマイナス評価とされることはないでしょう。
逆に、プラス評価を得ようと思った場合には、上記に加えて、スペイン語やフランス語などの言語を習得されていると評価を得やすいでしょう。スペイン語やフランス語は、植民地などの歴史を見てもわかる通り、中南米地域やアフリカ地域において、現代でも多くの国で公用語と設定されていることもあり、これらの言語の習得は、英語よりも踏み込んだ協議をできるとあって重宝されます。

②専門性

ここで言う専門性とは大学での専攻分野のことです。開発コンサルタントにおける専門性は大きくハードとソフトの2つに分類できます。
ハードは、都市開発、鉄道、道路、橋梁、空港、防災、廃棄物、上下水道、エネルギーなどのインフラ施設に関する分野で、ソフトは、環境、教育、保健医療、産業振興、公共政策、貧困削減、平和構築、法制度、人材育成などに関する分野です。
これらの分野の内、新卒採用を行っている企業(部門)は、ハードに偏っており、政府の「質の高いインフラ輸出戦略」も相まって、特に鉄道分野の需要が高まっています。
したがって、新卒採用に最も近づける専攻としては、土木や都市工学といった学問分野が有利でしょう。
しかし、すでに大学生で、今から専攻を変えられないという方も多くいらっしゃると思います。そういった場合は、語学を引き続き高めながら、大学院進学の際に分離横断的な専攻に徐々にシフトすることをお勧めします。
例えば、学部で経済学を専攻している場合は、環境経済学・農業経済・都市経済(特に不動産経済学や交通経済学)といった具合です。

③途上国経験

これに関しては著者の持論になりますが、明確な指標で測りにくいものの、学生時代に途上国に関する経験があると、①と②が少し弱い場合でも、内定に近づけると考えています。
具体的には、青年海外協力隊経験・途上国ボランティア経験・途上国留学経験などです。
青年海外協力隊は2年間を費やすことになるので、経験後の就活で新卒なのかという点に関しては、採用側の規定によると思いますが、大学院に行っていた学生と年齢はほぼ変わりませんので、新卒として取り扱う企業も複数あるようです。青年海外協力隊は2年間を現地でどっぷり費やすため、採用された職種を真面目にこなせば、開発業界(JICAと民間のコンサルタント企業と国の研究機関の出先機関等)に強い人脈を作れます
筆者の友人にも、協力隊経験後、就活する際に、JICAのある程度の職位の方に推薦状を書いて頂けていました。結局、その友人は推薦された企業以外にも複数内定をとることができたようですので、推薦状を書いてもらうために行くのではなく、推薦されるほどの経験・能力を積むために行くというのを忘れずに、応募して頂きたいと思います。

民間の開発コンサルタント企業の待遇

ここまで開発コンサルタント企業の新卒採用について解説しましたが、ここからは待遇面について、筆者の経験も踏まえて、大きく①勤務地、②休暇、③給与に分けて解説します。

①勤務地

まず、勤務地についてですが、海外への頻繁な出張があるため、本社あるいは海外事業部を東京に置くことが多いです。いくつかの企業は埼玉県・神奈川県・さらには大阪府に本社を置いていますが、東京がメインとなります。また海外事業に携わっている限りは国内の転勤は少ないです。国内と海外では、コンサルタントとしての仕事の進め方が大きく異なるため、海外事業部の人間を国内事業部に異動させることは、会社としてもメリットが少ないです。逆にまず国内事業部付けで入社し、国内で専門性を磨いたのちに3~5年後に海外事業部に異動というケースは結構多いです
海外出張については、国はその時に参画している案件によりますが、年の半分程度は出張だと考えておけば、入社後に大きなギャップはないと思います。

②休暇

日本に帰国している間は、日本の暦通り(例えばGWやお盆休み)に休暇を取れます。しかし、出張中は現地の暦に合わせて、日本が祝祭日でも勤務日となることがほとんどです。
国によっては、クリスマス・旧正月・夏のバカンスの時期にまとまった休暇を取ることもあるので、そういった場合は、日本に帰国して溜まっていた休暇を消化してもいいかもしれませんね。

さて、本記事は開発コンサルタントという仕事を新卒採用の動向と併せて解説しましたが、開発コンサルタントに限らず、国際機関、JICA、政府開発援助を含めて国際協力に関する仕事を検討している学生や異業種からの転職希望の方は、以下の書籍を読んでいただけると、広く周辺知識や近年の動向を把握して頂けると思います。

本記事の情報が、皆様の意思決定の一助となれば幸いです。

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