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Nice Song Avenue #7 アイしてる / Base Ball Bear 〜何でもないライブ〜

※本記事は現在行われているBase Ball Bearのライブツアー『Guitar! Guitar! Drum! Drum! Bass! Bass! 』の一部ネタバレを含みます。ご注意ください。

2023年様々なきっかけで出会い耳にした素晴らしい楽曲とそのエピソード紹介する、Nice Song Avenueというこちらの企画。

7曲目は
アイしてる / Base Ball Bear 
です。

Base Ball Bearといえば、レミオロメンと双璧をなす私の青春音楽。
初めてライブハウスという場所で音楽を聴いたのはこのBase Ball Bearでした。なんばHatchでしたね~今でも覚えています。開演と同時にググググッと前方に押され、ギュウギュウの中で鳴り響く轟音、息ぴったりの歓声と熱気。これがライブハウスか、と。以来虜になって早何年が経つでしょうか。

実はこのNoteの2022年唯一の記事がこのBase Ball Bearの日比谷野外音楽堂でのライブのレポートでした。あのライブから再びBase Ball Bearに、なんならライブそのものに異常に火がついてしまったのですが、青春音楽といっておきながら数年前くらいまでは少し遠ざけてしまっていたんですよね。

それはBase Ball Bearのメンバーの脱退があったり、多忙ゆえ少し音楽そのものを積極的に追いかけられない時期があったり、と要因は様々でしたが、結果的に自分の青春だったバンドに今こうして音楽を聴く、観ることの大切さに気付かせてもらい幸せな限りです。

さて前置きが長くなりましたが、Base Ball Bearは2023年より新たにツアーを行っております!日程が発表され、さていつ行けるかなと関東各地での予定を眺めていたときに、横浜公演の会場・・・横浜F.A.D!?キャパは多くても500人くらいじゃないのか、そんなところでくり広げられるベボベのライブ、一体どうなるんだ・・・これは見逃せない・・・
と興味という興味をひとしきりそそられたため、少し時はさかのぼり2022年2月、横浜公演に足を運びこの記事を書くに至っております。

学生の頃ぶりかもしれないF.A.D

危うくライブ全体の感想を書きそうになっていました。違いますね、1曲ずつその魅力に触れていく、というコンセプトの記事でした。ところがBase Ball Bearに詳しい方ならお気づきかもしれません。Base Ball Bear に「アイしてる」という曲はない、と・・・


実はこの書き方は2曲をかけており、今回は2曲を紹介させていただきます!!!!


突然すぎますね。もう第6回にしてルール破り。しかしこれにはしっかり理由があります。
まずBase Ball Bearというバンド、ことすべての曲を作詞作曲しているギターボーカルの小出祐介さん(以下こいちゃん)は、これまでの作品でいくつかの言葉・フレーズを複数の作品にわたって登場させています。
「海になりたい」「それってfor、誰?」「transfer girl」など・・・完全な類似曲や目に見えて続いているわけではないのですが、こいちゃんの好きなフレーズや大切にしているコンセプトは、曲タイトルのみならず詞にも表れています。
そして何よりそれぞれの曲が素晴らしいこと!今回の「アイしてる」も例外ではありません。

そんな「アイしてる」の1曲目は順当に思い浮かぶ表記の『愛してる』という曲なのですが、こちらは200

イントロのワクワクするアルペジオ。そこから心臓を打つようなAメロ、1番から2番へはだんだんと盛り上がりを見せ、それは好きな人への思いが爆発しそうな景色を描いたかのような。しかしこのライブでは、イントロのアルペジオはなく、少しアレンジをされたバージョンのイントロでこの『愛してる』を演奏しました。
「アレンジをされた」と記載しましたが、正確にはこのライブの中で披露されたバージョンが元々のオリジナルだったそう。シングルカットする関係でなにか目の覚めるようなイントロを後から盛り込んだそうで、「この形での『愛してる』を演奏したいと思っていた」とMCの中でもこいちゃんから言葉がありました。

往々にして、世に出ている楽曲について作成者と視聴者の印象が違う、ということはあると思います。Base Ball Bearでも有名な曲の一つである『changes』も、こいちゃん自身としては初めはあまり好きになれなかった曲だったそう。ただ自分の演奏したい形とリスナーの気持ちとにうまく折り合いをつけながら、ここまで音楽を続けていらっしゃるんだなあと。この我々にとっては新しく、Base Ball Bearの皆さんにとっては故郷そのものの形の『愛してる』を聴いた時に、お互いがライブで音楽でコミュニケーションを続けてきたからこそ感じられる気持ちなのだなと、少し感慨にふけりました。

そんなひとしおの思いについて触れた『愛してる』とは打ってかわって、唐突なドラムのビート、そしてこいちゃん十八番のカッティングギターから始まるのが2曲目の「アイしてる」である、『曖してる』です。

この書き方を見て思い起こすのは曖昧の曖、ですよね。あのときあれだけ「愛してる」と言っていた人が、愛してるとは何だっけ・・・?そんな気の迷いが膨らみに膨らんだ1曲のように思います。歌詞にもその心情がところどころ見え隠れしています。

理屈も魔法も禁止にして 漠然を抱きしめる
この腕すり抜けても 曖してるのさ 曖してるのさ 曖してるのさ
無編集の世界を

景色を一つに限定できるような曲ではないのですが、たとえば想いを寄せる人がそこにいたときに、
その人から見え隠れする心無い振る舞い、、、それを見て急速に気持ちが冷めるときのような。あれだけ愛していた気持ちはどこに?間違いではなかったはずなのに。愛しているよな?と自分に言い聞かせるような。

こいちゃんはよくこういったアンニュイで陰と陽の間で揺れる気持ちを描く楽曲が多く、そしてとても清々しい。それが顕著になったのは『yoakemae』くらいからなのかな、と勝手に思っていますが。
(そしてPVの世界観が独特でクセになる。終盤一気に演奏シーンに変わるのも好き。)

今回の2曲目『曖してる』収録のアルバム『C2』も、全体的にどこかアンチポピュラリズムというと大げさかもしれませんが、大衆的な文化にどこか一刺しするような、後ろめたい感情を良い意味でくすぐられる不気味さがとても爽快です。

そんな灰色の景色をサウンドも後押しします。いわゆるサビのパートがあるのですが、そこはギターの音色とベースの連打で2段階に押し上げてくる。一度ふつふつと沸き起こったやるせない感情が、さらに強度を増してうずめくような。Base Ball Bearは曲の世界観がまちまちでもやはりいつでもギターロックだな、と。
ときめく恋の気配も、青春ど真ん中も、第二思春期の心の迷い込みも、世の中への懐疑心も。誰しも一度は通るそんな景色と心情をハツラツとしたギターサウンドでリスナーの心に突き刺してくれる。ぜひそんな『アイしてる』を感じてみてください。

・・・さて、ライブは無事終わり、久々のライブハウス。まだ声は出せないとはいえ飛んで跳ねての体力勝負に完全燃焼となった一夜でした。
が、この日のセトリ、あまりに驚きの連続。「特に周年やらアルバムツアーではないので、そういった時ことできる曲や、あれ?俺ってこんないい曲書いてたんだ、みたいな曲をやれたらなと思います。」
自由度の高い、なんでもないライブツアーこそ危険。こうして、5月公演に足を運ぶことをあっさり決めた私でした・・・

※Base Ball Bear ライブツアー
『Guitar! Guitar! Drum! Drum! Bass! Bass! 』 特設サイト


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