見出し画像

週刊オールライター第70号 「自動放送が導入『できない』ターミナル駅!?」

 この配信を見に来た方は「大きな駅には自動放送があって当然」と思う方が多いでしょう。

実はそうではありません。中京一の大ターミナル「名駅」を構成する名鉄名古屋駅には自動放送がないのですから。しかもこの駅、導入されていないどころか導入すらできないのです。
今回はこの謎を、先日名古屋から帰ってきた私が解説します。


1. 名鉄名古屋駅とは

名鉄名古屋駅の入り口。

名鉄名古屋駅は、名古屋にある名鉄最大のターミナルです。愛知県を拠点とする大手私鉄・名古屋鉄道最大のターミナル駅です。北は犬山・岐阜・津島・弥富、南は中部国際空港・河和・内海・豊橋に1本で行くことができます。
そんな名鉄名古屋駅ですが、タイトルの通り、日本有数のターミナル駅でありながら、自動放送が導入不可能という特徴を持っています。

2. 名鉄名古屋駅に自動放送が導入できない理由

2-1. 本数が多いのに確保できたスペースが狭すぎて駅の構造が3面2線しかないから 用地が狭いのよ!

名鉄名古屋駅を通る名鉄路線は、名鉄岐阜〜豊橋を結ぶ本線だけですが、この本線のうち、枇杷島分岐点〜神宮前には北側の枇杷島分岐点からは岐阜からだけでなく新鵜沼、犬山や津島などからの列車もありますし、反対の神宮前からは豊橋だけでなく豊川稲荷、中部国際空港、内海、河和などからも来ます。そのため、あらゆる列車が一極集中しています。そのような列車を捌くためには、駅の用地を縦や横に広く取って捌くのが理想的です。しかし、名鉄名古屋駅はこれができませんでした。
すでに隣のスペースは近鉄・地下鉄東山線が占領していて、上を見ても名鉄百貨店や近鉄パッセ、名鉄バスセンターがありますし、下にも地下鉄桜通線があり、さらにその下はリニア中央新幹線が通ることになっているので、拡張のしようがありません。2面3線で手いっぱいなのです。

2-2. 編成両数と停止位置が列車によってバラバラだから 乗車位置は上を見よう

名鉄の列車は、編成両数・停止位置が列車によってバラバラです。
「全車一般車」とも呼ばれる全車両3ドアの車両で運用される場合、両数パターンは2両、4両、6両、8両があります。
また、一部の急行・準急と特急の大半と全ての快速特急は一般車と特別車(指定席車両)を連結する6両と8両であり、全車が特別車の「ミュースカイ」の場合は4両と8両で運転します。
これらの列車が一極集中し、、尚且つ停止位置が列車ごとにバラバラに設定されているので、JRのようにホームに乗車列位置をマーキングすることはできません。
なので、乗りたい列車の乗車位置を知るためにはホーム頭上に表示される表示をよく見てください。

2-3. 列車によって停車駅が異なるから 初見には厄介な「特別停車」と「特別通過」の存在

 「特別停車」という言葉をご存知ですか?時間によって普段停車しない駅に停車する場合にこの言葉が使われます。
「特別停車」と聞くと、スポーツイベントやコンサートの利用客を捌くために普段通過する駅を臨時に停車する措置を思い浮かべると思いますが、名鉄は毎日のように特別停車が存在するという、とんでもない有様です。また、特別停車の反対として「特別通過」もあります。これも毎日あるので停車パターンはとんでもない数になります。

この写真で2番目に発車する急行名鉄一宮行きは大里に特別停車します。
というより、最初に発車する準急の表示・・・?

2-4. 区間によって列車種別がコロコロ変わる列車が多いから 

 名鉄の特性として挙げておきたいのが「区間によって列車種別がコロコロ変わる列車が多い」ということです。このような列車は全国で見ても非常に少ないです。
ですが名鉄ではその光景が日常的にあり、特にラッシュ時には顕著に見られます。
その中でも平日に新鵜沼をAM06:47を発車する急行吉良吉田行き(列車番号774)は名鉄一のカオス列車と呼ばれています。

補足解説 新鵜沼発吉良吉田行き急行774列車について

この列車は、2両+2両+4両の組成で新鵜沼を発車しますが、名鉄名古屋でなんとこの先、鳴海までの間普通列車に種別が変わってしまいます。(さらに言うと、ホームの有効長の関係から呼続(よびつぎ)、桜、本笠寺、本星崎の4駅では後ろ2両のドアが開きません。)
鳴海に到着すると、後ろ4両を切り離し前の2両+2両のコンビは急行に種別を戻し、終点の吉良吉田駅に向かいます。
なお、鳴海で切り離された後ろ4両は普通豊明行きになります。
(さらに言うと、この切り離し時間中に後ろを走る急行豊橋行きに抜かされるという、同じ種別の列車に追い抜かされるという現象が発生しています。)

Yahoo!時刻表にはこのように表記されますが、簡単に説明する場合はどうしてもこう言うしかありません。

まとめ

 長くなりましたが、まとめると名鉄名古屋駅には
①本数が多いのに確保できたスペースが狭すぎて駅の構造が3面2線しかない
②編成両数と停止位置が列車によってバラバラ
③列車によって停車駅が異なる
④急行774列車のように区間によって列車種別がコロコロ変わる列車が多い
という特殊な条件があり、ここまで複雑だと放送処理は人間にしかできません。
よって、名鉄名古屋駅に自動放送は導入できないのです。

3. 再開発計画進行中! 自動放送は導入できるか

 そんな名鉄名古屋駅ですが、昨年11月23日に報道各社は、現在再開発計画が進行していると報じました。https://www.yomiuri.co.jp/local/chubu/feature/CO049151/20231122-OYTAT50030/

上記記事によると、その中には名鉄名古屋駅の配線の見直しも含まれており、駅のスペースを拡張させることにより、2本しかなかった線路を倍に増やすようです。
線路の本数が増えれば捌ける本数にも余裕ができます。そうすれば、自動放送が導入される、かもしれませんね。果たしてどうなるでしょうか。今後の展開にも注目です。

むすびにかえて

 今回は、名鉄名古屋駅について特集しました。この駅の事情は我々鉄道ファンでも理解するまで時間がかかるので、怪訝な顔をなさらないでください。

それではまた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?