デンマーク・フォルケホイスコーレ留学記①:他者と共生して自己と向き合う場所

以前よりお世話になっている方にお声がけいただき、月刊社会教育2019年2月号にデンマーク・フォルケホイスコーレでの学びと省察に関する記事を寄稿いたしました。今回は記事の一部をお届けします!

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フォルケホイスコーレとは、デンマークの成人教育機関の1つで、試験や成績評価が行なわれない全寮制の学校である。現在、デンマークにフォルケホイスコーレは約70校存在する。私が在籍していたKrogerup Højskoleは、第二次世界大戦が終わった翌年の1946年に神学者ハル・コックによって創設され、当初から政治やデモクラシーに力を入れている特徴がある。2018年の秋タームには、18歳〜36歳までの約100名の学生が在籍していた。そのうちの8割の学生はデンマーク人で、残りの2割はアイスランド・イスラエル・韓国・スペイン・ナイジェリア・日本出身の国際生であった。


<フォルケホイスコーレの1日>
   08:00 朝食
   08:45 全校集会
   09:15 掃除
   09:45 授業(1)
   12:30 昼食
   14:00 授業(2)
   16:00 フリータイム
   18:00 夕食
   20:00 イベント等

フォルケホイスコーレの1日は、全校集会から始まる。全員が大講堂に集まり、フォルケホイスコーレ歌集から1曲を選んで皆で歌う。誕生日の人がいれば、デンマーク語でお祝いの歌を歌う。

全校集会の後には全員で学校中を掃除する。掃除の際には、大音量で音楽をかけて踊りながら掃除することが常であった。面倒なことも皆で力を合わせれば早く終わるし、何よりも楽しい。

掃除の後は、授業がある。わたしの主専攻は「Crossing Borders」で、選択授業では「アウトドアライフ」「ソーシャルアントレプレナーシップ」「クリスマスランチ」を受講していた。

その他にも、コーラスやコンサート、ライフストーリーを語るイベントなどが定期的に行なわれる。一番の思い出は、北海道の震災復興に向けたファンドレイジングオークションを企画・運営したことだ。このイベントでは、各々の学生が貢献できること・もの(例:食事の準備・片付けを交代するチケット、悲しいときに隣で一緒に泣いて悲しみを共有するチケット)を出品し、オークション形式で寄付金を集めた。100人全員で楽しみながら協力し、3時間で集まった寄付金(約26万円)を震災地に送って一刻も早い復興をデンマークから願った。

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<Krogerup Højskoleに欠かせないもの>
 
フォルケホイスコーレでの生活の鍵となるのが「①デモクラシー」「②パーティー&ヒュッゲ」だ。

「 ①デモクラシー 」
Krogerup Højskoleでは「デモクラシーを大切にしよう!」という価値観が学校中に浸透している。毎週金曜日にはコモンミーティングが開催され、学校で起きている問題について全員で話し合いをする。学生はデモクラシーボックスと呼ばれる箱にミーティングで話し合いたい内容を匿名で投稿することができる。ミーティングを運営するのは、代表学生によって組織されるデモクラシー委員会だ。デモクラシー委員の国籍はさまざまで、マイノリティ的立場にある国際生の意見が反映されるようになっている。

例えば、誰かが理解できない言語で話しているときに会話に入りたいときには「マンゴー!」と言うか、机の上ににあるマンゴーの写真を指差すルールを作った。「マンゴー!」は「言語を共通言語の英語に変えてくれませんか?」を意味する。このルールができてから、言語を理由に誰かが排除されないように心がける雰囲気が学校中に広がった。

また、パーティー等による深夜の騒音が原因で十分な睡眠がとれない学生がいることが問題となったときには、23時以降に騒ぎたいときにはナイトボックス(個々人の部屋から離れたコモンスペース)に移動するルールができた。さらに、学校生活におけるデジタルストレスが問題となったときには、デジタルデトックス週間を設けることにした。授業やイベントの連絡をソーシャルメディアに頼らずアナログ掲示板で行なうことや、コモンスペースでの電子機器の使用を控えることを皆で同意して実施した。このようにコモンミーティングでは、個々人の問題を学校全体の問題として取り上げて、よりよい解決策を100人が力を合わせて考えた。コモンミーティングの他にも、政治家を学校に招いて「デンマーク社会が若者に与えるストレス」や「EUのこれから」について各党の政治家と直接対話ができる機会があった。学生資金(約20万円)の使い道を皆で考えて提案・承認するワークショップも行なわれた。

「②パーティー&ヒュッゲ 」
日本と比べて日照時間が大幅に短いデンマークでは、室内でも楽しく時間を過ごせるように工夫して取り組んでいたことがいくつかある。その代表例が「パーティー」と「ヒュッゲ」だ。毎週土曜日には学生主催のパーティーが行なわれた。「古代ギリシャの伝統服トーガ」や「幼稚園の誕生日会」「ウェディングパーティー」など、毎回ユニークなテーマを設定して本格的な仮装をし、ゲームやダンスを楽しんだ。「ヒュッゲ」とは、デンマーク特有のコンセプトで、居心地のよい暖かな空間・雰囲気を意味する。部屋から布団を持ってきて、暖炉やろうそくのあたたかい火に包まれながらボードゲームや映画、友達との会話を楽しむ。学校中にろうそくがあって、毎日そのようなヒュッゲリーな時間を満喫した。「デモクラシー」や「パーティー&ヒュッゲ」によって、フォルケホイスコーレに在籍する学生は落ち着いた空間・時間を共に過ごし、絆を深めることができたと感じる。

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次回は、フォルケホイスコーレで私が苦戦したこと・学んだことについて書きます!