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[映画]カニバリストを用いて人間の孤独に寄り添う

2023年2月17日に公開された、「ボーンズ・アンド・オール」。「君の名前で僕を呼んで」のルカ・グァダニーノ監督×ティモシーシャラメの再タッグ。これは絶対に観なければと公開初日に映画館へ足を運んだ。観終わったあと、なんとも言えない感情が奥から押し上がり、立てずに放心状態。とんでもない映画を観てしまったような気がしたがあまりそれがなぜなのかよく分からなかった。(以下ネタバレを含みます。)

観終わった後、頭の中はこの映画のことでいっぱいになった。サウンドトラックを聴きながら映画の場面を思い出す時間は、私の心をとてつもなく落ち着かせた。1週間近く映画の余韻に浸り、ようやく自分なりの全体像が見えてきたので、文章にまとめることにした。

孤独はどこまでも続く。

私がボーンズアンドオールを好きな理由、それはこの映画の「孤独」というテーマに対する在り方にある。この映画は、孤独を感じるすべての人に、「大丈夫だ、君は1人じゃない」と励ましてはくれなかった。綺麗ごとでは片付かない、孤独という人類が抱える苦しみ。よくある、「君は1人じゃない」というメッセージ性の映画に、私はいつも感動はするものの、一人密かに抱える苦しみや葛藤を否定されているような気分になってしまう。それに比べ、ボーンズアンドオールは、「結局人間どこまで行っても孤独だ」という軸が最初から最後まで安定していた。綺麗事だけでは決して片付かないこの世界で、人間は孤独なんだとあえて主張するこの映画に私はとても惹かれたのだと思う。

人間は孤独と共に生きていく。その中で一瞬だけでも誰かと分かり合えたり、孤独を感じない瞬間があるかもしれない。その一瞬は儚い。気づかぬうちに消えてしまうその一瞬を逃してはいけない。私にはそう言っているように感じた。

君は1人だ、でも僕も1人だ、みんな孤独の中で生きていく。孤独に静かに寄り添うような作品。ラストシーンからは、孤独を感じなかった幸福な瞬間は、必ず自分の中に残り、なかったことにはならない、というような気持ちにさせられる。その時の幸福を背負ってまた孤独の中に生きていく、そういう悲しみと幸福感のマッチが絶妙に感じられ、個人的にはスッキリするラストだった。

(だいぶ前に書いたものです。下書きに残っていたものを投稿しました)

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