政令指定都市問題の解決法
都道府県と政令指定都市の関係は
オーケストラで言うなら、指揮者とコンサートマスター(コンマス)の関係に近い。
指揮者は演奏全体を管轄する権限を持ち、コンマスは、メロディーを多く弾く1stバイオリンパート(1st)を束ねる。
故に権限がほぼ等しく、対立しがちになる。
これを解消する構想として、
特別自治市制度がある。
(1)特別自治市制度
名古屋や横浜などで構想されているが、大都市を都道府県から独立させ、広域行政を大都市に一本化しようと言う動き。
①オーケストラ
これは、オーケストラで言うなら、指揮者をなくし、全部の権限をコンマスに委ね、1stをより目立たせようと言う動き。
しかし、これは絶対に上手くいかない。
なぜなら、コンマスは、自分のパート=1stのことしか考えなくなる。
1stは主旋律は多いものの、伴奏に周り、他の楽器を支える場面も多くなる。もし、1stのパートリーダー=コンマスに全権力を委ねれば、伴奏の時も自己主張が激しくなり、演奏全体がかきみだれることになる。
②行政〜名古屋を例に〜
行政に話を戻そう。
特別自治市制度を名古屋で断行したとすると、名古屋特別市は、愛知県からの管轄を受けなくなる。独自に高速道路の整備など、広域行政の決定権を持つ。
愛知県は県全体の視点から、高速道路や鉄道などのインフラ整備を進めようとする。
しかし、名古屋という大都市を通らなければ、どんなインフラ整備の効果も最大限にすることはできない。
だが、名古屋特別市は独自の広域行政の決定権をもつ。もし愛知県全体から見て必要なインフラ整備であったとして、名古屋特別自治市が財政難で整備したくない!と却下すれば、そのインフラ整備が滞るのである。
つまり、愛知県全体=700万人にとって必要なインフラ整備も、名古屋特別自治市=220万人の有権者から選ばれた市長によって却下されてしまう。
これでは全体最適は実現できない。
(2)都道府県強化
では、大阪都構想のように、都道府県に一本化するのはどうか。オーケストラで言うなら、コンマスを始め、各楽器のパートリーダーを廃止し、指揮者の権力を強める制度。
大阪みたいに、都市化が全域で進んでいる地域であれば断行すべきだと思う。大阪は府と市の仕事内容がほぼ同じなのでね。
しかし、他のところはどうか。
パートリーダーがいなくなれば各楽器の個性は出せなくなる。
①京都を例に
例えば京都で、京都府に広域行政を一本化し、京都市を廃止して分割するとしよう。
京都は正直、京都市とそれ以外の田舎。
京都市長と京都府知事ではやるべき仕事が全く異なる。
例えば京都市長は地下鉄などのインフラ整備の他、拝観税問題など、京都市独自の問題を解決する役割を持つ。
一方、京都府知事は、京都市と日本海側を結ぶ京都縦貫道や舞鶴港など、インフラ整備の他、中小企業の支援、京都丹後鉄道などローカル線の維持などを扱う。
つまり、京都府知事に広域行政などの権限を移譲しても、拝観税問題など、京都市独自の問題解決にまで手が回らないと推測する。
また、京都市には長年の歴史があり、府民や市民の誇りも高い。京都市の代表である京都市長を無くすことは、難しい。
大阪を除き、これにも俺は反対したい。
というより、大阪も、道州制を断行するのであれば、都構想はやらなくて良い。
(3) 特別区を設置せよ
では、政令指定都市をどう解決すべきか。
まず、どんな形に政令指定都市を改造するんであれ、公選区長から成る特別区を設置することは必要不可欠。
今の政令指定都市は、一人の市長が地下鉄などのインフラ整備=広域行政から、保育園の割り当てや学校設立の認可=基礎行政まで、全てを見る、無理ゲーの制度。
当然、仕事量は莫大になり、多くの場合、基礎行政まで手が回らない。
区長は存在するが、選挙を経ていないため、区の独自の課題を解決しようとする姿勢はとても弱い。
基礎行政まで手が回らない結果、住民サービスが低下する。これが表面化したのが、大阪の西成スラム街の放置や、横浜市で未だに給食が実現できてないことだろう。
特別区を設置し、住民サービスは向上させる。
(4)都道府県前提の解決策
その上で、
俺が考えているのは、
指揮者の権力を強めつつ、各楽器のパートリーダーを残し、個性溢れるかつ、統制の取れた演奏ができる体制。ウィールフィルみたいな感じ。
つまり
都道府県に権力を移譲しつつ、政令指定都市の権限を弱め、政令指定都市の個性を出す制度。
具体的には、
都道府県知事は公選にする。
そして、その知事が、政令指定都市の市長を指名する。
このことで、
二重行政を廃止しつつ、政令指定都市ならではの個性も維持することができる。
一方、
政令指定都市内には、公選区長を選べる、区を設置し、住民サービスを強化する。
①欠点
だが、これには欠点がある。
何か?
都道府県が多すぎるのである。
そもそも、日本はカリフォルニア州1つの面積しかないのに、その中に47も都道府県が存在する。明らかに多すぎる。
ではどうするか。
都道府県を束ね、道州制にする。道州制の細かい設計の話は今回、置いておく。州・道ー基礎自治体の2層制にする。
(4)最終的解決策〜道州制を用いて〜
では、道州制を実現した場合のことを考えよう。
例えば関西州を例に出す。
関西州知事は公選にする。
その上で、関西州知事が、現行の政令指定都市の市長、つまり神戸、大阪、堺、京都の市長を指名する。
関西州知事が出すビジョンの元、各大都市の市長がそれを具体化していく。
大都市の市長は任命制なので、その仕事内容が不適切であれば、州知事が人事権を行使し、交代させることができる。
総理大臣と国務大臣の関係に近い。
一方、各大都市では、40万人ほどから成る特別区があり、強化された住民サービスを受けることができる。
こうすれば
関西の広域行政は一本化されつつ、一方で、神戸、大阪、京都、堺という、4つの個性あふれる都市の個性を維持することができる。さらに、住民サービスの拡充も図れる。
まさに1石3鳥の制度である。
(5)まとめ
オーケストラを経験したからこそ見出した、新たな地方自治体制。これを実現したい。
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