見出し画像

🤍【年末年始に読みたい詩】🤍

❄️『ある大晦日の夜の記憶』

その夜は粉雪がふっていた
わたしは独り書斎の机の前に坐って
遠い除夜の鐘を聴いていた

風の中に断続するその寂しい音(ね)に聴き入るうち
わたしはいつかうたた寝したように想った
と 誰かが背後(うしろ)からそっと羽織を着せてくれた

わたしは眼をひらいた
と そこには誰もいなかった
羽織だと想ったのは静かにわたしの身(み)に積った一つの歳の重みであった

西條八十✨
詩集📖美しき喪失より

🤍❄️🤍❄️🤍❄️🤍❄️🤍❄️

🌞『太陽のほとり』

太陽
天に掘られた光の井戸

私たち
宇宙の片隅で輪になって
たったひとつの井戸を囲んで
暮らします

世界中どこにいても
太陽のほとり

みんないちにち 
まいにち汲み上げる
深い空の底から
長い歴史の奥から

汲んでも汲んでも光 
天の井戸

(日本の里には元日に若水を
汲むという美しい言葉がありました)

昔ながらの
つるべの音が聞こえます

胸に手を当てて聞きましょう
生きているいのちの鼓動
若水を汲み上げるその音を

新年の光
満ちあふれる朝です

 石垣りん✨

🎍🤍🎍🤍🎍🤍🎍🤍🎍🤍

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?