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正しい日本語をAIスピーカーに学んで思う、論理国語を批判する活字ムラの人について

年始のAmazonセールでNature Remo mini 2というスマートリモコンを買いました。これでエアコンや照明の操作が出来るようになり、さらにAmazonのecho dotで使用出来るAlexaと連携させることで、音声でのオンオフも可能です。

それはそれで大変便利で、少しずつスマートホーム化を実感していますが、Alexa経由での音声操作の際に気が付いたことがあります。

「アレクサ、エアコン付けて」
では動作せず、
「アレクサ、エアコン『を』付けて」
というように、助詞を入れないと認識してもらえないようです。

ただ単に私の発声や滑舌に問題があるだけの可能性もありますが、当然ながら日本語として正しいのは、ちゃんと「を」が入っている後者の方です。

人との会話では、この程度の省略でももちろん理解されないことはまずあり得ません。文法と大上段に構えるほどのことではないでしょうけれど、AIスピーカーを使用するために自分の言葉遣いを正された格好です。

ドラえもんくらいAIロボットが進化すればこんなことを気にする必要はありませんが、残念ながら現代ではまだまだです。それまでは、人間側が、AI・ロボットに命令する言葉遣いや文法を出来る限り正しくしないと、間違った動作をしかねません。

前述のように、不正確な文法で発せられた命令を受けても、相手側のAIが動作しないのであれば実害は大してありませんが、もしも真逆の動作を始めたりするとかないません。冷房を付けようとして暖房になってしまったら、場合によっては生命の危機にもつながります。

毎日話す家族や、気の知れた友人との会話だけなら省略も文法無視も何でもありです。それでも意図は伝わりますし、トラブルも起きません。しかし、音声認識であれこれする時代になれば、むしろ正しい言葉遣いを意識的にせざるを得なくなるでしょう。いわば、AIに言葉を教えてもらうようなものです。

そういえば、昔こんなnoteを書きましたが、

自動翻訳だけではなくて、AIスピーカーを通して自分がこの現実に直面するとは驚きました。

さて、言葉遣いや文法の乱れを指摘する知識人やマスメディアは昔から存在していますが、その指摘が成功することはありません。

文部科学省による新しい指導要領において、論理国語・文学国語の導入が様々な波紋を呼んでいるようですが、批判するのは別に構わないけれど、それらの批判では、じゃあなぜこの導入がなされるようになったのか、という根本的な原因には触れていない気がします。

知識人、有識者、あるいは読書好きの人にして見たら、日本人として生まれ育った人が日本語の文章の読解が出来ることは当たり前すぎることなのでしょうけれど、げんじつにはそうではありません。おそらくはその人の想像以上に、文章の読解が出来ない人はたくさんいます。

活字によって情報を得るしかなかった時代に生まれ育った人と、現代社会で生まれ育った人では文章読解力に大きな差があって当然です。もちろん、ミクロな個人レベルであれば、昔の人でも文章が読めない人はいたでしょうけれど、マクロな全体の割合で言えば現代の方がまともに文章を読めない人の割合は多くなっています。

日本語を何不自由なく使える人が、文法や読解力について意識することはまずないのでしょう。書いてあることが読めないことが理解出来ないのです。この点から言えば、文科省の役人の方が、論理国語・文学国語の導入に批判的な知識人よりもはるかに問題意識を正しく持っているはずです。

もっと踏み込んで言うと、文章が読めない人を多く生み出したのは現代社会全体の問題であっても、そういう人への配慮が欠けているのは、文科省のこの方針を批判している知識人っぽい人たちです。

彼らにして見たら、読書できない人は下等な存在なのかも知れません。読めない人をなんとかサポートして、日本語の文章を読めるように持っていこうとするモチベーションは皆無でしょう。

活字業界そのものをかつて批判したことがありますが、活字業界で恩恵を受けている人には、読書なんて呼吸と同じレベルと考えているのでしょう。呼吸できない人なんていないのだから、配慮する必要なんぞ不要であり、文科省の新方針は間違っているとしか思えないのでしょうね。活字ムラで生きてきた人は、ムラの外を理解出来ないのです。

他人が正しい日本語を使えることを当然と考えている人は、他者への理解が乏しいはずです。論理国語・文学国語の導入によって他人の気持ちが分からない人間が増える、という批判は、まさに自分が他人の気持ちが分からない人間であるという恐ろしいブーメランを伴っています。

試しに、AIスピーカーを使って自分が正しい日本語を使えているか、という疑問を持ったことは、私個人にとっては良い経験になったのだと思います。

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