セレブが非難される対象なのは今に特有のこと?

ワールドカップで日本に衝撃の敗戦を喫したこともあり、2大会連続でグループリーグ敗退となったドイツ代表の選手に関して、噂レベルですが、アホっぽい話も出てきました。

結果的に負けたのだからどうにも反論できないでしょうけれど、実際に選手が子育てに追われている最中に、セレブ妻たちがSNSに夢中になっていたかどうかは、さすがにタブロイド紙の言うことですので、しかもイギリスの新聞ですから、ドイツを馬鹿にするための記事という向きもあると思います。

ただ、実際にドイツ代表選手が妻や家族と同室で過ごせる決定を下したことは、GL最終戦前にも報じられていました。

家族のせいで負けたなんてことは、ドイツに限らずどこのどの選手であろうと自ら認めるはずがありませんし、第一ワールドカップ期間中はともかく、普段のリーグ戦でも同じ環境なはずで、そこまで試合のパフォーマンスに影響するのかとも思いますが、ドイツ代表のみならずセレブへの非難も含んでいるようにも思えます。

「セレブ」という言葉が日本で一般的になったのは少なくとも21世紀になってからだったはずですが、社会階層的には間違いなく上位に位置する人たちであり、大衆紙・タブロイド紙の読者層とはかけ離れていて、ともすれば隔意も敵意もある存在でしょう。

「セレブ」は本来、有名人という意味ですが、日本ではむしろ「お金持ち」「富裕層」という意味合いに使用されています。お金持ちという言葉で言えば、「お大尽」とか「長者」とか「金満家」「成金」「ブルジョア」などなど、いろいろな言葉が時代につれて変わってきまして、現時点では「セレブ」が使われているのでしょう。

そういった、富裕層やそれに類する階層への批判ややっかみはいつの時代にもあるもので、セレブに対する反感は、貧富の格差が広がる現代に限ったことでもありません。いつだって金持ちはひがまれますし、本来の金持ちは「金持ち喧嘩せず」であるはずですが、現代のセレブ(金持ちとしての意)は、結構公の場での主義主張は積極的に行います。件のドイツ代表についても、カタールでの人権侵害を訴える主張についても、そのセレブ階層で盛んでしたから、夫たる選手たちも結局日本戦直前までチーム内で議論せざるを得なかったのでしょうね。

さて、セレブの子もセレブとして扱われるわけで、「御曹司」「ご令息」「お坊ちゃん」とか、「令嬢」「お嬢様」とか言われていたのが、「セレブ~~」に移行しているわけです。

「お嬢様」も本当に何代も続く名家の子女はもちろんいるのでしょうけれど、「お嬢様」が記号化し始めている文化もあります。

「お嬢様部」に代表されるような、「お嬢様」を丁寧な「お嬢様的」な言葉や振る舞いを通して、社会的に価値のある行動を面白楽しく実行していくような人たちもいます。

少なくともその「お嬢様部」においては、お嬢様っぽい言葉遣いというのは、お嬢様がナチュラルに発するものというよりも、お嬢様っぽい感じを出すことが「ネタ」になるから存在しています。

じゃあ「お坊ちゃん部」とか「金持ちのボンボン部」は無いのか?と思ってしまいますが、お嬢様の言葉遣いの方が特徴的だからでしょうか? 逆に言うと、そういう人が絶滅危惧種だからかも知れません。

現代においては、「お嬢様」が記号化してフリー素材のような扱いになりつつあるわけで、将来的には今の「セレブ」的存在も、記号化してマネされる存在になることもあり得るでしょう。その時には「セレブ」に変わる言葉が生まれているはずで、その存在が、また庶民には非難されていることでしょう。

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