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残価設定ローンによる「所有」から「利用」への移行

残価設定ローンによる自動車購入は、導入されたときは結構話題になりましたが今では普通になりました。

利用しない人はもちろんたくさんいるでしょうけれど、利用している人にとってはそれはそれで当然のサービスになっていると思います。

言うまでもありませんが、残価設定ローンとは、数年後にその車を買い替えるときの下取り価格を想定して、本来の価格から下取り予想価格を引いた金額に対してローンを設定して購入する仕組みです。

ほとんどの人は同じ車を何十年も乗り続けません。数年後には買い替えます。必ず買い替えるのなら買い替える前提でローンを組んだら安く済む!というのが残価設定ローンの特長です。

車を「所有」したい人にとっては多分不評な仕組みですが、モノに対する考え方が「所有」から「利用」に変わりつつある現代社会だからこそ生まれてきた仕組みでしょう。数十年前なら受け入れられなかったでしょうし、そもそもメーカーや金融機関も考えなかったはずです。

さて、この残価設定ローンの必要条件としては、数年後には買い替えるということの他に、買い替えて古くなった車の中古市場が存在することがあります。中古車市場はそれこそはるか昔から存在します。新品は高価だけど中古品でもメンテナンスすれば長く使えるモノには中古市場があります。自動車・バイクは当然ですが、衣服やパソコンなどもそうです。最近ではスマートフォンの中古市場もiPhoneの高価格化に伴い急成長してきました。

そういえば、スマートフォンでも残価設定ローンによる購入形態が出てきました。

業界初、5G時代に向けた"新しい残価設定型スマホ購入プログラム"「かえトクプログラム」を2月21日から提供開始
https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2020/02/17/4285.html
24回払いを条件に、購入機種の2年後の買い取り価格を残価 (=最終回支払分) として設定し、本体価格から残価分を除くことで23回のお支払いまでは低廉な割賦金額となります。
スマホおかえしプログラム
https://www.nttdocomo.co.jp/campaign_event/okaeshi_program/?icid=CRP_CHA_discount_to_CRP_CAM_okaeshi_program
36回の分割払いで購入された対象機種を当社にご返却いただいた場合に、その翌々月請求分以降の分割支払金(最大12回分)のお支払いを不要とするプログラムです。

新品のiPhoneが原付バイク並の金額になってきた以上、業界としては必然の導入だと思います。

「所有」から「利用」への移行は社会的な現象ですが、この所有から利用への移行というのがなぜ起こってきたのか。財産は負債でもあります。所有によるメリットがある一方で維持費用というデメリットもあるからです。

それでも財産にこだわるのは歴史的にほぼ全ての時代でモノが不足していたことの裏返しです。継続して維持するための費用と使わなくなったときの処分費用が獲得費用を下回るのであれば所有する理由になります。

逆に、例えば自動車で言えば維持のための税金・駐車場代が高くなり、一方で新車も中古車も溢れていて個人では高く売るのが難しい(つまり処分費用が高い)のであれば、車を個人で所有する必然性は大幅に低下します。所有することによっていつでも自由に使えることと所有欲を満たすことくらいしかメリットがなくなります。

とは言っても、いきなり「所有」から「利用」形態に完全移行するのは精神的にも物理的にも大変でしょうから、その過渡期の形態として「残価設定ローン」が出てきたのかも知れませんね。

ちなみに、例えば人生や命に残価設定ローンを設定して、利用中は楽しめて期限が来たら命を失ったり死後は苦しむとしたら・・・と考えたところで気がつきました。いわゆる死神との取引と同じですね。ゲーテのファウストとか古今東西でさんざん使われてきたシチュエーションですね。残価設定ローンの最初の利用形態は小説などのフィクションだったとも言えそうです。

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