電話加入権の有名無実化と中国における土地利用権の行方

NTT法の改正・廃止に関して、政府と事業者間でずっと揉めていますが、一般大衆からすれば、
「昔それなりの金額で購入した電話加入権は?」
ということくらいしか興味が湧いてこない話です。

別に私自身としても今さら当時の金額で返してくれとか思いませんし、そもそも今の若者世代にしてみたら自分たちには無関係な電話加入権のことで年寄りに分配するくらいならdocomoの料金を安くしろ、っていう感じでしょう。

ちなみに電話加入権についてはアラフォー以上じゃないとそもそも存在自体知らないでしょう。若い人はググってください。端的に言うと、昔は自宅に引く固定電話回線を利用する権利を、電電公社(後のNTT)に数万円払って手に入れないと電話が使えなかったのです。

さて、電話加入権は携帯電話の普及によって意味が無くなりました。というか価値も無くなりました。今さら新規で固定電話回線を引くのは新築の家くらいでしょうし、最近は固定電話を持たない人もたくさんいます。

電話加入権のことでちょっと類似性を感じたのは、現代中国における土地利用権です。

中国は共産党支配により土地は私有できず、政府が所有するものを個人でも法人でも「借りる」ことしか出来ません。その際には利用権を買うことになりますが、その利用権も数十年で期限が切れます。

中国経済が改革開放路線により地方政府が土地を売りまくり始めてから30年ほどですが、もうその期限を迎えたケースもあります。土地の種別により使用年限が異なりますが、居住用地の70年という期限は、早い時期に購入された利用券の場合、もう半分近く経過したことになります。

ニッセイ基礎研究所 基礎研REPORT(冊子版)4月号[vol.277] 社会研究部 研究員 胡 笳+

来るべき期限到来時には、利用権の更新を行うか、更地にして政府が収用するかどちらかになりますが、更新料を払うとなると借りている側が耐えられないでしょうし、収用するに当たり補償するのは地方政府が耐えられません。

多額の負債に苦しむ地方政府が取るとしたら、
・更新料あり
・収用補償なし
という、人民にとっての茨の道でしょうけれど、そうなると社会不安どころの騒ぎではなくなります。

いっそのこと共産党支配が崩壊して土地私有制度が復活して、借りている人がそのまま所有できるようになった方が都合が良いのは間違いありません。

いくらなんでも中国共産党も中央政府も、地方政府がやり過ぎることで、革命の気運を高めさせるわけにはいかないでしょう。

日本における電電公社の電話加入権が携帯電話の普及によって有名無実化したように、土地利用権というシステム自体を有名無実化させるには、中国政府がその人民をみなメタバース空間に連れて行けばいいのです。

そうすれば、各種のSF作品で描かれたように人々は肉体を機械につなげるためのスペースさえあれば良くなり、生身の人間が利用する土地は不要になります。

もしかすると、数十年後に最も早く国家ぐるみでメタバース化するのは中国だったりして。

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