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口先介入しやすい市場規模と流動性の危険性

イーロン・マスクのツイートで相場が上下するビットコインは、まるで昔の金融相場のようです。

あのツイートで右往左往する人は儲かっていないような気もしますが、マスク氏本人はどうなんでしょうね。テスラ社も大量にビットコインを買っていますし、他の企業も大量購入する時代になりましたが、あくまで将来のリスクヘッジ程度で考えているなら短期間の上下は気にしないでしょうけれど、慣れていない個人投資家は慌てて売り買いしている人もいるんじゃないでしょうか。

昔は中央銀行が口先介入といって、中央銀行総裁などが公的に発言した内容が、相場を動かしたり動きを止めたりすることがありました。中銀総裁以外にも、日本なら大蔵大臣(財務大臣)、アメリカなら商務長官とかが発言することもありました。このままだとこういう介入しますよ、と記者に話すだけで、相場の過熱を鎮火させることも出来た時代でした。

今では日本銀行総裁だろうがFRB議長だろうが、少々の懸念を表明したくらいでは相場は動かず、逆に大した対策を打ってこないだろうと見くびられて思惑と逆の方向に動くことすらあります。

中銀が関わる長期金利などは多少の影響は及ぼすことが出来ますが、株式市場や為替市場は具体的にがっつり介入しないと影響は出ない時代になりました。

時代が変わったというよりは、市場規模と流動性の違いでしょうか。

冷戦の頃と今とでは、経済もグローバル化して全世界の金融市場に流れるマネーの総額ははるかに巨大になり、口先介入で動かせる規模ではなくなったのかも知れません。

日米欧の株式や為替相場はプレイヤーも金額も巨大なため、相場を直接動かせるレベルの介入が現実の指標に出てこないと誰も信用しないとも言えます。

一方、ビットコインなどの新しい金融市場は規模も小さく、流動性も低いです。流動性が低いというのは、売り買いしたいときにすぐに出来ない可能性が高いということです。

規模が小さいので、著名人や富裕層が関わりを匂わせるようなちょっとした発言でも上下しますし、その上下に過剰に反応してしまって乱高下します。

金融市場の中で市場規模が小さく流動性も低いような市場は、そもそも一般人が参入するのは難しいものでしたが、ビットコインなどのデジタル通貨市場にはネットが使えれば誰でも売買できます。参入障壁が低いのに、絶対量が少なく価格が乱高下するというのはどう考えても素人向きの相場ではないと思うのですが、「億り人」になりたい人はこれからも増えるんでしょうね。

投資の初心者が関わるなら投資信託か株式のETFあたりしかないと思うのですが、それらも別に安全確実高利回りというわけではありません。それを理解した上でやるしかないのです。

少し前にアメリカで起きた、Redditを発端に始まったゲームストップ株価の騰落劇も記憶に新しいところですが、上昇時に買って下落時に売るトレンドフォロー戦略が存在する限り、誰かの後を追って売り買いする人は無くなりません。かといって逆張り戦略はなおさら素人には難しく、相当な種銭と固い精神力がないと続けられません。

「マーケットの魔術師」なんかを読んでいても、どの成功した投資家にも共通するのは、他人に左右されず自分の確固たる投資戦略を持っていることです。後追いだろうが逆張りだろうが決めた方針で行って損切りも出来るなら、まず大失敗はしません。

これから、世界の市場でバブルが崩壊するかも知れませんし、強烈な勢いで値上がりしているテスラやGAFAなどのIT関連の株価も一気にショックが襲うかも知れませんが、その時にデジタル通貨も落ちるなら、より一層ダメージが大きいのは流動性・市場規模が小さい方でしょうね。

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