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セキュリティとユーティリティとモビリティのトリレンマ

セキュリティ・安全性とユーティリティ・利便性は基本的には対立します。

便利・使いやすいものは人に使われる危険性もあります。極端な例ですが、いちいち鍵の開け閉めが面倒だからと言って自宅や自家用車の鍵をかけずに使用していたら、当然ながら空き巣・窃盗を招きかねません。大きいものに限らず、ウェブサイトのパスワード入力やスマートフォンのロック解除にしても同じです。

逆に、セキュリティをガチガチにしてしまうと当然ながら使いづらくなります。いわば安全性と利便性のジレンマです。

技術の進歩、特に生体認証の普及により、デバイスやサービスに対する本人確認機能においては、セキュリティとユーティリティの両立はかなり実現的になってきました。コロナ禍によるマスク着用状態での顔認証が難しいという、新たな問題も出てきましたが。

このジレンマを解消するには、技術の進化もさることながら、そもそも悪用されない状態にすればセキュリティの部分は解決します。簡単に持ち運べないものであれば、盗まれづらいし盗まれても悪用されづらいはずです。

例えば、持ち運ぶノートパソコンと、自宅内に据え置きのデスクトップパソコンでは、他人に悪用される可能性は大きく異なります。毎日持ち歩いていれば、移動中や移動先で他人の目に触れますし、盗まれたり置き忘れたりすることだってあり得ます。デスクトップパソコンだってデジタル的にはネット経由でパスワード漏洩したり遠隔操作されたりしないわけではないですが、その点ではノートパソコンも全く同じですので、移動中のリスクの分だけノートパソコンが危険性で上回ります。

じゃあ、絶対に持ち運べない家そのものは絶対に安全なのかと言ったらこれはこれで異なります。家にアクセスするための鍵は必ず外出時に持ち歩くため、その鍵の悪用(盗難・紛失・不正コピー)のリスクがあるからです。自動車も同様な上、持ち運ぶ(というよりは乗っていく)ために倍率ドン、さらに倍です。

いわば安全性・セキュリティと利便性・ユーティリティと携帯性・モビリティのトリレンマです。

これについてはITの進化が続いても変わらないでしょう。スマホで生体認証のスピードが高速になってセキュリティとユーティリティのジレンマが解消されても、持ち運ぶリスクはずっと存在します。

ちなみに、IT製品以外にもこのトリレンマは適用できそうです。

傘で言えば、折り畳み傘は持ち歩きやすいという点では便利ですが、傘の部分自体は狭くて使いづらく、強度も弱いです。逆に大きなちゃんとした傘は強風にも強いし雨も防ぎやすいですが、持ち運ぶのは邪魔になります。

お金だってキャッシュレス化が進んでいますが、モビリティについては現金よりも電子マネーの方が優れていて、使い勝手でもいちいち紙幣と硬貨を数える必要もありませんが、大規模災害や停電時には全く使えなくなります。

じゃあ永遠にこのトリレンマは解消できないのかというと、あり得なくはないでしょう。そもそも移動しなくても良い状態、まさに昨今のようなテレワーク・遠隔授業などで全てをこなせるようになって、なおかつ自宅に太陽光発電あるいはドラえもんのような超小型核融合炉が出来てエネルギーもまかなえ、SFに出てくるような食品でもなんでも自動で作り出せる装置が出来てしまえば良いのです。外出しなければ携帯性は必要無く、エネルギーを自家発電で賄えれば安全ですし、何でも自宅で作り出せれば便利です。

マトリックスやアバターみたいな話ですが、そうなった社会が人類にとって果たして良いものなのか、そんな状態の人類が生物と言えるのかどうかという全く毛色の違う問題があるのはまた別の話でしょう。


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