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破綻の責任の取り方はどうすれば良い?

先日のアルケゴス・キャピタル・マネジメントの突然の破綻によって大騒ぎとなりましたが、市場の反応は大して起きず、実際に損害を被ったクレディ・スイス、三菱UFJ証券、モルガン・スタンレーが大きな損失を計上するくらいに収まりそうです。

そうはいっても世界的に見れば数千億円のマネーが突然消えたわけで、アルケゴスのような数百億ドルを超えるレバレッジ取引というものの恐ろしさは改めて感じました。

アルケゴスは一般的なファンドではなく、ファミリーオフィスのため当局への届出も取引や資産内容などを公開する必要も無かったので、リスクを取りたい放題だったのでしょうけれど、今回の問題でファミリーオフィスにも規制がかかるようになるでしょうか。

それにしても、個人や家族の資産を管理するためのファミリーオフィスにおいて、何倍ものレバレッジをかけて取引をするというのもあまり理解出来ません。しかし、ファンドマネージャーのファン氏が金の亡者だったのかというと、難しいところです。

自宅は300万ドル程度のものだったそうですし、贅沢の極みのような生活を送っていたわけでもありません。一般庶民には高い家ですが、日本円で兆単位の取引をしていた人の自宅としては、むしろ慎ましいレベルでしょう。彼より少ない取引額・資産額のファンドマネージャーでも数十億円の家に住んでいる人は珍しくないはずです。

もともと、投資業界をインサイダー取引で追放された後に、規制のないファミリーオフィスで取引を再開してここまで稼いだのですから、単にお金を稼いで贅沢をしたいのではなく、取引をすること・資産を増やすことが自己の存在意義だったのでしょう。その結果としてお金が懐に入ってきただけで、個人の収入はいわば副産物のようなものだったのかも知れません。

とは言っても、誰かがこの損失を被らないといけないわけで、リスク承知で取引していた各金融機関はそれぞれ金融当局や株主から突き上げられることになります。

しかし、ファン氏のように、高リスクで取引をし続けて終には高転びした人が、その金額全てを責任を背負うわけではありません。無い袖は振れないのでどんなに法律を犯していても、せいぜい数年程度の懲役刑です。罰金も見つかる資産だけから払われます。

これは個人だけでは無く法人も同じです。大きすぎて潰せないというのは、日本のバブル崩壊後も、アメリカのリーマンショック後も言われました。潰れた大企業もありますが、国策で残された大企業もあります。

こう言ってしまうと、上級国民がどうのこうのとか、大企業と政府の癒着だのなんだのという話になってしまいますが、中小零細企業も日本ではそれなりに保護されています。

零細企業が恩恵を受ける消費税の益税とか、無利子無担保で借りられる融資とか、保証協会やら公庫で借り換え続けて生き延び続けるような、小規模企業はいくらでもあります。最近では、コロナ禍で潰れる会社もあれば補助金・助成金で会社や雇用の維持を出来ているところもあります。

語弊があるかも知れませんが、潰れる時に潰れない会社は、社会全体から見れば非効率でもあります。平然と潰す完全自由主義社会が理想とは思いませんが、政治的な思惑で生き残りのための資金が融通されるのも、本当に国民全体にとって有益なのかというと、いろいろ思うところはあります。

ただ、無謀な取引や経営をして潰れそうな会社を税金で救うのと、長年慎ましく商売をしてきた小さな企業を税金で維持するのはまた理屈が異なるでしょう。

経営者や法人が無茶な投資や取引の結果で破綻した後、その個人も経営陣も大して責任を取らない一方で、その破綻のあおりを食らって失業したり生活が苦しくなる人はたいてい国からも見捨てられます。

高リスクを取る人から見たら、そんな庶民が貧しい暮らしにあえいでいるのも自己責任と言うことになるのかも知れませんが、高リスクを取って失敗する人だって自己責任のはずですけれど、そういう人は自分の過ちを素直に認めません。

政府が悪い、マスコミが悪い、ネットユーザーが悪いなどなど、どうのこうのといいわけを言います。勝てば官軍ですが負けても賊軍には現代ではなりません。有限責任を果たせば何だって許されます。この辺は法律の限界ですが、道徳や倫理は人それぞれなので防ぎようがありません。

ちなみに、アルケゴスを超える損失になりそうな破綻リスクが、中国の国有企業である中国華融資産管理という会社に存在しています。200億ドルを軽く超える借入を中国本土外で行っていた、不良債権受皿機関である華融資産の元会長は、死刑宣告からわずか三週間後に死刑執行されています。「死人に口なし」ということわざを地で行く中国政府が、この融資を中国政府が肩代わりするか、中国国外の機関投資家が損失を被るのかはまだはっきりしていません。

莫大な損失を招いた人間が無罪や微罪で切り抜けるのも腹立たしいですが、ことがはっきりする前に処刑されてしまうのもそれはそれでアカンのですが、どうも世界はどちらにしろ極端ですね。

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