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タビナス・ジェファーソンに思う国籍という近代の産物

昨年、ガンバ大阪に所属していたタビナス・ジェファーソン選手に関する記事がナンバーに出ていました。

昨年ガンバでプレーしてU23でのフィジカルの強さと低い位置でもボールをつなごうとする姿勢は今でも覚えています。ただ、私はタビナスが日本国籍を持っているものと思っていました。上記の記事によると、単なる国籍の問題だけでもなく親のビザの問題もあったようで、まだ若い選手にとっては大変な心労があったことと思います。

ガンバ大阪U23チームの森下監督との出会いも大きかったそうで、彼に良い影響を受けた選手ってどれくらいの数になるんでしょうか。ガンバだけではなくJリーグや日本サッカー・アジアサッカーにとってもしかしたら重要な指導者になるんじゃないですかね。

ともかく、国家代表を目指すサッカー選手にとって国籍の問題は避けては通れません。日本に生まれて日本に住んでいる日本人にとって、国籍を意識する機会はあまりありません。せいぜいパスポートを使って海外旅行する時くらいでしょう。

日本では法律によって日本国籍を持つ日本国民は、他国の国籍を持つことは出来ません。親の関係で複数の国籍を持っていても、日本国籍を取得するか放棄するかを選択する期限があります。

二重国籍を認める国もたくさんありますので、それらの国々と比べたら日本政府は融通が利かないとか保守的だとか時代遅れだとか言う人はいますが、法律はその国や文化の伝統と歴史に基づいて制定される以上、単純な話でもないでしょう。

実際に国籍で悩んでいる人にとっては当然重要な問題ですが、なかなか他の日本人にとっては国籍選択・取得のあるべき姿というのは想像が難しいです。国籍法を改正するかどうか、そもそも改正すべきかどうかについて法務省や国会での議論に現実味が出てくるのは、日本がもっと国際的な人的移動の中に入ってからの話になるでしょう。このコロナ禍によって少なくとも数年は遅れたとは思いますが。

そもそも国籍という概念が出てきたのは19世紀以降の近代国家化によるものです。それまでは移動手段の難しさはあれど、人々は好き勝手に国を移動出来ました。近代国家の成立によって、国境・国民・政府が成立し、国籍が重要になりました。

ある人がどこの国籍を持っているかということを、政府が証明する必要が出てきました。国籍を持つことで、その国の保護を受けることができます。もちろんその代わりに国民としての義務を果たす必要があります。

昔ならいざ知らず、今の時代に国籍を持つ国民に重い義務を課す国はほぼありません。ゼロとは言いませんが。国民の義務と国家による保護は本来はトレードオフの関係にありますが、複数の国籍を持っている人の場合はややこしくなります。徴兵制がある国の国籍を複数持っている場合、どこの国でも兵役をこなすのでしょうか?

また、これも20世紀ならいざ知らず、自国民の保護を理由に他国に戦争を仕掛けるような国もほぼありません。ゼロとは言いませんが。嫌らしい考え方をすると、他の国籍を持つ人を自国籍に取り込んで他国籍を放棄させれば、「自国民保護」を理由とする侵攻は防げますよね。実際にはそんな陰謀論めいたことは無いんでしょうけれど。

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