TikTokが自ら危険な存在だと証明してしまった話

TikTokをアメリカ連邦議会が禁止するための法案の審議中に、TikTokユーザーに向けて議会への抗議電話を奨め、唆す通知を大量に出した結果、運営するByteDance社の目論見通り、議会への抗議電話がユーザーから殺到しました。

そしてそれを議会への攻撃及びアメリカにとっての脅威だと再確認した議会は、この法案審議をより一層早めて進める決議を全会一致で採択しました。

まさに自分で自分の首を絞めた格好です。TikTokは国家の安全保障上の脅威だとみなされるかみなされないかの瀬戸際において、自ら進んで自分が危険な存在だと議会に対して証明する行動をとったのですから擁護しようもありません。電話による議会へのDoS攻撃を運営会社がやらかしたようなものです。逆に危険だとは考えなかったのかと思いますが、アメリカが何を危険視しているかについて、ByteDance社が正確に把握していないことは間違いありませんし、そのことをもって議会においてTikTokの禁止を訴えるには充分な証拠になるでしょう。

以前に書いたnoteにも引用した、春秋左氏伝の私の好きな逸話にこんな話があります。

古代中国春秋時代、晋の国に狼瞫(読みは「ロウジン」)という武に長けた人がいました。彼が国一番の勇者の証しである車右を拝命していたものの、名門の乱暴者が彼に取って代わってその地位に付き、そのことに対して狼瞫は、自らの勇気を侮辱されたとして当然ながら怒りました。
しかし、その怒る狼瞫に対して、彼の友人が
「お前と一緒に騒動を起こして、あの人事を手配した奴らを倒そう」
と誘いました。しかし狼瞫はそれに対して、
「死んでも不義な場合は勇とは言えない。国のために働くのを勇という。(中略)上の人が自分を見損なっていても、反乱を起こしてしまえば、結局自分を見抜いていたことになる」
といって断り、次の戦で先陣切って勇敢に攻め込んで戦死しました。そして、軍全体が彼に続いて敵陣に攻め入り大勝しました。

春秋左氏伝 文公二年

冷遇に反発して乱を起こしてしまうと、その冷遇が正しかったことを自ら証明することになるのです。ByteDance社は中国企業であり、そのトップももちろん中国人ですが、春秋左氏伝は学ばなかったようですね。

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