首相選出でデッドロック状態に陥りがちな欧州と、首相がコロコロ変わる日本

スペインの下院総選挙で第一党となった国民党が連立を組めず新首相を選出できなかったのですが、こういうケースはヨーロッパはしばしばあります。

一党だけで過半数を超えるような大政党がなく、少数政党が三つ四つも集まって連立政権を組むことが常態になっているからですが、スペインに限らず、イタリアでもドイツでも同様です。フランスは直接選挙で選ばれる大統領が国家権力のトップになりますのでちょっと違いますが、国民議会の多数派政党が指名する首相と所属が異なるとややこしいことになります。

首相選出のやり直しも上手く行かず、再選挙となれば数ヶ月~半年は新政権が成立しないことになります。その間は暫定内閣での行政運営となり、後々に大きな影響を及ぼすような重大な決定や中止などは出来ません。

つまり、選挙の結果スムーズに首相が選出されて、次期内閣に移行出来るとは限らないのです。ヨーロッパの多党制システムにおいて、少数政党であっても連立政権に参加出来ればその政策を実現しやすく、有権者の声を汲み取りやすいと言えます。

その代わりとして、肝心の政権成立までにかなりの労力と時間を要することになり、首相を出す政党が少数政党に配慮や妥協をせざるを得ません。

一方、日本の首相はコロコロ変わるという批判は昔からありますが、選挙後に首相の選出が出来ずに再選挙を行うことはありません。戦前のデモクラシー時代には第一党が首班指名を受けられず、第二党に委ねられることはありましたが、戦後はほぼ確実に第一党が首相を輩出してきました。例外は93年衆院総選挙で自民党が第一党となるも二位以下の野党が大連立を組み、戦前で言う「憲政の常道」を無視した形で細川内閣を成立させました。

2009年にも政権交代が実現し、その時は民主党が巨大だったので連立も不要でしたが、もし今、選挙で自民・公明両党が大敗北を喫したら、野党の複数連立政権になるでしょう。場合によっては、戦後日本で初めてのデッドロック状態になり、再選挙をしないと首相を選出できない事態になるかも知れません。

まあ、日本は選挙制度というよりも政党の在り方が独特で、自民党が保守から中道寄りリベラルまで幅広く対象とするような政党のため、自民党内部での派閥抗争が激しくなり、政党内選挙に当たる総裁選が、選挙の補完的な役割を担っているとも言えます。あくまで公的な選挙ではないのでアレやコレやと多数派工作しまくりで、総裁が決まらないということもないですし。

首相が何ヶ月も選出されないシステムと、首相がよく変わるシステムのどっちがマシなのか、というのはある意味究極の選択ですね。イタリアなんかはその両方を兼ね備えていますが、それでもまだ先進国の一角を担っているのですから、国力と選挙制度にはそんなに相関関係が無いのかも知れません。さすがに独裁者が君臨するような仕組みだと駄目でしょうけれど。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?