準軍事組織に支配されつつある21世紀の軍事紛争

スーダンでの日本人やその関係者の脱出は、自衛隊及びフランスや韓国などの諸外国の協力によって無事完了しました。アフガニスタンからアメリカ軍が撤退したときの混乱を反省材料にできたのか、今回は非常にスムーズだったと思われます。

今回のスーダンの内戦は、正規軍と準軍事組織の対立によるものです。RSF(即応支援部隊)と呼ばれるこの準軍事組織は、かつてのダルフール紛争で成立した民兵組織が元になっていますが、追放された独裁者のバシーる元大統領とも繋がりがあるとも言われています。

RSFは軍の傘下にあるものの実際には半ば独立した組織であり、民政移管の協議において国軍との併合について妥協出来ず、結果として正規軍と準軍事組織の軍事衝突という事態に陥りました。

無関係の外国人にしてみたらただひたすら迷惑というかそれどころではない話ですが、国軍・正規軍は法律や憲法によって外部からの制約がありますし、組織自体を法的に構成されていますので内部の権力・権限についても秩序がありますが、準軍事組織はたいていの場合そういうルールの埒外に存在するので、極端な言い方をすると「何でもあり」になってしまいます。

民主主義の確立した国家にも準軍事組織はありますが、それらは沿岸警備隊とか州兵とか内務省軍といった、法律や憲法に基づいた組織ですので、例え対立したとしても内戦になんかなるわけがないのですが、法的根拠がない準軍事組織には法的拘束力が及ばず(もちろん本来は及ぶはずですが)、さらに独裁者からは正規軍を使えないような後ろめたいことを請け負って重要度を増していくので、正規軍に並ぶほどの権力や軍事力を備えるようになってしまいます。

正規軍が出来ないことをさせる、あるいは勝手にするようになると、もう国家の文民官僚・政治家はコントロール出来なくなってしまいます。日本人としてパッと思いつく例は、戦前の関東軍が挙げられますが、他にもナチスのSSとかムッソリーニの黒シャツ隊とかありましたし、現代世界で言えばロシアのワグネルやアメリカの民間軍事会社、中国の海警隊も似たようなものです。もちろん、コンプライアンスやガバナンスはそれぞれ差はあるでしょうけれど。

正規軍が上と法的にも実力的にも明確に位置づけられているのなら、準軍事組織があったとしても揉めるはずはないのですが、そうでなければ当然揉めます。

さらに面倒なのは、国際条約や国際法において正規軍はやはり国内法と同様に制約を受けますが、準軍事組織は国際法や人権を無視して行動しかねません。アメリカの民間軍事会社がアフガンやイラクで何度も無法行為を行ってきたのはその証拠です。

国連で準軍事組織・民間軍事会社についての制約を課すべきでしょうけれど、米中露の3ヶ国が準軍事組織を大いに活用しているうちは無理でしょうね。

支配というのは言い過ぎでしょうけれど、21世紀の軍事紛争においてキャスティングボートを握っているのは準軍事組織であると言っても、大げさではないと思います。

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