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徴兵制の特別扱いの可能性と正当性

韓国の人気グループのBTSメンバーの徴兵をどうするかについて、いまだに揉めているとのことで少し驚きました。確か去年一昨年あたりにも同じようにどうするか検討されていたはずですが、まだ決まっていなかったのかと思いました。

法的にはもちろん、韓国生まれの成人男子は健康に問題なければ全員、徴兵されることになっています。それでもなぜ問題になっているかというと、徴兵される約2年間は当然ながら芸能活動ができず、それために世界的な影響力を持ったK-POPグループが活動停止することになりますから、それは国家的損失であり徴兵を免除あるいは大幅に短縮すべきだという意見があり、相当の支持を得ているからです。

どちら側の意見も理屈が通るから尚更厄介なのですよね。徴兵すべき論は法律を曲げるわけにはいかない、朝鮮戦争は終結しておらず北朝鮮の対立姿勢がある以上は徴兵に応ずべき、BTSメンバーですら徴兵に応じることは韓国の法治国家としての存在に寄与する等々、徴兵制の正当性とそれに応じる韓国国民の義務を求めるのも当然です。

その一方で、ごく一部の国家的貢献者には徴兵免除・期間短縮がこれまで認められてきました。有名なのはスポーツ選手で、オリンピック銅メダル以上もしくはアジア大会金メダルを獲得した選手は徴兵を実質免除されます。あと、2002年サッカーW杯でベスト4に進出した韓国代表選手も、特例としてフルの徴兵は免除されました。実際は数週間、軍隊に参加して基礎的なことだけをするのですが、2年近く兵役を務めることと比べたら大きな差があります。

昨今は、スポーツ選手の免除制度を止めるべきだという議論もあるそうです。日本に劣らず少子化の韓国では徴兵される若者も減っているわけで、差別は許されないという意見も強いみたいです。

サッカーの場合は尚武と言う軍隊のサッカーチームがあり、そこに入ればサッカー選手としての重要な時期にトップレベルでプレーできないという問題を解消できますが、芸能人の場合はそう言うわけにもいきません。だからこそ、BTSの徴兵問題がこれだけ長引いているのでしょう。

これはルールを重視するか無視するかという話ではなくて、特例扱いが国益に叶うか、特例扱いにより国民の不公平感をもたらして国益を損なうかという話です。

特例についてのルールがスポーツ選手のみに存在していて、それはかつての国威発揚・国外アピールがスポーツに頼ってきたという証拠でもあります。K-POPの世界的な流行に対して法整備が追いついていないわけですが、じゃあ法律を作りましょうということでもないのでしょう。少子化による兵役を務める人員の不足も出てきていますし、反対が多ければ尚更特別扱いもできません。韓国大統領は非常に権限が強いので、大統領令でなんとかなりそうな気もしますが、次期政権になった時に前政権の決定を覆すことが頻発する国ですので、特例扱いを無理に通しても、国民の半分が反対していたら将来どうなるかわかりません。

多分、どっちの結論を下しても揉めるのでしょうね。これはどうすることも出来ません。特例扱いのルールが存在しない場合に、融通を効かして実行するとややこしくなります。

どこかの国の誰かの国葬も同じような話ですが・・・。

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