ますます分断されるサッカー配信にみるコンテンツの奪い合い問題

Apple社がApple TV+のために、アメリカのMLS、メジャーリーグサッカーの今後10年間の放映権を取得しました。

世界中のApple TV+ユーザーは国別の制限など無しに誰もがどこでも観られるそうですが、Apple TV+の課金に加えて、さらに追加料金が必要ですので、一つのリーグのためだけにそこまで払って見る人ってどれくらいいるのかな、と疑問に思いますが、よくよく考えるとDAZNがJリーグと契約した時に、サポーターとして喜んで安いと思って支払っていました。それ以前のスカパー!国内サッカープランよりは安かったですし。

このApple TV+でのMLS視聴の追加料金がいくらになるかは分かりませんが、Apple TV+が月600円ですから合計して1000円程度には収まるでしょう。それでも余程のサッカーファンじゃないと観ない気がします。勝算があるんでしょうかね。むしろ、ここからさらに別のリーグのサッカーなどスポーツコンテンツの放映権を取得していくでしょう。キャッシュならクパチーノを埋め尽くすくらいはAppleなら持っていますし。

サッカー配信の世界の覇権を握ったかに思えたDAZNが、値上げする一方で放映権を失ったサッカーリーグやスポーツが増えてきたことで、DAZNの将来も見えなくなってきました。

UEFAチャンピオンズリーグや欧州各国のリーグ、ワールドカップ、EUROなど巨額の放映権が動くコンテンツがサッカー界にはたくさんあります。契約更新、新規契約ごとにその金額の巨大さがニュースになるくらいですが、それはそれだけビジネスとしては魅力的なコンテンツである証拠です。しかし、消費者としてはその巨大さがむしろあだとなり、配信先が分断されてきつつあります。

1社に全てのコンテンツが集まる独占状態は、価格決定権がその1社に集中してしまい、とんでもない暴力的な価格にされてしまう恐れがありますが、それぞれ分断してしまっても消費者の利益にはなりません。

サッカーを観るのにお金が必要になって久しいですが、さらに高額化していくとサッカー観戦がブルジョアの趣味になっていきかねません。イングランドプレミアリーグはチケットの高額化により、現地のファンがパブでしか観られなくなっているとも聞きます。

それだけコアな趣味になっていきつつあるということでもあるかも知れません。巨額の売上になるコンテンツは、巨額の権利で買われます。それが毒饅頭にならないように、コンテンツ提供側が消費者の目線も持ってくれるとありがたいのですが。

まあ、こんなことは別にネット時代、ストリーミング時代だから起きたわけではなくて、かつては将棋の名人戦を朝日新聞と毎日新聞が札束で殴り合って取り合っていたこともありました。今の将棋界は新聞社よりもIT企業が鵜の目鷹の目で狙っているように見えるくらいです。

一時期のプレミアリーグのクラブユニフォームみたいに、オンラインカジノ業者が跋扈するようなことは、将棋だろうとJリーグだろうとなってほしくはありませんが、取り合いにならないレベルの業界だとそれはそれでお金が回らないので、それはそれでその業界が沈没していってしまいます。

ライセンスの奪い合いが過熱というほどでもなく、閑古鳥が鳴くほどでもない、程良い状態が消費者・ユーザー・末端のファンとしては一番良いのですけれど、難しいものですね。

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