見出し画像

もしも米中和解が成立したら

日米首脳会談が先日行われました。バイデン大統領はこれからも対中外交では原則として対抗を前提とするようです。これはまあ既定路線でしょうけれど、トランプ大統領時代からの変化を期待していた中国側にとっては忌々しいことかも知れません。

そもそも、アメリカの対中外交政策が厳しい目線になったのは共和党・民主党に共通しています。保守的な共和党が国内産業保護のためだけに中国を敵視しているわけではなく、超党派で対中敵視の考えは存在しています。

人権擁護派も国内経済保護派もみんな、中国はライバルだと認識しているわけで、今後も当面は続くでしょう。そして太平洋の向こう側でアメリカの同盟国として中国に対峙する日本の立場も当面は変わりません。地理的には米中の大国に挟まれていて、単純な距離だけなら中国の方が圧倒的に近いですが、だからこそアメリカよりにポジションを取った方が、偏りすぎずにいられるのかも知れません。

日本有史以来、大陸進出は悲願でもあり鬼門でもありました。古代では大化の改新後に白村江の戦いで唐・新羅連合軍に惨敗して、朝鮮半島への影響力を失いました。

その後も、太閤秀吉による朝鮮出兵も二度行った上に失敗に終わりました。さらに下って明治中期以降続いた朝鮮半島・中国大陸への進出も、結局は敗戦によって終わりました。

日本は、地政学的にどうしても大陸に勢力を拡大したくなりますが、例え一時的に出来ても永続きはしません。だからといって無力であれば、刀伊の入寇や元寇もあったように、今度は向こうから攻めてきます。ある程度牽制できる武力は保持しておく必要はあります。

戦後の日本はそのある程度の武力としてアメリカ軍を利用しました。だからこそ、日米同盟は不可欠な重要政策であり、アメリカと中国の間でバランスを取るために存在しています。無ければあっという間に中国に取り込まれかねません。

等距離外交は難しいものです。韓国は保守派が政権を握ると親米になり、革新派が政権を取ると親中になります。今の文在寅政権では親中・親北ということになるのですが、その分アメリカとの距離が空きます。政治制度や経済的な影響では西側諸国の一因なのに中国に近付く難しさが存在しています。

アメリカの国力が落ちていって、中国が強大になり続けていくと、親米反中路線は日本でも韓国でも難しくなります。その場合に国家運営をどうするかは悩みどころです。本当にそうなるか分かりませんが、そこに至るまで米中の対立構造が続くとも限りません。

どこかで超大国同士の手打ちがあれば、結局、間に挟まれている国としてはやり方を変える必要が出てきます。実際、数年前に中国がアメリカに対して、米中で太平洋を二分してしまおうと呼びかけました。さすがにその時は話にもなりませんでしたが、中高米低という状況が続けば、そんなビッグディールが知らない間に成立してしまう可能性も全く無いとは言えません。

かつて、古代中国春秋時代で、北の晋と南の楚が争っていたときは、間にある中小国はある時には晋に、ある時には楚に付いたりして生き残っていました。距離感と国力の伸張を読み間違って、楚に滅ぼされる国もありました。

晋楚両国がバチバチやっている時、間の国々は戦場になり貢ぎ物も要求され、戦争時にはどちらかの同盟軍としての参加も要求され、弱小国の悲哀を日々味わっていたわけです。

しかし春秋時代中期の終わり頃には、晋楚間での和平もあり、また内乱・内紛がそれぞれで起きたために大国同士の決戦は無くなりました。ではそれで中間国がハッピーになったかというとそうでもなく、晋楚両国への貢ぎ物が必要になってさらに負担が増えたそうです。

さらに時代が下っていった戦国時代では、大半の中規模・小規模の国が征服されて無くなっていきましたが、さて、アメリカと中国が近い未来か遠い未来に和解するとしたら、太平洋の間にある国はどうなっていくのでしょうかね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?