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ハッピーシュガーライフ自己流考察まとめ

連載当時から読んでたのですが、自分の考察をまとめる場がなかったなと思い、ちょっと人物別でキャラ同士の認識を中心に自分の思ったことを書き留めておきます。


ハピシュガ9巻画像


1、松坂さとう

 まず彼女とは。

両親は幼くして他界、まもなく叔母に引き取られ現在に至る。両親の記憶はほとんどないのか彼女を構成するものはだいたい叔母の教育によるモノである。叔母が何度も口ずさむ《愛》とは何か、しっくりくる答えが見つからず男性と遊び歩く。

簡単に書くとこんな感じで、人物像は見ての通りですね。

さとうしお

→しお

さとうはしおに対し《愛》の感情が湧くことに気づき、しおに側にいてほしいから共同生活を始めます。

この時点でさとうにとってしおとは「愛を生んでくれる存在」「私を愛で満たしてくれるもの」つまり自分の目的を果たすために利用価値のある可愛い人形でした。

しょうこ殺害後しおに拒絶される場面までは。

しおは自分もさとう同様に相手を守りたいと、これからはそういう関係でありたいという主張をして、さとうはそれを言葉通りに受け止めました。ここで二人の関係性が一方的な二つではなく相互な関係に発展し、同時にその事実をさとうが認識しました(一見重要なことに感じられないかもしれませんが松坂さとうの最期の場面に関わる極めて重要なポイント)。

ここでさとうにとってしおは、「自分が愛し自分を愛してくれる人」に変化したということです。

そして最期の瞬間、さとうはしおに《恋》を感じた...のではないでしょうか。それを伝える術が残されていないことを悟ったさとうは、いつかの時間にしおが同じ想いに辿り着いてくれることを願いしおを庇いました。

この最期について、誰一人確かな推測がたてられないのではないでしょうか。ただあの場面で、「この気持ちが本当の」と何か大切なことに気づいた。そして後ろ姿から振り返って自分を呼ぶしおの姿が鍵となっている。これはかつて可愛いお人形なだけであったしおちゃんのイメージでは成り得ない、一人と一人の人間だから生まれたもの。

とてもわかりやすく言うならそれは恋愛感情なのかな...と、自分は思いました。

おばさんさとう

→叔母さん

叔母さんとの日々を回想するとき、幼少さとうがいつもクマのぬいぐるみを持っていました。アニメEDをみるに、叔母がプレゼントした物だったのでしょうか。

恐らくこのぬいぐるみ自体に何かしらの執着や愛情を抱いていたわけではないのでしょう。いわゆる目に見えないお友達の投影。自分に足りない埋められないものを埋めてくれるさとうの想像上の誰かです。ぬいぐるみを大事にする子供にはよく見られる光景。もちろんそれが埋まることはありません。

叔母さんを表現するとき「毒親」という言葉がものすごくしっくりきますね。社会的に悪者というわけでもない、ただ自分にとって毒として機能しいつまでもずっとずっと頭の隅で声を響かせ続ける者、毒親。信じられない人もいるでしょうが世の中の半分程度の親なんて毒です。すみません話が逸れました。

しょうこ殺害後に叔母と話す場面がやはりポイントです。

「あなたの愛は間違ってる」「私をこんな風にした責任を大人としてとって」そうして叔母を納得させるシーンは全ての毒親育ちに観て欲しい感動があります。ともあれ叔母も納得させられて、協力を得るに至ります。

さとうにとって叔母は一貫して「乗り越えるべき毒」です。

もちろん明確に邪魔をしてくるようなら殺してしまいますが、そんなに簡単ではないしただただ精神的に不愉快なだけの存在というものでした。

さとうしょうこ

→しょうこ

さとうが一般人で唯一心を開きかけた人。

もしも叔母を見せた上で受け入れてくれるようであればもう少し踏み込んだことを伝えようとさとうは考えていましたが、明確に拒絶されてしまったのでさとう的には期待させて裏切られちゃったみたいな心持ちでした。

この時点でさとうにとってしょうこは自分の気持ちを裏切った人、他の有象無象と同じ位置に格下げした存在となりました。前はそれよりもうちょっと上だったのに。

そして雨の日の事件でさとうの手を汚し、さとうは唯一の友人を手にかけるという逃げられない精神的ダメージを負う結果となりました。

あの日しおと一緒にいるところを見られ、写真を撮られたという事実によりさとうはしょうこを殺さざるを得なくなりました。はい、しおと共に居続けるためにはとりあえずあの場では殺すしかありません。かといってさとうの心がそれら全てに耐えられるというわけでもないのですが。

なんにせよ、さとうにとってしょうこは大変悲しい存在となってしまいました。



ハピシュガ10巻表紙

2、神戸しお

 彼女とは。

ゆうなの娘として生まれ、幼くして母と二人暮らし。8歳で母に捨てられたところをさとうに拾われ同居生活を送る。

ゆうなしお

→ゆうな

まず最初は母ゆうなに対するお気持ち。

しおは、母のことは母として好きだったんですよね。当然のことのように書いていますが(そして実際当然なのですが)それは悲しいことにゆうなの求めるものではなかったということです。

知っての通りゆうなはなりたくて母親になったわけでは決してないのです。あさひの場合もしおの場合も(それでもあさひは大丈夫でしおは大丈夫じゃなかったのは何故なのか。この辺りは後述あさひsideで詳しく解説します)、ともあれゆうなはしおから母として求められることが嫌なのです。まるで出産時に看護師に「お母さんなんだから頑張れ」と言われたときのようで。

でもしおはそんなことは知らないし、まだ幼いのでお母さんはお母さんだとしか認識できませんでした。そしてわかる人にはわかると思いますが、機嫌の悪い親の機嫌を必死にとろうと頑張っていたのです。機嫌が悪いとそれだけで環境が悪いですから。子どもという生き物はそれが当たり前なのです。

そしてしおには見えるゆうなの心の瓶。どう見ても自分のせいでぐちゃぐちゃに割れてしまったそれを見て、捨てられ、共にいるべきではないのだと思い込み、「自分のために生きていてほしかっただけだ」と言い聞かせることでしか心を納得させる術を持たなかった。

ちなみにですけど、ゆうなさんはしおのこと人として嫌いだったと思いますよ。昔の自分にそっくりでイライラするだけじゃなくて、全然自分の思い通りに動いてくれない。それなのにあさひはしおのこと大切そうに扱う。嫌いにならない方がおかしいです。

時は流れて火災の日、しおは兄との会話の中で「温かいもの」を思い出します。それでもさとうとの人生を選ぶこととなりました。

しおさとう

→さとう

しばらくの間しおにはさとうとの出会いの記憶はなかったのでしょう。それでも真っさらな状態で「楽しいことだけの素敵なお城」を与えられ、自分をたくさん愛してくれる人がいるその環境が、記憶を失うほどの精神的ストレスを受けたしおのメンタルを大幅に回復させたことは事実であるはずです。

心が回復したからこそ、忘れたかった「家族」を思い出すに至ったのですから。

そして同時に「何も考えなくてもいいんだよ」「何もしなくていいんだよ」に疑問を抱けるようにもなった。

しょうこを殺害したさとうに気付いて、消沈するさとうを励ますべく動いて、それなのに何もしなくていいと言われ激怒。自分もさとうの為に頑張りたいのだと主張。

この時しおは人生で初めて「〜したい」を受け入れてもらえたことになります。生まれて初めて、舞台装置でもない天使でもない人形でもない、一人の人間として肯定を受けることになります。

そして兄と対面したとき、しおはさとうを選びます。しおにとって、人間であることを許されるのはさとうといる瞬間だけなのですから。


神戸あさひ画像

3、神戸あさひ

 彼はどんな人か。
母ゆうなの第一子として生まれ、のちに妹しおが生まれる。父の暴力から母と妹を逃がしてしばらく後父が死亡、母のもとへ向かうと妹は行方不明となっていた。

あさひゆうな

→ゆうな

母ゆうなとのことを何より先に書かねばならない。

ゆうなは初めて生まれたあさひのことを、「自分の嫌なことなんにもしない子」だと評した。一般常識のある人ならここでもうわかる、それはすごくおかしいと。赤子なんて泣いて当たり前の生き物だし、親の嫌がることとか物心つかない状態で察するわけがないのだ。

それはあさひが大人しすぎる性格ということも要因の一つではあるのだろう。しかしあさひの生まれた場面の次の場面、幼稚園児ぐらいに成長したあさひが母に駆け寄る場面を見ると、とてもそれだけとは思えない。

まず母に気づいたあさひが駆け寄る。しかし突然抱きつかず距離を取って止まり、母の反応を待つ。母がおずおずと手を出してからゆっくりと手を握る。あさひは母に恐怖心を抱かれていることを知っていたのだろう。

突然大きな声を出すことも、突然触ることも、母が怖がる。恐らくは赤子の時点で気付いていた。

何故そうまでして母を気遣えるのか?それは恐らく生まれたときから母ゆうなのことを愛していたからである。もちろん子が母を愛するという意味ではない。それだけならばしおだって母を愛していた。あさひは一人の人間として、一人の女性を愛していたのだ。

あさひは作中何度も家族の愛を重要視していた。それ以外の幸せの形が理解できないとさえ言っていた。しかし家族愛というのは単純な血の繋がりによる愛とは定義できない。それなら父親もまた家族愛の対象となる。

あさひの愛する、あるいは愛を注ぎたいものとは「集団」ということになる。ゆうな、あさひ、そしてしおの3人が一緒にいる光景そのものが最も尊い幸せの形なのだ。

ゆうなは高校生の頃、独り言で「王子様が迎えに来てくれる」と言っていた。そんな中であったのは悪魔だったわけだが、その悪魔との子、あさひこそがゆうなを迎えに来るたった一人の王子様だった。ゆうなもまたいつからかそれを無意識に想うようになったのか、「いつかあの子が迎えに来てくれる」とうわ言のように口ずさんでいた。

あさひは生まれた瞬間運命の人と出会い、ゆうなを守るたった一人の王子様を宿命づけられた少年だったのだ。

あさひしお2

→しお

あさひにとってゆうなが運命の人ならば、あさひにとってしおとは何だったのか?

あさひはまず、しおの出産に立ち会っていた。そして出産直後ゆうなにこう言った。「この子は俺たちの月だ。この子を支えにして頑張ろう」

月、とはどういう意味だろうか。

しょうことの会話では暗闇を照らす光というニュアンスだと解釈できる。同時にただそこにいるだけで照らしてくれる、とも言っていた。そう、しおにとって一番聞きたくない「ただそこにいてくれるだけでいい」である。

要するにあさひがしおに求めていたのは、自分とゆうなの為の舞台装置の役割である。自分たちを照らしてくれさえすれば他の何かでもいいのだ。

これは自分の完全な邪推なので流してもらってもいいが、しおは漢字にすると「潮」「汐」、あさひ(朝)もゆうな(夕)も入る。完全にあさひとゆうなの子ども扱いじゃねえか!となった。確かに出産に立ち会ったあさひのムーブは完全に父親のそれでしたね。

あさひが欲しかった幸せの形の正体は、あさひが父親、ゆうなが母親、しおがその子どもという完成した擬似家族を作り出すことだったわけです。

ちょっと悲しいですけど両親が亡くなる直前に両親に甘えるゆうなの妄想とすごい似てるんですよね...理想の家族が欲しかった...

しょうことあさひ

→しょうこ

ここまで書いたらおわかりいただけたかと思いますが、しょうこさん、ゆうなさんにめっちゃ似てます。主に「王子様〜」のくだりが。

他人に懐かないあさひがしょうこにのみ懐いたのも納得です。

さらに言うなら自分が変わる気はさらさらないくせに他人が変わって自分を受け入れてくれることを期待してるところとかそっくりです。まあその点ゆうなさんは心が壊れてから邪魔だと思った悪魔さんを始末するだけ行動力があったんですけど...

個人的には「あんたが私の王子様だったらよかったのに」がせやな...となりました。あさひはゆうなの王子様だからしょうこの王子様にはなれなかっただけで先にしょうこと出会っていたらあるいはとも言える。

さとうあさひ

→さとう

さとうにとって、あさひが宿敵たりえたのは自分が唯一理解できることのない「家族愛」を掲げていたからなんですよね。

じゃああさひにとっては、というとまあ状況的には自分の家族を奪っていく悪魔だと思ってるのですが、あさひ君別にしおちゃんのこと好きでもなんでもないですからね...擬似家族の一部作りたいだけですからね...

構図的には愛し合うさとう⇄しお、あさひ⇄ゆうなで実はあさひの方がしおを奪っていく悪魔に成り下がってるみたいな感じでしたね。やはり悪魔の子は悪魔だったか...

他にも構図の対比でいくと、生まれたときから《愛》がわからなかった松坂さとう、生まれたときから《愛》を知っていた神戸あさひっていうのはありました。二人とも愛する者のためいくらでも手を汚して戦う者だったのですがそういう事情を互いに知ることなく終わってしまったっていうバトル展開としては王道だったかと思います。


あとがき

もっとキャラいますけどとりあえずはここまで書き残しておきます。個人的にはしお人間扱い問題とか頭おかしいだろって思ったんですけど一番好きなのはさとちゃんです。自分もこれぐらい愛に生きる人になりたい...ってか1話から最後までよくよく見ると「どれだけ愛が大きいか」で勝敗が決まってるんですよねどれも。めっちゃ面白い。

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