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「YouTuber」とやらに、なりたいあなたへ ~アプリと私の生存戦略~

今、あえて問いたい「YouTuberとわ?」

スマホを買ったばかりの頃、暇つぶしに某大手ニュースサイトを読むのが好きだった。それなりにバラエティに富んだニュースがまとめられていて、スキマ時間で効率的に情報収集ができた。けれど最近、そのニュースサイトの見出しを見ても、ただただゲンナリするだけになった。ほぼ(知らない)ユーチューバーの逮捕や小競り合い、問題発言。要するに小ネタばっかり!

「フォロワー数〇〇万人のユーチューバー、詐欺で逮捕」「人気ユーチューバー△△の、差別的発言にネット騒然、賛否両論」
わざわざ記事にしなくていい人とネタ。興味ないのでスクロールが早い早い。ここまでくるとニュースサイト自体の存在意義すら、もはや疑問だ。

その中でも、やはり段違いレベルで問題だと思うのは、その名のとおり実生活に迷惑が及ぶ「迷惑系ユーチューバー」だ。しかもマスコミや世間が、騒げば騒ぐほど収まるどころかマネする人たちが泉のように湧き出てくるというこの不思議さである。

それでも、将来子供がなりたい職業は何といっても「ユーチューバー」なのだ。いや小学生じゃなくても、このユーチューバーという職業に、一縷の望みを託したくなる人間は一定数いる。いいと思う。自分が好きなこと、得意なこと、面白いと思ったことに共感してくれる人が世界中のどこかに(しかも結構な数)いる!という凄さ。うまく行けば収益化でき日々の糧になる。それはもう強烈に魅惑的なライフスタイルだ。だって、何といってもアレにならなくて済む。誰もなりたくないのに、なぜかみんながさせられるアレ。そう「社畜」にならずに済むかもしれないんだよ・・・わかる、わかるよ。すごくわかる。だからこそ、今ちょっと考えてみませんか。そもそもユーチューバーとわ?

「YouTuber」は職業名なのか?

ユーチューバーは、グーグルのアプリ、Youtubeを使って動画を投稿し、広告費や投げ銭を得たり企業のプロモーション案件や仕事のオファーを受けることで、仕事として身をたてている。ならば「ユーチューバー」とは何か?とその中身を訊かれた時、まずは「動画制作者です」ということになる。

一方で、これはすべてグーグルの与えてくれた「場」の中で行われていることだ。そうである限りは、そこのルールに従った動画を上げなければいけないという大前提がある。そして当たり前だが、万が一「アプリ終了」になった時は、居場所そのものを失うリスクがある。ふと思った。これ(歩合制の)会社員と何が違うのだろう?会社だってルールに従わなければいられないし、ある日突然倒産することもある。YouTubeを攻略することと、会社で自分の立ち位置とか生存戦略を考えるのは、どこか似ているのではないか。(これはYouTubeに限ったことではないが)

実のところ、個人的にはこの「会社員」という言い方が、昔からどうしても好きになれない。賃金とか男女平等とか正規非正規とか、今さまざまな「働き方改革」を進めている中で、これも変わっていかないか望んでいることが、この雇用形態をそのまま職業だと言わされることだ。「会社員」「派遣社員」「アルバイト」「パート」・・・たとえ正社員と同じ仕事をしていても、アルバイトだもんねー。責任感もないかわりに、労働意欲も自己肯定感もモチベーションすら下がりそう。でも、こういう身分だけを表す「会社員」という言い方と「ユーチューバー」という言い方も、やはりどこか似ている気がしてならない。要するに「箱=いれもの」の職業名化だ。大切なのはその「会社=アプリ=組織」で、あなたのしていること「仕事内容(動画内容)」ではないだろうか。

あなたはどんなユーチューバー(会社で何をする人)か?

パターン①メンバーシップ型社員

毎日律儀に動画をアップして、面白い企画で人気を得ているユーチューバー。会社にもそんなタイプの人が一定数いる。企画業。広告業。際限なく企画を思いついては、何故か全部「ウケる」。あるいは、仕事むしろ全然できない!のに、なぜか愛嬌で出世できる「人たらし系社員」。これはお得だし華がある。羨ましい。みんながあなたになりたいと思う。これはある意味「才能(タレント)」だ。同じことやってもなぜか受ける、そんな星のもとに生まれついた人なのかも。これってある意味、日本が伝統的にやってきた「メンバーシップ型」の労働形態で充分自分の良さを発揮できるタイプの会社員たちともいえる。ソロ活動のアイドルみたいなタイプもいるが、たいていはホモソーシャル的に強固な内的集団(派閥)を作って動いている。ユーチューバーでいえば「グループでの活動」だ。思うに、小学生が憧れる「ユーチューバー」の姿って、このパターン①じゃないだろうか?いつまでも大人にならなくてもいい世界——「終わらない学生時代」を、永遠に再現できる理想のライフスタイルに見える。

パターン②ジョブ型・Wワーク社員

「めちゃくちゃ得意なことあります!この件なら私にお任せあれ」美容師さんのヘアケア法、バレエダンサーのエクササイズ法、簡単お料理から音楽の演奏あるある、英語の発音のコツまで。私もいろいろとチャンネル登録して「その道のエキスパート」の言うことを参考にしているが、こういう方々は、会社でいえば「Wワーク型」とか「ジョブ型」雇用の会社員みたいな立ち位置なのではないだろうか。つまり本業(得意なこと)があって、それを広めるための活動の一環としてYouTubeをやっている人。だからYouTubeに精神的に依存することはない。バズろうとも思わないだろうが必要だから見ている人は多いので、チャンネル登録者数は伸びる。自他ともに本業にもメリットになる。

パターン③無自覚にお荷物になっちゃう社員

さて問題なのが「迷惑系ユーチューバー」だ。彼らがもし会社の同僚・上司・部下ならばどんな人なのだろう。やらなくていいことをやって、他の社員の仕事を増やしてくれる人といったところだろうか。他が何とか尻ぬぐいできればいいが、外部の取引先までに被害が飛び火するような、現実的に無理なレベルだと、最悪処分対象になることも。(SNS上の迷惑動画が「現実の社会」としてその人にのしかかってくるのは、まさにこうなった時だ)

しかも彼らには失態の自覚がいまいち薄く、他にも迷惑をかけていることが理解できていないフシもある。それもそのはず、彼らは自分を「パターン①」だと思い込んでいて、一発逆転でそのステージに上がりたいと思っているからだ。しかしパターン①になるには、最低ラインとして「センス」がいる。普通の人がやろうと頑張ったところで、どうしても無理ゲーなのだ。

実はこういうタイプは社内の人間関係も面倒だ。それは人付き合いの根本が「かまってほしい・認めてほしい・褒めてほしい」というモチベーションだけで動いているからだ。誰のためにも動きたくない、誰のためにもならなくてもいい。むしろ俺のために人が動けぐらいに思っている。当然だけど、特筆すべきスキルやポリシーはない。運よくバズって一時的にフォロワー数が伸びることばかりを考え、どんどん過激に立ち回る。そうしたところで心はやはり空虚なのだが。どんなに昇進しても、給料があがっても=家庭円満や本当には幸せでないのと同じ。本当に欲しいのは、得られなかった承認や安らぎなのだから。

パターン④そもそも「会社」に向かない

ほんの一部だが、もはやYouTubeという「会社」のルールですら収まりきれない、どうしても自分のしたい仕事がやれないというスティーブ・ジョブスみたいな社員がいる。映像ではどうしても魅力が半減してしまう何かを表現するとか、会社ではルール上「NG」だが別の場であればすんなり通る表現をする人。こういうタイプがYouTubeにいたら、その会社は向かないと感じるだろう。それは根本的に「場」が違う、あの巨大組織ではしたいことができないのかもしれない。そうなれば、もう独立しかない。そもそもパターン④の人たちは「最初から見えない人たち」という可能性もある。なぜなら、そもそもユーチューブ自体をやっていないからだ。最初から個人事業主だからだ。独自に場を作り表現している人たちは、きっとYouTubeの周縁か、別のパラレルワールドにいる。

結局、我「何を」思う?これしかないかも。

17世紀の哲学者・デカルトの言葉に「我思う、ゆえに我あり(コギトー・エルゴ・スム=cogito, ergo sum)」というのがある。世界の全てのものの存在を疑おうと思えばすべて疑えるが、そもそも「いま、ここで疑っている=思う(考えている)自分」というものの存在だけは確かなのだ、という。(ここで詳しく説明しませんが、デカルトのこの言葉は、本来は「神の存在を証明するため」の過程の中で使った言葉です。かっこよく、俺って考えてるから存在してるよね!以上!って「言い切った」わけではありません)

数年前、この言葉に対して「ただ”思う”って言ってもさ、絶対に”何か”に対して思っているわけでしょ?それは何なの?」とあえてツッコミをいれた本を読んだことがある。書名はちょっと忘れたけど、たしかハワイ行きのデルタ航空の機内で読んでいた(せっかくの南国行き、もっと気楽なもの読んだらいいのに、って今なら思うよ)

神の存在証明をしたかっただけのデカルトの言葉を、あえて現代的に「自分って何を思う(する)人なの?」という質問に読み替えて「思う=存在する」のリアルに迫った哲学ベースのエッセイだった。本の内容はすっかり忘れたものの、この「我、思うゆえに我あり」の解釈がユニークで、ずっと覚えていたのだ。

はい、だからこそもう一度問います。

あなたは何を「思う」人ですか?
Youtubeで、何を伝えたい人なのですか?
それはTicTokerだろうが、
Instagramerだろうが同じことです。

あなたはその「会社」で何をしたいのですか?
それは「会社」を出た時、通用する内容ですか?

とりあえず、まずあなたは、
「動画制作者」なのは確かでしょう。
でも何を?
何をあなたは生み出すのですか?

○○er~と、さらっと名乗っちゃう前に、
まず、私は●●をする人です、と。
自分の価値、考えてほしいのです。

自分のすること、したいことに「ブレない意義」を見出した時、その時はじめて自分の発信に対して「責任」と「プライド」そして「愛情」が生まれてくるのだと思います。そして最後は、それに従って活動していく人が残る、将来、着実に自分の居場所を得ていく人になるのだと思います。




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