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息子と外出、太陽が怖い

家を建てる工事の音が気になる。トラックから出る排気ガスが怖い。ブンブン周りをとぶ虫が恐ろしい。太陽の照りつける光すら攻撃的に思える。

生後3週間目、息子と2人で3駅先の病院に行った。
2人での初めての外出だった。

それまでも車で実家に行ったり、家の近所を夫と3人で散歩をしたりと外に出ることはあったが、指定の時間までに指定の場所に出かけるのはこの時が初めてだった。

病院の予約時間が早かったため、夜間のミルクを担当する夫には寝ていてもらい、1人で行くことにした。ガーゼやオムツを持ち、抱っこ紐に息子を入れて出発する。

一歩外に出ると、8月の太陽の光が真っ直ぐに息子へと降り注ぐ。慌てておくるみを取り出し自分の首に巻き、抱っこ紐におさまる息子を覆い隠す。

家では「段々大きくなってきたね」「もう産まれた時と全然違うね」と話していたのに、外での息子はずっと小さく、とんでもなくひ弱な生き物に見えた。1人だと気にも留めない些細なことが、全て息子に牙を剥いてるように感じる。

息子の圧倒的な無力さになんだか涙が出てきて、「大丈夫だよ、母さんがいますからね。大丈夫だからね。」と息子をぎゅっと抱きしめて歩いた。

抱っこ紐とおくるみで覆われて、こんもり丸を描く息子。お腹に重みを感じ、妊娠中を思い出す。
でもこの子はもう出てきてしまったのだ、こんなに小さいのに、この世に出てきてしまったのだ。

すぅすぅと小さな息を聞きながら歩く駅までの道、申し訳なさと愛しさが混じったような気持ちが込み上げて、ずっとずっと胸が苦しかった。

2ヶ月が過ぎた頃には息子は6キロを超え、産まれた時の倍近くの体重となり、この世で生きていけそうな見た目になってきた。もう2人でお出掛けしてもあの時感じた苦しさはない。
だけど太陽の光にすら怯えた日に感じた息子の小ささはきっとずっと忘れない。

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