新卒社員のオンボーディング仕組みについて ~新卒社員が会社に適応していくために~
昨今、オンボーディングと言う言葉をよく耳にすると思います。そこで、今回、新卒社員のオンボーディングの概要から施策まで説明していきます。
1. オンボーディングとは
新しく入社した社員が会社の組織にスムーズに適応できるようにするためのプロセスのことをオンボーディングと言います。オンボーディングは、英語のon-boardingから由来しており、社員が会社の一員として早期に役割を効果的に果たせるようにするための導入・適応支援の仕組みとも言えます。
特に、新卒社員の低い離職率は、企業の採用競争力を高めるカギとなっており、新卒社員へのオンボーディングは多くの日本企業が積極的に進めている取り組みとなっております。
2. 新卒社員の会社組織に対する適応課題 ~リアリティショックについて~
ここからは、オンボーディングの背景にある新卒社員の会社組織への適応課題について説明します。
新卒社員した社員が会社組織に適応できない大きな原因の一つとしてアメリカの組織心理学者E.Cヒューズによって提唱されたリアリティショックが挙げられます。リアリティショックとは、理想と現実のギャップにより精神的なショックや戸惑いを指します。
具体的には、入社前に抱いていた理想の業務内容や職場環境と実際の内容が異なる場合、モチベーションの低下や会社への信頼の損なわれやすくなります。その結果、早期退職などの形で企業に影響を及ぼすことになります。このリアリティショックは、業務内容や対人関係、他者との能力差等のギャップから起因することが多いと考えられています。
3. 新卒社員のオンボーディングプロセス
こうした新卒社員のリアリティショックを防ぐまたは軽減させるために、オンボーディングの仕組みを構築することが重要となってきます。以下では、リアリティショックを阻止/緩和するための具体的な取り組みについて大きく2つご紹介します。
■ 組織への適応支援策
例えば、所属外部の上司とのメンター制度によるキャリアカウンセリングや上司との定期的な1on1ミーティングを会社として義務化することで、新卒社員が抱える業務やキャリアパス、人間関係等の関する不安や悩みを早期に把握し、解決に向けた具体的な対応を取ることができます。また、業務上の利害関係のない外部カウンセラーの配置も新卒社員への心理的安全確保につながると言えるでしょう。
■ 教育制度
リアリティショックを乗り越えるためにも、入社後の充実した研修制度は必須です。ここで、充実した研修をデザインするためのポイントについて、以下の3つをご紹介します。
① 入社後に予想される可能性がある実務面や心理面の課題に対して、克服する術を組み込んだ内容にする。
② 同期との結びつきを強化させ、同期意識を育んでもらう。
③ 会社の事業や制度の魅力を再認識させることで、会社への愛着や信頼感を深めてもらう。
ここまで、新卒社員の入社後のオンボーディングについて述べてきましたが、採用段階から会社側は、実態に即した内容を応募者に伝えることが重要になります。例えば、正確な給与額(基本給なのか月例給なのか)や実際の労働時間、求める役割等を明示することで、入社後のギャップを最小限に抑えることができます。
4. 効果的なオンボーディングのために必要なこと
オンボーディングでの効果を期待するためには、制度面を整備するだけでなく、オンボーディング対象者を取り巻く周囲の環境にアプローチすることが大切になります。
現場の上司がオンボーディング制度を理解し、OJTと連携させて進めていくことがオンボーディングの成功には必要不可欠です。そこで、人事部として、新卒社員の育成方針を策定し、会社上層部から現場の上司まで浸透させていく必要があります。その上で、上司の部下育成スキルの向上を目的とした取り組みも必要になってくるでしょう。
5. まとめ
いかがでしたでしょうか。新卒社員におけるオンボーディングの仕組みについて述べてきました。社会人として初めてのステップを踏み出した新卒社員が理想と現実のギャップに悩んで退職という道を選択しないためにも、組織への適応支援策や教育制度の整備は必要不可欠です。加えて、会社全体に新卒社員の育成感を浸透させ、OJTと制度を組み合わせて新卒社員を教育をしていくことが効果的なオンボーディングには求められます。
参考文献:尾形 真実哉. 組織になじませる力, 株式会社アルク, 2023, P238