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【二次小説】新規・古参問題をマーケティング視点で解説する

オタク界隈と切っても切れない問題の一つ、「新規・古参問題」。アニメや漫画に限らず、幅広いオタク業界において、新規と古参の対立構造はしばしば問題化しがちです。
新規の方、古参の方の気持ちとしては、主にこんな感じでしょうか。

新規の目線
・知識、ファン歴でマウントをとられてイヤな気持ちになる
・自分のつぶやいた解釈を否定され、楽しめない
・定番設定や定番カップリングが出来上がっており、それ以外を許容しない雰囲気がある
・キャラやカップリングごとに中心人物や中心グループがあり参入しにくい
・界隈の独自ルールなどを強要してくる

古参の目線
・新規が増えて今までの界隈の雰囲気を崩されるのがイヤ
・界隈の常識や定番ネタを知らず、勝手に解釈したり盛り上がったりが気に入らない
・今までにない解釈やカップリングが目に入り、精神的につらい
・絵や文章が上手な新規によって自分の地位が脅かされるのが怖い

どちらの気持ちもよくわかります。一方で、どちらの立場の人も少し冷静さを欠いてしまっているようにも感じます。作品のファンである以上、熱意があるのは当然です。しかし、対立が問題行動につながれば界隈は乱れます。乱れれば居心地は悪くなるし、新規ファンの中からも古参ファンの人たちの中からも界隈を去っていく人が出てくるでしょう。即ち、ジャンルの衰退です。作品を愛するファンであれば、誰もそんなことは望まないはずです。
そこで、それぞれの感情とは少し距離をおいて、「新規・古参問題」についてマーケティング的な視点で考えてみようと思います。

マーケティング的視点①:マーケットの拡大には新規ファンの獲得が必須

まず、界隈を一つの「マーケット(市場)」と捉えた時、マーケットを成長させるには新規ファンの存在は不可欠です。その作品に初めて触れる人、今まさに推そうとしている人ほど、積極的に「消費活動」を行います。グッズを買い、コミックスを買い、アニメを視聴し、そして新しく二次創作をします。グッズやコミックスは運営の売上につながりますし、アニメを視聴すれば再生回数が伸びます。二次創作が増えれば、界隈は自然と賑わいを増します。過去の作品を細々と咀嚼しつづけるファン活動もそれはそれで楽しいものです。しかし、運営や原作に対して恩返しをするという視点で考えれば、ジャンルの発展と新規ファンの獲得は必要なことです。
一方で、そのジャンルが今まで存在してきた背景には、かつて新規だった人たち、古参ファンの存在があります。古参ファンが積極的に消費をし、お金を使い、二次創作をして界隈を盛り上げてきたからこそジャンルがジャンルとして存在できたのです。
つまり、古参がいなければそのジャンルは存在しなかったかもしれないし、新規の参入がなければ先細ってしまうかもしれないということです。新規も古参もマーケットにとっては大切な存在です。このことを理解し、お互いを尊重し合う姿勢が大事だということではないでしょうか。

マーケティング的視点②:害悪なファンはマーケットを歪め、阻害する

マーケットにとって、ファンの消費活動(グッズや書籍・DVDの購入、イベント参加、動画再生、ゲームダウンロード、SNS発信)はとても重要なことです。しかし、運営の期待しない方向に暴走するファンは、いわば「害悪なファン」であり、新規の参入を阻害し、他のファンを委縮さ、さらにはマーケットから去らせてしまうかもしれない歓迎できない存在です。オタ活ではない一般的な商材の場合、この「害悪なファン」とは、新規に何かを強要したり、商材の間違ったイメージを発信、楽しみ方を限定するようなファンのことを指します。このようなファンは、どれほどお金を使っていても、動画再生やSNS発信を熱心にしていても、企業やブランドからは歓迎されません。では、オタ活におきかえると、どんな行動を指すか。独自ルールの設定や解釈の強要、他のカップリングを叩いたり、他人の二次創作に不満や愚痴を述べたりする行動がこれにあたると考えられます。
好きゆえに気持ちが暴走してしまうことは、ファンであればあり得ることです。しかし、その気持ちを行動に移す前に、一度自分自身を振り返ってみるべきかもしれません。愛する気持ちのせいで愛する対象を傷つけてしまう、こんなに悲しいことはありません。気持ちを抑えることは難しい、でも行動を起こす前に踏みとどまることはできるはず。自分が「害悪なファン」になってしまわないか、少しだけ時間をとって自分と向き合ってみるのはいかがでしょうか。

マーケティング的視点③:良質なファンの獲得がマーケットを成長させる

ファンがいなければ、ジャンルは発展しません。しかし、「害悪なファン」の行動は、他のファンたちを委縮させ、新規参入やジャンルの発展を阻害してしまいます。逆に、「良質なファン」の存在はマーケットの発展に大きく寄与します。では、オタ活における良質なファンとはどのようなファンのことでしょうか。一番は、原作の素晴らしさや二次創作の楽しさを伝えるファンではないでしょうか。楽しそうに活動している人は、周囲に良い影響を与えます。「ジャンルのことはちょっと気になるな」という人の新規参入を勇気づけることにもつながります。また、「良質なファン」としての行動は、二次創作をするということに限りません。原作に対する萌えをつぶやいたり、他の人の作品をリツイートしたり、誰かの作品に感想を言ったり、いろんな方法があります。
もちろん、誰もがそのようにポジティブに振る舞えるものではありません。しかし、「不機嫌を表に出さない」ということは肝要です。不機嫌は周囲を委縮させます。それでも「どうしてもこの不満は発信せずにはいられない」という時は、「自分の不機嫌な態度が周囲を委縮させてしまうかもしれない」ということだけは自覚しておくべきでしょう。オタ活のメインとなるSNS、X(旧Twitter)はミュートやブロックが可能なSNSです。嫌なものは見ない、自分が傷つくものとは距離をとる。ミュートやブロックをつかって自分が機嫌よく振る舞える環境を自分の手で整えておくことは、楽しくオタ活を続けていく上でとても有効なことです。

どんなジャンルも界隈も、二次創作の世界は自分一人だけでは存在し得ません。原作があって、運営があって、たくさんのファンがいて初めて存在する世界です。
オタ活や二次創作をしていると思い通りにならないことや傷つくこと、悲しいことも当然あります。怒りや悲しみをSNSでぶつけたくなることもあるでしょう。でも、そんな時は一度立ち止まって、自分自身と向き合ってみてください。自分の行動が周囲の人たちやジャンル、運営に対してどんな影響を与えるのかを少しだけ時間をとって考えてみてください。
愛するジャンルの崩壊や衰退を望んでいる人は、きっといないでしょう。ジャンルを愛するということは、求めるばかりではなく時には我慢も必要なことがあります。多くの人で構成された世界であれば、ある意味で仕方のないことです。少しの我慢ができなかったせいで多くの悲しみにつながってしまうより、ほんのちょっとの我慢でたくさんの幸せにつながるほうがずっといい。そんな風に視点を変えることができたら、オタ活がより楽しくなるかもしれません。

ありがとうございます。 好きを形に!たのしく同人活動!を目標にがんばります!