CES Asia
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CES Asia

1月にラスベガスでCESを視察し、様々なデジタル技術や活用事例を見て、とても刺激になった。そのアジア版が6月に上海で開かれたので、こちらも参加してきた。
結論から言えば、「世界初!」といったデジタル技術は見られなかった(又は見つけられなかった)ものの、デジタル技術を多くの人が使えるように「実用化」する、社会に「実装」していく、という点で刺激を受けた。

CES Asiaの概要

開催日: 2019年6月11日火曜~12日水曜
場所:  上海市のSNIEC(上海新国际博览中心)
主催者: 本家アメリカのCESの主催者が中国企業/団体と共同で開催。
     具体的には、International CES (Shanghai) Exhibition Co.、Ltd
     本家アメリカのCES主催者であるCTA(The Consumer Technology
     Association)の100%子会社が、Shanghai Intex Exhibition Co., Ltd.
     と協働で開催。それ以外にCCCME(中国机电产品进出口商会(中
     国機械及び電気製品輸出入協会))と、CECC(中国电子商会(中
     国電子機器協会))が協賛している
歴史:  2015年から開催しており、今年は5年目
規模:  (2018年実績)
     出展者:500社以上
     来場者:80か国から4万人以上
     会場: 42,000㎡(東京ビッグサイト東西ホール合計の1/2程度)
     ※本家アメリカのCESの1/4程度の規模、と言われている
     ※2019年実績は、公式には未だ未発表

主要テーマ(主催者の区分)

ヴィークル・テクノロジー
5G、AI、IoT 
AR/VR、ロボティクス
スタートアップ

所感

CES Asiaは毎年1月にラスベガスで開催される本家CESの子会社が運営しており、規模は通称1/4程度と言われている。しかし視察した実感はさらに小さく、1/8程度に感じた。
出店者の数/会場の広さ/入場者の数、と言った視覚から受ける印象に加えて、展示内容の先進性や独創性を掛け合わせると、さらに小さい印象になってしまったのが理由である。
しかしこれは、視察して得られる価値が1/8という意味ではない。デジタル技術の基礎開発や実用化にて、今の中国の立ち位置を理解してCES Asiaを視察すれば、デジタル技術を企業に/社会に実装させるためのヒントをいくつも得られる場であった。
デジタル技術の世界では、基礎的な技術の研究/開発はアメリカ、その実用化や応用は中国、という位置付けになっている。分野を詳しく見て行けば、民生用ドローンやスーパーコンピューター領域では、中国がもっとも進んでいるとも言われているが、全般的に言えば基礎技術開発はアメリカ、応用/実用化は中国が長けている。
CES Asiaは「中国企業による中国市場向けの展示会」という色彩がどうしても強く出るために、「新しい技術の発表」よりも「応用や実用化」製品の展示が増えるのは当然である。

デジタル技術を多くの人が使えるようにする、社会に実装をする上で鍵となるのが、コストを下げて製品を多くの人が買える価格帯にすることである。
そのためにはまず必要なのが、製品の機能を最低限のものに絞り込むこと。とかく開発者はハードウェアの機能や性能を最大限に高めようとするが、普及/実装ステージでは、それはかえって弱点になってしまう。
また絞り込んだ機能についても、作動精度をある程度下げること(レスポンスを落とすのは好ましくない)、全てを一から新しく作るのではなく有りもののパーツや製品と組み合わせること、デザインに凝り過ぎないこと、などでコストを抑えることが可能になる。
この領域は、中国企業の独壇場ではないだろうか。
CES Asiaの会場では、このような工夫を凝らした製品がいくつも展示されており、「そういう手があったのか」、「こう割り切ったか」と刺激を受けることが多かった。

また出展者の分類レベルでは、本家ラスベガスのCESと大きな差はないが、会場を視察すると、いくつかの分野ではCES Asiaでは出店者がほとんどない分野もあった。これは中国が遅れているという意味ではなく、主催者側の意図に基づく取捨選択の結果と解釈した方が良い。ラスベガスよりも狭い場所で、中国市場向けに何が最も重要かと考えれば、自ずと展示する分野が限られてくるのは当たり前である。

気になった展示

【苏宁(Suning)のRaaS】
苏宁は元々は家電量販チェーンであり、日本の家電量販チェーンラオックスを買収したことで日本でも知られるようになった。1990年に江蘇省南京市で創業、2017年のグループ全体の売上高は2432億元(約XX円)、オフラインとオンライン双方で小売販売を行うとともに、ロジスティックス、各種クラウド事業を行っている。リアル店舗は10,000店舗以上。

CES Asiaでは、自社で使っている各種システムやデジタル技術を外部に開放し、RaaS(Retail as a Service)として紹介。これは下記の5つのサービスが含まれる。

出典:CES Asia視察チーム長谷川さん撮影

1)SaaS(Software as a Service)
  IoT、ビッグデータ分析、AI等を組み合わせて、デジタルストア、スマートホーム、パーソナライズした推奨等を実現するソフトウェア群の提供
2)  PaaS  (Platform as a Service)
上記ソフトウェアは、AIプラットフォーム、ビッグデータブラっとフォーム上に実装されており、それぞれ大量のデータ処理が可能な能力を持っている。
3) IaaS    (Inflastructure as a Service)
上記プラットフォームを支えるデータセンター、ネットワーク等のインフラの提供
4) HaaS  (know-How as a Service)
中国国内外の5か所のR&Dセンターと、35のソリューションセンターが外部への支援にも利用可能
RaaSをわざわざ5つに分解した感はありますが、お品書きレベルでは揃っている内容になっている。
実際にどこの外部企業が利用しているかは、不明。

【涂鸦 (tuya)の立ち位置】
tuyaは、Alibabaグループにいた王学集氏が杭州にて設立した会社で、各種電化製品とGoogleやAmazonの環境を繋ぐハードウェア及びソフトウェアやクラウド環境の提供をしている。自らを「Build Internet of Things, Effortlessly」と呼んでいる。(IoT機器を努力なしで作る)

例えば、既存の調理家電にtuyaの通信モジュールを装着し、tuyaの環境上で開発したスマホアプリを利用することで、tuyaのスマートホームクラウドを通じてGoogle HomeやAmazon Echoなどのスマートスピーカーと繫がり、スマートホーム対応調理家電として利用できるようになるもの。
このような状態まで最短で15日で開発できるため、スピードのみならず開発コストも大幅に削減が出来る。

日本ではソフトバンク コマース&サービスが提携して、同様のサービスを展開している。
自ら消費者向け最終製品を作るのではなく、また自社に閉じたスマートホームプラットフォームを作るのでもなく、オープンなスマートホームプラットフォームを作ることで、既存の家電メーカーとスマート機器を繋げていくという立ち位置はユニークであり、またデジタル技術を社会に実装していくという意味では、効率的なアプローチである。

【デザイン性の向上した製品】

これはレコードプレイヤー。使わないときは、右側の黒い製品の様にコンパクトに格納できる。
デザインの好き嫌いはあるが、一定の感性に基づいて統一されたデザインの製品が増えてきており、もはや「中国製品=ダサい」という単純な理解は成り立たない。

【配膳ロボット】

人間や障害物を避けながら、指定場所に料理などを運ぶロボット。ファミリーレストランでは、この方が子供も喜ぶのではないだろうか?

これはCES会場ではないが、CarrefourのLe Marcheというフォーマットでは、自走型販促エンド?ロボットが稼働していた。


【LiDARセンサーの普及版】
LiDAR(Light Detection and Ranging)センサーとは、レーザー光を使って物体までの距離やその性質を判別するセンサー。自動運転の車に使われている。これを低価格で提供するサプライヤーが複数社出展していた。

この写真は彫刻を3Dで測定しているデモだが、価格が圧倒的に安くなると、今まで想定していなかった使い方が出来るようになり、社会実装が進むという例である。

【パーソナライズした化粧品、Neutrogena】
化粧品分野では、パーソナライズがトレンドの一つだが、CEA AsiaでもNeutrogenaが、2つの商品を発表していた。

一つは、個人の肌質に合わせた顔用のシートマスクで、専用のカメラをスマホにつけて肌質を測定する。その結果に合わせたシートマスクが自宅に届く、というもの。


もう一つはDNA診断に基づく各種スキンケア用品などを提供するもので、唾液を採取して個人の肌質を把握。肌の弾力や敏感度合い、保水能力、紫外線への過敏度合、排毒能力、など10種類の観点で診断し、それに合った化粧品を提供するもの。

DNA診断の結果レポート
このような商品が価格的にも手が届くなら、マス向けに開発された商品は厳しくなるのではないだろうか。

【化粧品サーバー?】
Neutrogenaのローテク版、ともいえるのが、この化粧品サーバーともいうべき機械。展示では、朝用や夜用の化粧品が入っていて、手を機械の下に出せば、時間や要望に合わせて適切な化粧品が出てくる、デモをしていた。

展示者に聞いたところ、同一の化粧品を時間帯に合わせて内容分の構成比を変えることも可能とのことで、夜は保湿成分を増やしたクリームを出す、と言ったこともできる。
このようなローテクを使って、現状は高度な解決方法しかない課題に解決策を提示することは、中国企業は長けている印象を受けた。

その他、個人的に興味を持ったもの

【電動ビート版】
潜水も可能な簡易水中スクーターのような製品もあったが、のんびり浮かんでいられるこちらの商品は購入したかった。


【エアドラム&エアギター】

手に持っている棒の位置(上下左右)により、スピーカーから出る音が変わる、エアドラム用スティック。

横ではエアギターも実演していた。


【自動結束機能付きゴミ箱】
ボタンを押すと、あらかじめセットしてあった専用ゴミ袋の口をすぼめて、熱で結束してくれるごみ箱。

以上




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流通業と消費財メーカーを専門とする経営コンサルタント。 主にヨーロッパと中国やアジアの流通業について、公開されている情報や実際に自分が訪問した体験に基づいて書いています。