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学部3年生のプレゼミが始まりました

プレゼミとは?

武蔵野美術大学クリエイティブイノベーション学科では、3年生の第3学期(11月〜12月)にプレゼミを実施しています。プレゼミとは、4年生のゼミ配属の前の学期に、各教員が提供するゼミ形式の授業を1学期間履修するというカリキュラムです。各教員が独自のプログラムを提供し、学生が選択する形になっています。

今年度の岩嵜ゼミのプレゼミは、日立製作所デザインセンタとの共同研究の一部として、「サーキュラー生活者ビジョン」プロジェクトを行うことにしました。これは日立製作所デザインセンタと昨年実施した「ツナガル カカワル 循環型社会」プロジェクトからずっと続けている、循環型社会における生活者の行動様式を考える取り組みの一環です。

循環型社会・サーキュラーエコノミーの議論において、物質の循環に関しては多くの研究が行われています。一方、その社会の構成員である生活者の行動や価値観がどのようなものであるべきかという研究についてはまだ蓄積が少ないと感じています。生活者の行動や価値観はまさにデザインが対象とできる領域です。研究室では、循環型社会におけるライフスタイルをデザインの観点で考えていきたいと考えています。

プロジェクトはデスクリサーチとフィールドリサーチから始まります。フィールドリサーチの一環として、鎌倉にある慶應義塾大学の「リサイクリエーション慶應鎌倉ラボ」と、パタゴニアのリペア部門を訪問しました。

リサイクリエーション慶應鎌倉ラボ

リサイクリエーション慶應鎌倉ラボは、国の研究支援機関であるJSTのグラントであるCOI-NEXTに採用されている「リスペクトでつながる「共生アップサイクル社会」共創拠点」の研究拠点の一つです。COI-NEXTは、未来の有りたい社会像を策定し、産学官の競争拠点の形成を目指すプログラムで、社会に立脚した研究活動が期待されています。リサイクリエーション慶應鎌倉ラボはこのような背景の中で鎌倉市内に設立された街中にある研究拠点です。

リサイクリエーション慶應鎌倉ラボの湯浅さんを訪ねてラボを訪問しました。ラボでは、鎌倉市内からプラスチックを中心としたリサイクル素材を回収し、プラスチックのペレット状のものに最素材化した後、ストリートファーニチャーなどの製品に転換されています。ラボの奥の方には巨大な3Dプリンタが設置されていて、さながら小さなリサイクル工房の様子でした。

ラボでは、「循環者になろう。」というキャッチフレーズを掲げていて、これまでの製品を購入して廃棄する「消費者」から、一人ひとりががサーキュラーエコノミーを担う「循環者」になることを目的としています。この方針は、今回のプレゼミのテーマであるサーキュラー生活者の姿と重なり合うところがあります。

パタゴニアのリペア工房

次の訪問先は、リサイクリエーション慶應鎌倉ラボのすぐ先にあります。パタゴニアは「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」というパーパスを掲げ、サステナビリティを真ん中においた企業活動を行っていることで知られています。

パタゴニアは、Worn Wearという活動名のもと、製品の修理と回収、リサイクルにも力を入れています。Worn Wearとは着古した服という意味があり、ユーザーできるだけ長く製品を使える配慮をメーカーとして積極的に提供しています。その活動の一つが修理です。パタゴニアは早いタイミングから製品の修理に取り組んできました。日本では、修理工房による修理の受付の他、ユーザー自身が製品の修理を行うためのマニュアルの提供なども行っています。

今回訪問したのは、そんなパタゴニアの修理の中核を担う修理部門です。工房には、国内の店舗や郵送などによって集まってきた様々な年代のあらゆる種類のパタゴニア製品が修理を待っていました。修理を担当するのは、専門のリペアスタッフの皆さん。お話を聞く機会もありましたが、皆さんパタゴニア製品に対する愛に溢れ、誇りをもってお客さんの期待に応える仕事をされているのが印象的でした。

訪問を終えて

今回の訪問は、プレゼミのテーマである「サーキュラー生活者ビジョン」を考える上で大きなインスピレーションとなりました。リサイクリエーション慶應鎌倉ラボの湯浅さんが、環境意識の高い方だけではなく一般の市民の方にまで活動の輪を拡げていきたいと仰っていたのが印象的でした。

パタゴニアはリサイクルや修理の活動をWorn Wearというブランドにして、情報発信や地域に出向くキャラバン活動を通じた広報活動にも力を入れています。サーキュラーエコノミーが義務的な行動としてだけではなく、新しいライフスタイルとなることにこの先のデザインの機会があるのではないかと思いました。

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