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【創作論】異質馴化と馴質異化

十三不塔はじめます。

久しぶりの創作論は、小説のみならずさまざまな分野において有益な考え方です。私事ですが、僕はゲームプランナーのクラスなどを受け持っているのでよくこれをテーマに授業をしております。

異質馴化

これは新奇で見慣れないものを、分かりやすくお膳立てをして、受容の裾野を拡げてあげることですね。未知の概念やアヴァンギャルド過ぎる世界観は容易には受け入れてもらえません。そこで既成のパターンに当てはめて、理解を助けてあげる、そういう手法のことです。

もっと思い切って例えるなら、意識にデジャ・ヴを作り出すということですね。見知らぬものなのにいつかどこかで見たような気がする。そんな不思議な錯覚は誰にでもあると思います。経験済みのものには退屈さというデメリットがあると同時に警戒のハードルが下がるというメリットもあります。

あなたの扱うアイデアが革新的なものであるほど、その衝撃を心地よいものにするための工夫が必要です。大衆に流布したクリシェと織り交ぜるのも不可欠な戦略です。

有名な例としては「カップヌードル」の普及についてのエピソードがあります。すでにチキンラーメンは認知されていたものの、付属のカップで直接ラーメンを食べることに抵抗があった時代です。この異質な食べ物に当時の日本人は食指を動かしませんでした。

形勢を覆したのは連合赤軍による浅間山荘事件でした。氷点下の気温ではどんな食べ物もカチカチに凍り付いてしまいます。そんな中で自衛隊の人たちがカップラーメンをすする姿が全国に放送されたのです。これはどんな説得や広告よりも甚大な効果を及ぼしました。

我が国の緊張漲る治安維持の風景の中に「カップメン」はさりげなくも活き活きと挿入されていたのですから。日本人の無意識の検問はあっという間に解除されました。

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リロード下さった弾丸は明日へ向かって撃ちます。ぱすぱすっ