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明日は知らない

ビートルズが存在しない並行世界を描いた『yesterday』という映画があるのですが、とてもよかったです。

ちょっと話が迂回しますが、物理の法則は厳然な真理ですのでタイミングや環境が違っても遅かれ早かれ発見されるという話があります。たとえば相対性理論はアインシュタインが存在しなくても、いずれ別の誰かの手によって見つかるに違いない。たぶん、そうだ。

一方、ドストエフスキーの『罪と罰』は彼が居ない世界では存在しないままでしょう。つまり芸術作品とは、あってもなくても構わない宇宙の戯れなのです。

しかし、ごく稀に厳然たる必然性を感じるアートもあります。作家の個人性を超えて、まさに神様のお筆先になって制作されたような作品たちです。

夢十夜で漱石は仏師に語らせていたような気がします。像を削り出すのではなく木材の中から掘り起こすだけだと。ミケランジェロだか誰だかも大理石の中にあるモノを探り当てるのだと言ってた気がする。うろ覚えですが。

ともかく自己表現でも大衆ウケを狙ったのでもない、真理に近いアートが存在する。前の記事でも扱ったことのある「客観芸術」という分野ですね。

『yesterday』という映画では、まるでビートルズの音楽はそうした「客観芸術」であるかのようにジョンもポールも不在の世界であっても力強く芽吹いていきます。まさに個人性や時代性を超えているかのように。

確かにビートルズにはポップでない難解かつ哲学的なものがたくさんあって、しかしそれさえも一周回ってキャッチーに聞こえる不思議さがある。

一番好きな曲はサイケデリックな『 Lucy in the Sky with Diamonds』

これをモジって『ルーミー・イン・ザ・異世界・ウィズ・ダイナマイツ』というお芝居を書いたこともある。

今回取り上げたいのは『tomorrow never knows』、英語の歌詞がわかっていない僕には、翻訳された内容にちょっとびっくりした。

ミスチルの同名曲もいいですが、こちらは歌詞が東洋哲学的で素晴らしいです。

禅の三祖僧サンが作った『信心銘』にも通じるものがあると思います。

Tomorrow Never Knows
(明日は知らない)


こころのスイッチを切って、
リラックスして
流れに任せなさい
それは死ではない
死ではない

すべての思考をなげうち、
空虚に身を任せなさい
それは輝いている 
輝いている

内側の意味が
わかるようになる
それは存在する
存在する

愛はすべて
愛は誰にでも
それは知ること
知ること

無知と憎悪は死を嘆く
それは信じること
信じること


あなたの夢の色に
聞き入りなさい
それは生きることではない
生きることではない。


はじまりから終わりまで
「存在」のゲームをしなさい
はじめから

リロード下さった弾丸は明日へ向かって撃ちます。ぱすぱすっ