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(3)分(ぶん)を知る

コンサルタント四方山話は
コンサルタントの役割やクライアントとの関係、
コンサルティング活動の留意点等をご紹介していきます。

今回は「分(ぶん)を知る」というお話です。

「分を知る」とは、
“自分の身の程をよく知って行動する”
という意味です。

コンサルティング業界という言葉がない頃に
コンサルタントになりました。

コンサルタントが今のように
あちこちにいるという状況では
ありませんでした。

入社時に、
「一人前になるために何か資格とか必要ですか?」
と先輩に聞くと、
「特には何もいらない、経験が重要。」という回答。

当時も
会計士や中小企業診断士の資格を持っている
先輩がいましたが、
今のようなさまざまな資格を持っている
コンサルタントは少なかったと思います。

コンサルタントになって十数年が経った頃、
「コンサルタントは、分(ぶん)をわきまえることが大切」
という気持ちになりました。

そう思うに至った理由はいくつかあります。

①世の中にはすごい人がたくさんいる
まず、クライアントの皆さんと接して
“世の中には素晴らしい人、すごい人がたくさんいる”
ことに気づいたからです。

コンサルタントは
専門家として相談に乗るわけですが、
ご支援する事柄に限って
クライアントの方よりも
集中的に経験を積んでいるに過ぎない、
と思うようになりました。

期待されれば助言するわけですが、
役割としてお応えしている
という気持ちになりました。

本当に世の中には
人格的にも能力的にも
優れた人がたくさんいて
社会が支えられていると思います。

②自分が開発した支援方法ばかりではない
クライアントにご提供する
問題解決の考え方やアプローチ、手法は
そのほとんどが先輩から学んだものです。
クライアントから学ぶことも多々ありました。

コンサルタントは経験が大事
というのは
他者の経験資産もいただいて
それを世の中に提供する
循環させる役割がある
という意味があることに気づきました。

経験を重ねるにつれ
自分で開発したものも増えては来ましたが、
長い歴史に支えられて
自分のご支援が成り立っていることを
実感しています。

③クライアントと一体にはなれない
クライアントのために
どんなに一所懸命取り組んでも、
どんなに心配しても
どんなに発展を祈っても、
当たり前ですが
クライアントと一体になれるわけではありません。

“会うは別れの始めなり”
と言いますが、
いずれそのクライアントお別れする時がやってきます。
このことを痛感し
寂しい気持ちになった時期がありました。

20年以上の長きに渡って
継続的にご支援させていただいたり
今も関係が続いているクライアントもありますが、
コンサルタントは“第三者である”という立場を失うわけにはいかない。
専門性に加えて、客観性こそが
コンサルタントを成り立たせている根本です。

もっとも、この点について言えば
企業の愛社精神や社員間の絆もだいぶ低下し、
逆に、ビジネス活動のオープン化が進んで
社内外の人材が常時連携・協力するのが
当たり前になってきましたので
コンサルタントの立ち位置も変化してきたとも感じます。

④経営責任を本質的に負えない
コンサルタントは「分」をわきまえるべし、
という主張の根幹は、この点にあります。

コンサルタントはあくまでも
契約いただいたご支援内容の範囲においての
限定的な役割や責任を負っています。
そういう立場・契約であるからです。

この点を指摘して
“コンサルタントは役立たない”
という主張も耳にしますが、
傾聴すべき指摘と思っています。

コンサルタントは
”上手に使っていただいてナンボ”
の職業と思います。

クライアントの発展を心から願いながら
ご支援してきましたが
コンサルタントの立場の特性と限界から
目を背けずに
進んでいきたいと考えています。

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