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第17話 職務充実

人材育成について、ちょっと立ち止まって考えています。

社員が成長する方向として
「職務充実(job enrichment)」
という考え方があります。
より質の高い業務が担当できるようにレベルアップしていくことです。

仕事に習熟していく段階としては、まず
(1)毎日、毎週、毎月・・・のように定常的に発生し、
(2)かつ、やり方の決まっている仕事
から担当していきますね。
日常業務=定常・定型業務と言われるものです。

そして次の段階としては、
ちょっとした例外対応、応用的な判断、あるいはトラブル対応
を経験していくことになります。
①最初は上司や先輩の指示に沿って、
②すこし経験したら、自分から周囲に相談しながら、
③やがては自力対応できるようになっていく

というように成長していくわけです。

例外・応用、トラブル対応でも、
1)過去に事例がある場合と、
2)全く初めてのケースがあり、
後者のほうがよりレベルの高い対応と言えます。

職務充実とは、簡単に言えば以上のような成長ですが、
実際に育成を進める場合はいくつか留意点があります。

第一には、
“成長する本人が仕事の段階的な習熟イメージを持つこと“
です。

これは言われなくても持っている人もいます。
無意識のうちに、上司や先輩の仕事の仕方を観察し、
「次は(あるいは時が来たら)自分が担当する。」
という心構えができている人です。

こうした心構えがあると
「今度は自分で担当してもらうからね。」
という指針が出ても、
自然にそれを受け止め、受け入れ、前向きに取り組んでいけます。

しかし、
心構えがないまま、より質の高い仕事を担当するよう指示されると、
それがプレッシャーになり、
モティベーションの低下につながることさえあるのです。

「この仕事は~という段階を踏んで習熟してもらうから。」
「まずは今の仕事をしっかり習熟し、次には~について応用・判断できるよう学んで欲しい。」
と、一歩先を示しつつ今の仕事に集中するよう導くことが大切です。

第二には、
“権限委譲との関係を押さえておくこと”
です。

日常業務に習熟していくと、例外対応が生じた際に
「自分で判断していいのだろうか?」
という迷いが生じるのが普通です。
すぐ上司や先輩に相談できる状況ならいいですが、
迅速な対応が求められる場合は困ります。

「そろそろ~については自分で判断して進めていいから。」
「~については事後報告でいいよ。」

と自分で応用・判断していい範囲を伝えておくのがいい工夫です。
権限委譲の範囲を定めておくということですね。

こうした指針がない状態で自分で判断して結果が良くなかった時、
「勝手にやって・・・」と叱責するのは不適切です。
「今度は~という原則で進めよう。」
と未来志向で導くのが育成のポイントと言えます。

第三に、
“評価や昇格との連動を図ること“
です。

応用・判断やトラブル対応ができるようになっても
それが人事評価につながっていない、昇格につながらない、
のでは不満の元になります。

役割や責任によって
資格等級制度が設計されている企業は要注意です。

管理職が
「本人のためにより質の高い仕事を!」
と思っていても、本人は
「自分の役割・責任=資格等級以上の仕事をやらされている。」
と思ってしまう可能性があります。

等級は報酬ともリンクしていますので
人材育成=自己成長と人事評価、昇格は
健全に連動する必要があります。

以上のように、
「職務充実」という言葉やその意味を知るだけではなく
・人材育成に実際にどう活かすのか、
・その際にどういう点に留意する必要があるのか、
を十分考察することが大切と思います。

皆さんの職務充実はどのような実践イメージでしょうか?

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