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スマホ以来の衝撃 『ボイステック革命 GAFAも狙う新市場争奪戦』

これからは音声がくる!という話をよく耳にする。ただその全体像を理解できている人が、一体どれだけいるだろう。少し前にクラブハウスが流行し「音声」に関する関心が一気に高まった。それ自体は一旦沈静化した感があるが、音声配信のプラットフォームの多くはCH流行後も再生回数を大きく伸ばしているという。

本書は、現在凄まじい勢いで再生回数を伸ばしている声のブログサービス「Voicy」の社長が、いまGAFAが狙っているこの市場の未来について、一般の方が読んでもイメージできるようにまとめた本だ。本書では、著名な声優さんによる「ボイステック革命後のある一日」の朗読も聴けるし、何よりもデータが豊富で説得力がある。

読んでみると、ボイステックのメリットの多さに胸が躍る。近視と老眼で文字が見づらくなりレーシック検討中の私には、音声化で画面と向き合う時間が減るのは願ってもない幸せだ。また、普通のおっさんがビールを飲むYouTubeちゃんねるを自前でやってみたいと思っているが、ボイステックでその夢も実現できそうだ。

難しい説明書を読まなくても、声だけで操作できる動画編集ソフトがあれば済むのだから。さらに高齢者になったら、音声の方が楽、という機会は増えるに違いない。そのためには、早くボイステック革命を進める必要がある。著者は日本におけるその旗振り役だ。私は心から応援したいと思った。

私の個人的な夢はさておき、ボイステックに託す夢は人それぞれだと思う。本書を読めば、きっと各々の夢が膨らむに違いない。こんな夢のある本を読まずに放っておくのは損だ。自らプレイヤーになりたいと思うかもしれないが、Voicyパーソナリティは既に100人のうち2~3人なれるかどうか、という狭き門。もうすでに乗り遅れ気味だ。

音声の活用によって何が起こるか、一刻も早く知っておいたほうがいい。本書はそのための最高の入門書である。全部読む時間がない方は、巻末のボイステックスタートアップ座談会だけでも読んでみるといい。スマートスピーカーとワイヤレスイヤホンがスイッチを入れた革命がどのような可能性を秘めているのか、必要なものは何かがよくわかる。

子供は文字検索よりも音声検索のほうが得意だ。また大人も音声でテレビをつけ、アラームをセットするようになってきた。電車のなかでワイヤレスイヤホンを耳に差している人の割合も増えた。間違いなく、今後どんどん、ボイステックは生活に浸透していくだろう。

私は昨日、ワイヤレスイヤホンを耳に差したままゴルフの練習場まで行って、打ち放題をして帰ってきた。その2時間半、視覚を休めながら身体を動かし、情報のインプットができた。耳から入れたのは音楽だけでなく、VoicyやAudibleだ。音声配信は、家事やエクササイズの際の「ながら耳学」に適している。

スマホはスキマ時間を埋めた。ボイステックは耳が空いている時間を埋めてくれる。会食の機会は減っているが、分厚いアクリル板に遮られて会話がままならなかった経験はないだろうか。会話ができない会食なんて、寂しいものだ。食事のように身体的なことをしている最中、耳が空いているのはもったいない、という意識は潜在的にあるように思う。

家事やエクセサイズの際の耳学が、この潜在需要に答えるものだ。前後して恐縮だが、このアクリル板問題はボイステックで解消できる。相手の声だけを拾うことが既に技術的には可能なのだ。音声認識技術の発達や、デバイスの進化、そしてコンテンツの開発とプラットフォームの整備が進めば、ボイステックの裾野は広大なのである。

本書にはあまりにも面白いことがたくさん書いてあって触発されたので、思いついたことを次々に書き連ねてきた。絞りに絞り込んで、お伝えしたいことはあと二つだ。もう少しお付き合いいただきたい。声のブログ、Voicyについて触れておきたいのだ。

まずは、音声での発信は、文章や映像に比べて容易であるということ。私自身は文章を書くことに抵抗はないのだが、楽しい作業ではあるが、構成を考え文章を起こし、無駄な部分を削っていく作業は結構骨が折れる。文章を書くのが好きなのは、話すときに比べて考える時間が与えられているからなのだが、どちらが楽かといえば話すほうだ。

Voicyのパーソナリティの方には、文章や動画で情報発信をされている方がいるが口を揃えて「音声が一番ラク」と答えるらしい。実際に私もリスナーの一人だが、複数の発信者の方からそういう言葉を何度もきいたことがある。基本的に一発取りで、朝、自分の部屋でリラックスした格好で収録できるという。

もう一つ、広告が面白いことになっているという。Voicyは広告枠を買ってパーソナリティを応援するという体裁になっている。そして、番組の中で自身の声でスポンサー名をいう形のため、パーソナリティは責任を持ってスポンサーを選ぶことになる。そして、好きな人の声で伝えられた広告はリスナーに好意的に届くそうなのだ。

これまでの広告とは色々な意味で違う。でもあえて一つ挙げるとしたら、良い番組に広告を出すためには発信者に選ばれなければならないということだ。これまでは、お金を積めばよかったかもしれないが、ソーシャルな発信者ほど大企業の広告はとらなくなるかもしれない。頭を下げる立場が逆転する、こういう変化が私は大好きだ。

結局最後まで勢いで書き連ねてしまったが、とにもかくにも、このレビューで本書の「熱狂」が伝われば幸いである。ただこの熱狂こそ、文字よりも音声の方が伝わりやすいのかもしれない。ビールを飲む発信も動画編集をすっとばして、YouTubeではなく、思い切って音声でやっちゃおうか。う~ん。でも、ファンがいないかぁ。


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