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今ではお父さんの後を継いで社長になっている彼は小学5年生で天皇の名前を初代から全部暗記していた。お城のような家に住んで、夕飯のおかずは、数十種類。遠足の弁当でも、三段重ねの重箱。そんな彼が、ポテトチップを知らなかったとは。3月18日

 
今では、お父さんの跡を継いで
若社長になっているヒロシさんの昔話です。
 
ヒロシは、いつも黒塗りの自動車に
乗って登校して来ました。
彼の後ろには、いつも頭をテカテカに
なるまで整髪料を塗りたくったオジさんが
いっしょでした。
「おはようございます」
ニコヤカでお馴染み品のいいお辞儀が
彼のトレードマークでした。
勉強はできる方でした。
特に歴史は学者レベルでした。
小学生で全部の天皇の名前を暗記しているのは
彼ぐらいでしょう。
 
小学校5年生か6年生の遠足での出来事です。
遠足での楽しみは何と言っても
おやつを堂々とリュックから取り出して
好きな時に食べられることです。
「おまえのキャラメルと
俺のガム交換しようか」
「キャラメル2個とガム1枚なら、いいよ」
「だったら、おまえのキャラメルと
ポテトチップ1枚にしろよ」
ポテトチップは一番の人気者です。
そのやり取りを遠めに見ていたヒロシが
近づいてきました。
「それは何?」
「これはポテトチップだよ」
「ボクのチョコレートとそれ1枚
交換してくれないか」
「え、そのチョコレート1枚全部くれるのか」
「ああ」
「オーケー、じゃ1枚取れよ」
「ありがとう」
ヒロシは、ポテトチップを手に取り
ゆっくりと噛みました。パリッ・・・
「こんなに、美味しいものがあったのか!」
歴史博士と尊敬を込めた愛称で呼ばれるヒロシが
古代遺跡を大発見したかのような驚きの表情をみせたのです。
「これがポテトチップか・・・」
お城のような家に住んで、
夕飯のおかずは、百種類。
遠足の弁当でも、三段重ねの重箱でした。
そんなヒロシが、ポテトチップを知らなかった!
信じられないような本当の話でした。

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