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看護士さんの世界は大変です。夜も昼もありません。常に人手不足でそれでも患者さんのために頑張っています。だから口の悪い方もいますが、みんな心の美人です。

裕子さんのお父さんは、宮大工です。
だらしないことが大嫌いで、
家の中でもキッチリとズボンをはいています。
ステテコ1枚パンツ1枚なんて見たことないそうです。
そして、お父さんは、まるで念仏のように
「人間は心だ」
と言っている頑固親父です。
そして、お母さんは病院の婦長さんをしている
ベテランの看護士さんです。融通の利かない
お父さんをカバーするお母さんの優しさは
裕子さんを誰よりも明るい子に育てました。
 
お団子のような丸い顔。
お団子のような丸い鼻。
お団子のような丸い体。
 
三拍子そろって、お世辞にも美人といえない三団子の
裕子さんですが、
「私は、見た目は良くないから、心の美人を目指すんだ」
その言葉どおり裕子さんもお母さんと同じ
優しい看護士さんの道を選びました。
 
裕子さんの勤める病院は県立病院です。
「私は自分の担当する患者さんは、たとえ、お爺さんや
お婆さんでも、みんな自分の子だと思ってお世話しているの」
そんな天使のような心の裕子さんでも、もちろん辛いことも
あります。夜勤は、とくに大変です。
「その上、急患なんか来たら、もうパニック」
それと、入院している患者の病状を聞いてくる
身内には特に困ります。もちろん、看護士だから
投与している薬や処方で、大体の様態はわかるのですが
「担当医に聞いてください」
と言うように教育されています。看護士は医師ではないので
責任もてないからです。
 
「いろいろあっても、一生懸命、お世話した患者さんが
元気になって退院するときは、うれしいような、
少し寂しいような複雑な気分よ。涙ポロリ・・・
娘をお嫁に出す気分ってこんな感じかな。
でも、娘は時々里帰りしにくるけど、
患者さんは帰ってきてもらっても困るし・・」
そう言う裕子さん、今度の日曜日、お見合いするそうです。
 
「お化粧は控えめにね」
「焦って変なの、つかまないように」
 
なんて同僚の看護士さんたちから冷やかされていました。
 

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