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タイムトンネル

もうかなり前になるが、テレビでタイムトンネルというSFドラマをやっていた。
あらかじめ時代をセットしておき、タイムトンネルの中に駆け込むと、設定した時代に行けるというのだ。
たしか、アメリカのドラマだった。
そのドラマを毎週見ていた小学5年生のケイジとトオルは、こんな会話をしていた。
「俺たちは、大人になったら、どんな女の子と結婚するのやろう」
「タイムトンネルの中に入ってみるか」
ケイジとトオルは、裏山にある古いトンネルを思い出した。
もちろん、そのトンネルを抜けたとしても、隣町があるだけなのは百も承知だった。
でも、そこは、まだまだ夢も希望も、あふれる想像力もあるケイジとトオルだ。
全速力でトンネルの入口まで走ると、ジャンケンをした。
ケイジが勝った。
「よーし、トオル、俺が先に行くぞ」
「10年後にセット」
「ちょっと、結婚には早いぞ」
「いや、学生結婚かもしれない」
「よーし、行くぞ。ドーリャアー…」
「待て、俺も、できたら学生結婚したいから、行くぞ」
ケイジが暗いトンネルの中に走り込んだ。続いてトオルも駆け込んだ。
ほんの100メートルほどのトンネルだ。すぐに明かりが見えてきた。
「あと、20メートルで10年後…」
「10メートルで…」
「やったあ」
「10年後や」
キー!!
反対側から来た自転車が急ブレーキをかけて止まった。
「あんたら、危ないやないの」
「もう」
ケイジとトオルの目の前にいたのは、自転車に乗って隣町から帰ってきた同じ学年のリョウコとマリコだった。
このことが、どうケイジとトオルの心に作用したのかは定かではない。
ただ、少なくとも、ケイジはリョウコのことを中学1年生の夏まで好きだったし、
トオルはマリコのことを好きになり高校2年生まで気持ちを引きずったあげく振られた。
二人のタイムトンネルは思ったより短かったのかもしれない。

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