【資格】消費生活相談員 その2 何の役に立つか。
1 公務員の取得
公務員がこの資格を取った場合には、「消費者部局に異動したい」「今の部署から異動したい」という希望がある場合に有力な資料になるかもしれない。
そういう希望や用途がなくても、消費者法制を理解して事務にあたることは有益である。例えば、消費者契約法は、消費者と事業者との間の契約を「消費者契約」と、「事業者」を法人等と定義する。ここに事業とは営利・非営利を問わず、「法人」は市町村等の公法人を含む。以上から、自治体が行政処分ではなく「契約」により法律行為を行う場合、消費者契約法が適用される余地がある。
→参考
同法は、例えば「事業者の債務不履行(当該事業者…の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項」は無効としている(8条)。
ここで公の施設条例等で見かける「市長は責任を負わない」という文言を考える。この利用関係を契約、この条例を契約約款の一部と捉え、かつ、自治体に消費者契約法の適用があるとすると、このような免責条項は法8条により無効とされる余地がある。
これを「消費者契約法は自治体には適用されないんじゃね」と一笑に付せるか?
消費者契約法の趣旨は「契約当事者間において情報・資金・人材の偏在がある場合の私的自治の修正」だろう。そして自治体と消費者(市民)の間にも情報や資金等の偏在は存在する。そうすると、自治体が当事者になる契約においても私的自治は修正されてしかるべきではないか。つまり法が適用される要請は考えられるし、仮に適用がないとしても、自治体は法の趣旨をくみとった制度を作る要請があるだろう。
2 消費者行政の専門家を目指す場合
自治体によるが、常勤の消費生活相談員を雇う場合がある。その方面を生涯の仕事と考えるならば、消費生活相談員を取得し、かつ、自治体の採用試験に挑むことになる。しかし、常勤の相談員を募集する自治体は少ない(R2年度で2%しかない)。
実際のところ、消費生活相談員の多くは、会計年度任用職員である。したがって、自治体でこの仕事をしたい場合で、常勤職が見つからないとき(ほとんどはこのパターン)は、公務員採用試験ではなく、会計年度任用職員の募集に応募することになる。会計年度任用職員とは、読んだとおり1年の期間で採用される者であって、基本給も決して高いとは言えず、昇給がないことも多い。会計年度で消費生活相談員への就職を考える場合、事前に待遇などを確認するのがよいかも知れない。
3 公務員になろうとする者のアピールとして活用する場合
行政職を希望する場合、採用に際し「一般行政職を希望しますが、消費者部局にも異動できるポテンシャルがあります」という「引き出しの多さ」をアピールする材料になるかも知れない。「行政職で採用して、状況の変化に応じて消費者行政の専門家としても育成可能」というのは、採用する側からすると魅力的だろう。僕なら、採用試験の点数が同じ者がいた場合、引き出しの多い方を選ぶ。社会福祉士その他多くの資格は、多かれ少なかれこの効果があるところ、消費生活相談員は必置資格であり、アピール力はより強いだろう。
4 僕の場合
法制当時に消費者センター条例を審査した手前、「施行時に有資格者がいなかったら俺が行く」と考えて取得した。結果、会計年度任用職員を採用したので、取得したことは秘密にしている。いつかこの資格を使う日が来るかも知れない。
5 おまけ
この資格は、マニアックにな知識が身につく。例えばクリーニングについて、ドライと水洗の差(システム、取扱、損害賠償の額)みたいな情報を整理して覚える。衣類のタグが読めるようになる。
また、執務中に電話勧誘を受けた経験があるだろう。この場合、電話が来たら六法を開き、特定商取引法16条以下を読みながら話をするのが効果的である。勧誘に先立って業者名と販売者の氏名と告げるとか(16条)、「契約を締結しない」旨を表示したら勧誘できないとか(17条)、各規定は非常に効果覿面である。その他、特定商取引法の知識は覚えておいて損はないだろう。
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