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点字図書『お天道様は見ている』(赤川浄友 著)

『法友文庫だより』2017年冬号から

 当点字図書館員が蔵書をご案内するブックレビュー。今回は、点字図書『お天道様は見ている』を取り上げます。

 著者・赤川浄友氏は、慶応義塾大学を卒業後、堀越高校の社会科教諭などを経て浄土新宗本願寺派僧侶となります。その一方で「南無の会」「赤川塾」を主催し、読売文化センターの講師も務めています。さらに「念仏者9条の会」「坊主 ビー アンビシャス」会員、「笑い療法士」という顔も持っています。

 この本は仏教書です。赤川浄友氏のモットーは分かりやすく楽しい法話を聴かせることにあり、老人クラブから企業研修、外務省・大蔵省に至るまでの宗派を超えた布教活動を行っています。
 本書は、2013年と2014年に徳島県鳴門市仏教会で行った講演をもとにして加筆したもので、やはり楽しく分かりやすく読みやすい本になっています。

「笑い療法士」の肩書きを裏付けるかのように、冒頭から聴衆の「笑い」を誘いながら法話が進められます。
 一例をあげれば、「今の子どもたちはお天道様って知りません。1人だけ『知ってる』と手を挙げた子がいたんですよ。夏休みに使います。キャンプのときに…」(笑)
「この間、大金持ちが突然死んだんです。それも本当に突然に。この大金持ち、何で死んだんでしょうか。これクイズです。脳卒中じゃないかとか、交通事故? この人の死んだ理由、答えは『遺産過多』(笑)」

 こんな風に聴衆の心を引きつけながら「宗教教育がなぜ必要か」「宗教って何なのか」を語ります。

 著者は、本書の「はじめに」において、なぜ僧侶になったのかについて次のように言っています。

 一言で言えば、教員生活の中で宗教教育の必要性を感じたからなのです。今の世の中で最も必要とされていることが宗教教育だと確信しています。教育の場においては、宗教教育が不足どころか「無い」のが現状です。地域にあるお寺や神社は身近な存在とは言い難いです。そもそも、日本人には「宗教」とは何かも理解されていません。縁あって僧侶になって20年を超えたので、いつも訴えてきたことをここにまとめました。

赤川浄友 著『お天道様は見ている』より

 では、宗教と本書のタイトルがどんな関係にあるのでしょうか。なぜ『お天道様は見ている』なのでしょうか。「2‐2.お天道様は見ている」で浄友氏は次のように言っています。

 日本では、明治になるまで宗教という言葉は使われていません。昔は「お天道様は見ている」と子供たちに教育していました。日本人は、そういうものをしっかりと日常生活の中で当たり前のように信仰していたのです。そして、阿弥陀様って光と命の仏様っていう意味なんだよと。で、子どもに分かるように、『死んだおじいちゃんは光の仏様になったんだよ』なんて言っていました。これ当たってるんです。仏様は光で表現されます。例えば、浄土新宗で言ったら阿弥陀様。阿弥陀様というのは、インドの言葉で「アミターバ」と言って「光の仏様」ですから。真言宗も大日如来って言いまして、大きな日の仏様です。言わば太陽みたいなものです。太陽もお星様です。だから、亡き人は仏様、つまり「光の仏様」、お星様になって見守っていてくれるんだよ。お天道様は見ているという教育が今必要なのです。」

赤川浄友 著『お天道様は見ている』より

 また、こんな部分もあります。

 幸せの意味は“出会い”なんです。海の幸・山の幸の“幸”ではないんです。何に出会うか。それは仏様の教えとの出会いです。仏教の考え方に運命はありません。全て“ご縁”です。ですから、運命は変えられるというのが仏教の考え方です。なぜなら、仏教は“因縁生起”と言って、縁起説であります。ご縁が全てであります。原因があって、縁があって生まれ起こる。言い換えれば、種があって花が咲きます。原因と結果です。種が無かったら花が咲かない。ただし、種の芽が出なくては花は咲かないのです。ご縁というのは条件・環境ですから、例えば農業においてカンカン照りでも水不足でも駄目だし、太陽があまり出なくて日照不足でも稲は不作になる。それらが整ったとき花は咲き、実は成ります。仏の世界に近づくというのは、そういう自分の運命、ご縁を変えていくことなのです。ちなみに、“諸行無常”とは、因と縁によって生まれ起こったこの世のあらゆる現象は常に変化するということ。“諸法無我”は、この世のいかなる存在も実体は無く、因と縁によって今、仮に和合したものであって永遠不変の実体は無い。“涅槃寂静”は、それらの教えを体得することにより、涅槃という煩悩の吹き消えた、安らぎと平安の悟りの状態に至る、仏教の目的でもある。

赤川浄友 著『お天道様は見ている』より

 法話は5部構成で編集されています。

  1.  お寺はシェルター 

  2.  宗教教育の必要性

  3.  仏教とは何か

  4.  死後の世界

  5.  お陰様の心で

 ぜひご一読ください。

 
※この点字図書に関するお問い合わせ・貸し出し依頼は、霊友会法友文庫点字図書館(hoyubunko@reiyukai.or.jp)まで。

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